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【インタビュー】 会計事務所と連携して顧問先の事業承継支援 同業者目線だから痒いところに手が届く

顧問先企業の「廃業」か「事業承継」かという問題に、「M&A」という解決策を加えたらどうかー。そう提案するのは、株式会社ストライク(東京・千代田区)の代表取締役社長の荒井邦彦氏。自身が公認会計士・税理士の資格を持つことから、M&Aにおける会計事務所の役割の重要性も感じている。「KaikeiZine」編集長の宮口貴志が荒井社長にM&Aシーンにおける会計事務所の役割、取り組み方などについて聞いた。

荒井社長「顧問先の事業承継にM&Aという解決策もある」

 


株式会社ストライクの強み


ーM&A仲介会社が増えてきましたが、貴社の強みは何でしょうか。

弊社は、1997年の創業以来、少しずつ会計事務所の先生方に知られる存在になってきたと思っています。その背景には、現在も進めていますが税理士協同組合との業務提携も大きかったと思っています。

強みは2つあると思います。1つ目は、早い時期からインターネットを活用したM&Aに取り組んできたこと。2つ目は、私自身が公認会計士であり、スタッフにも多くの公認会計士がいることです。

ー社長及びスタッフに「公認会計士」が多いということが強みになる理由をお聞かせください。

会計事務所の先生方と同じ言葉で会話することができる。さらには、同じ資格者として会計事務所業界で起こっていることに敏感で、先生方の悩みを共有できていると自負しているからです。

弊社には、公認会計士だけでなく金融業界の出身者など、M&Aに精通した幅広い人材が揃っています。先生方の顧問先のM&Aをお手伝いすることで先生方の役に立つと思っています。

 


M&Aは中小企業にとって選択肢の1つ


ー会計事務所はM&Aに取り組むべきだと思われますか

私は会計事務所の仕事の1つがM&A支援だと思っています。ここに、最近、弊社が実施したアンケート結果があります(関連記事:「社長の妻 相続は「現金」希望が9割 「自社株」は迷惑」https://kaikeizine.jp/article/9971/)。質問は経営者の奥様に対して実施いたしました。その質問の一つに「相続が発生したとき、一番の相談相手は誰ですか?」というもの。最も多い回答は「税理士の先生」でした。会計事務所は、それほど経営者の身近にいる存在なのですから、ぜひM&Aに強い関心を持ってもらいたいですね。

ーM&Aは顧問先にとって身近なものでしょうか

会計事務所にとってM&A業務は、やるやらないの話ではなく、先手を取るか後手に回るかの選択なのです。今はM&Aに関する情報も多く溢れており、先生方は、顧問先が過去に1回は「会社を売りませんか」と提案を受けたことがあると考えるべきです。優良企業ならなおさらです。もし先生が過去に1回でもM&Aについて情報提供しておけば、いざというときに経営者は先生に相談するでしょう。「顧問先が売却していた」という残念な話にはならないと思います。

ーM&Aに対する先生方の意識には大きな差がありそうですね

社内にはM&A仲介してきた企業の「記念盾」がズラッと並ぶ

先生の中には、「申告書を書くだけが仕事ではない」と考え、経営者の悩みを積極的に聞いてあげる方も少なくありません。そうした方は、事業承継はもちろんM&Aについても積極的に学ばれます。だから顧問先は何かあると最初に先生へ相談し、先生は話が具体的になったら弊社へ相談にきて下さいます。

ただ、私は、先生がM&Aの交渉実務やマッチング業務にまで精通する必要はないと思っています。そこまで取り組むことはとてもハードルが高い。一番大事なことは後継者不在などで悩む経営者にM&Aという選択肢とM&Aに関する情報提供を続けることではないでしょうか。顧問先に少しずつ情報を提供し続けることで、いざというときに顧問先は先生に相談をしてくると思います。経営者の身近にいる税理士の先生でなければできないことだと思います。

 


顧問先企業のM&Aに対しての関わり方


ー先生はどのようにして顧問先のM&Aに対するニーズを把握できるでしょうか

先生が顧問先の全てのニーズを把握するのは難しいかもしれません。M&Aのニーズを把握する簡単な方法としては、「社長の会社は儲かっているけど、『売りませんか?』という話が来ていませんか」と聞いてみることです。先ほども言いましたが、優良企業にはM&Aの話がきているものだと思ってください。

経営者へ定期的にアンケートを実施してニーズを把握するのもいいですね。

それから、職員に聞いてみるのもひとつの手です。報告するほどの内容ではないと思っているだけで、担当職員が顧問先のさまざまな情報を知っているかもしれません。

ー先手を打つことが重要ということですね

顧問先が「廃業する」と言いだしてから弊社へ相談に来られる先生もいらっしゃいますが、廃業することを決断した経営者は、そう簡単に考えを変えません。決断するということは、悩みに悩みぬいて決心したからです。廃業は自分一人で決められますが、M&Aは買い手企業との交渉が必要なので経営者の目には面倒にうつります。重要なことは、顧問先が廃業を決断する前に先生へ相談するような関係を築いておくことです。先生方が思っている以上にM&Aは顧問先にとって身近なものです。

 


経営者の気持ちを汲み取りながらM&Aを成功に導く


ーM&Aで大切にしていることは何ですか

誰でもいい条件でいい相手に売りたいと考えます。会社を手放して人手にお渡しする決断について「その決断が正しかった」と経営者は思いたい。売却後に会社が伸びてくれれば、その決断は正しかったと証明できます。有名な大企業が買収してくれたら、経営者としての自尊心を満たすこともできるでしょうし、社員や取引先に安心感を与えられます。

M&Aは「売却額が高ければいい」という金額だけの話ではありません。引退した後も会社が発展することが一番大事、という経営者の気持ちを汲み取りながらM&Aを成功に導く。そこに私どもの役割があると考えています。

ー今後、会計事務所を支援するために注目していることはありますか

会計事務所で働く職員のキャリアアップにも注目しています。たとえば、弊社のスタッフを事務所の勉強会に派遣することもできます。事業承継やM&Aに取り組むことは、どのような意味があるのか、自身のキャリアアップにどうつながっていくのかなど、実務的なこと以外を学んだ職員は、自身にとっても顧問先にとっても有益だと思えば以前よりも積極的に顧問先のM&Aに対するニーズを把握しようとするでしょう。もし職員が案件を発掘したら、弊社のスタッフがOJTで支援します。結果的にM&Aが成功すれば、職員は経験値を高め、自分のキャリアに自信を深めてくれるはず。それが働くモチベーションにも繋がります。M&A業務に取り組むことが職員の採用の際にも有利に働くでしょう。われわれは会計事務所にとって、働き甲斐のある職場を築くお手伝いができるのではないかと考えています。


 

東京本社の受付

株式会社ストライク
代表取締役社長
荒井邦彦(あらい くにひこ)

1970年千葉県生まれ。一橋大学商学部卒。1993年太田昭和監査法人(現、新日本有限責任監査法人)入社。97年7月ストライクを設立(事業開始は991月)。9810月に中小企業向MA仲介サイト「SMART」を開設。0112月ネット上で無料簡易企業評価サービスを開始。166月マザーズ市場に上場、176月東証第一部へ市場変更。

■株式会社ストライク
https://www.strike.co.jp/

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

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