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30年分確定申告  サラリーマンも「特定支出控除」で節税対策 制服やスーツを必要経費で落とす方法

確定申告シーズンが目前に迫っているが、サラリーマンも事業主のように、一部経費を所得控除できるのをご存じだろうか。いわゆる、「特定支出控除」と言われる制度で、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費などを年収から必要経費として差し引ける。手続きなどの手間の割には若干、メリットが薄いようにも感じられるが、サラリーマンにとっては数少ない節税対策だ。

「特定支出控除」を簡単に紹介すると、医療費控除と似たようなもので、1年間のサラリーマンの給与所得から、ある一定の金額を「必要経費」として差し