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31年度税制改正では個人版事業承継税制など創設

自民党・公明党は12月14日、平成31年度税制改正大綱を取りまとめた。2019年10月の消費税率10%引き上げの景気の落ち込みを抑制する施策が目立つほか、租税特別措置法の延長をはじめ改正民法に対応、昨年大幅に拡充された事業承継税制についても財産評価方法や現行制度の見直しなどが盛り込まれた。会計人にとっては、実務に関係するものが多いため確実に押えておきたい内容だ。

税の実務家にとって平成31年度税制改正大綱で関心が高いのが、中小企業に関するものだろう。中でも中小企業の法人税の特例の延長が決まったことは有難い。現在、中小企業者等の法人税率、本則19%のところ特例により売上げ年800万円以下の所得金額については15%となっている。この15%部分について平成33年3月31日までの2年延長することが盛り込まれた。
また、中小企業向けの設備投資減税である「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」もそれぞれ、平成33年3月31日まで延長。ただし、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、平成31年4月1日以後取得分について「投資を含む経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けること」という要件が追加された。中小企業経営強化税制についても特定経営力向上設備等の範囲の明確化・適正化を行うとしている。
中小企業向けの法人税の特別適用に当たっては、適用対象とならない「みなし大企業」の適正化を図る観点から、大規模法人に関する判定として①大法人の100%子法人②100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人―が加えられる。
一方で、事業承継ファンドから出資を受けた場合にみなし大企業とされ、中小企業向けの設備投資減税が適用されないという問題は、「事業承継ファンドを通じて中小企業基盤整備機構から受ける出資については、大規模法人の所有する株式等に含まない」とされた。
研究開発税制については、税額控除率の上乗せ措置の期限切れに合わせ、オープンイノベーション型の対象範囲に、経産省認定のファンドから出資を受けたベンチャー企業等への一定の委託研究を追加、法人税額の控除上限を現行の5%から10%に引き上げることとした。また総額型については、控除上限を法人税額の25%から40%に引き上げるとともに、税額控除率及び控除上限の上乗せ措置の適用期限を2年延長する。

個人の事業承継税制が盛り込まれる

事業承継税制については今回、新たに個人版(事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)が盛り込まれた。中小企業の事業承継税制については、平成30年度税制改正で特例措置期間を10年限定で導入しているが、個人版も10年間の時限措置として創設さている。
具体的には贈与税の場合、経営承継円滑化法の規定により認定を受けた後継者が、31年1月1日から40年12月31日までの間に贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続する場合は担保の提供を条件に、認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち贈与により取得した特定事業用資産の課税価格の100%に対応する贈与税額が猶予される。この特定事業用資産とは、不動産貸付事業等を除く贈与者の事業の用に供されていた面積400㎡までの土地、床面積800㎡までの建物、建物以外の減価償却資産を指す。
このほか、猶予税額の全額・一部免除や承継後の届出書等の提出要件などは、法人版事業承継税制をベースに設計されている。ただし、特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例との選択適用となるとされる。
税の実務家としては、すでに浸透している既存制度の減税効果も大きいことから、新制度適用には躊躇する場面も出てきそうだが、特定事業用宅地等については昨年の会計検査院の指摘もあり、31年4月1日からその範囲より「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」が除外される。定事業用宅地等をめぐる本特例については、相続税の申告期限までしか事業の継続要件がないなど、制度上の問題点がいくつか指摘されており、小規模宅地等特例については、32年度以降の改正動向にも注視しておく必要がある。

民法改正による相続税における影響

民法改正などによる税制上の対応については、配偶者居住権が設定された不動産については、物納に充てることが認められる順位の低い財産は「物納劣後財産」とされ、配偶者居住権の設定登記について登録免許税を課税することとされた。
なお、相続税における配偶者居住権等の評価額について今後、財産評価基本通達の改正案がパブコメに付され、32年4月1日からの配偶者居住権の施行に合わせて確定される可能性が高い。
他の改正項目としては、被相続人の療養看護等を無償で行い被相続人の財産の維持等に貢献した相続人以外の被相続人の親族に、相続人に対するその寄与に応じた金銭の請求が認められる特別寄与料については、被相続人から遺贈により取得したとされ「みなし相続税」の課税対象とされる。また特別寄与料を支払う相続人の課税価格からは、その額が控除されるとしている。

このほか、民法改正で34年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるが、税制上の対応としては、民法の施行に合わせて相続税の未成年者控除の対象者や、相続時精算課税制度、贈与税の納税猶予といった各制度における受贈者の年齢要件が20歳から18歳に引き下げられる。なお、他にも税理士資格を有する成年の年齢についても改正後の成年の年齢と同様とされるため、将来は10代の税理士資格保有者が登場する可能性があるでてきた。

教育資金、子育て資金贈与の非課税措置は縮減

31年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」については、内閣府や文部科学省などから制度恒久化や対象拡大等の要望がなされていたものの、共に33年3月31日まで2年延長とされるに止まった。さらに用件として、教育資金特例については受贈者の所得要件が1千万と規定、23歳以上の者の教育資金の範囲も限定されることになった。結婚・子育て資金特例についても、受贈者の所得要件として1千万円とすることが追加された。
これは、この1年間の新規契約数が創設当初の件数より大幅減であることや、教育資金特例については経済格差が教育格差を生んでいる現状などが考慮された模様だ。

31年10月からの消費税率アップの受け皿

31年10月から消費税率10%に引き上げることがほぼ確実視されているが、税率アップに伴う景気対策の受け皿として、自動車関係の税制で優遇する措置が盛り込まれている。
車体課税については、31年10月1日に導入される自動車税の環境性能割について32年9月30日までの軽減措置、自動車税種別割の税率引下げ(恒久化)を行い、一方で自動車税のグリーン化特例や自動車取得税のエコカー減税については対象の絞り込みを行うなど抜本的な見直しが行われている。
住宅購入に伴う借入金等の所得税額の特別控除、いわゆる「住宅ローン控除の特例」については、現在の10年から13年に引き伸ばした。ただ、適用年10年目までは現行制度と同額の住宅借入金等特別控除を認めた上、11~13年目までは①住宅借入金等の年末残高「(4千万を限度)×1%」と②「住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得等の対価の額または費用の額に含まれる消費税額等(4千万限度)×2%÷3」のいずれか少ない金額とするとされている。
このほか住宅関連では、31年12月31日で期限切れとなる「空き家に係る譲渡所得の3千万円特別控除の特例」について、適用期限を35年12月31日まで4年延長した上で、老人ホームなどに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋・土地等について、一定の要件のもと適用を認めることとした。また、土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限は平成33年3月31日まで2年延長される。

ふるさと納税、国際課税関係、ひとり親への対応

近年過熱気味とされるふるさと納税については、過度な返礼品が問題視されていることを踏まえ、税額控除の対象となる団体を、返礼割合3割以下、地場産品等一定の基準を満たし、総務大臣が指定したものに限られることにした。さらには、指定した都道府県等がその基準に適合しなくなった場合は指定を取り消すことができることとされた。
国際課税の関係では、過大支払利子税制においてBEPS勧告内容に合わせるため①対象となる利子②調整所得の定義③基準値についての見直しなどを行い、移転価格税制では評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置の導入、移転価格税制上の無形資産の定義の明確化などが行われた。
このほか、最後まで協議が難航したひとり親をめぐる税制上の措置については、事実婚状態でないことを確認した上で、支給される児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親に対して個人住民税を非課税とする措置が設けられた。結婚しないで生まれた子どもを育てるひとり親に対しては、さらなる税制上の対応を32年度税制改正において検討し、どうするか判断するとも盛り込まれている。
31年度税制改正大綱では、“大玉”といわれる税制改正が少ないものの、税の実務家や経営者にとって抑えておくべき内容がかなり詰まっている。組織再編税制をはじめ連結法人関係及び業績連動型給与、国際税務関係はかなり詳細にチェックしておく必要があるだろう。さらに、納税環境の整備については、課税当局の情報紹介手続きについて事業者への協力要請をはじめ報告の求めなど明確にされていることから、会計人はその内容についてしっかりと抑えておきたい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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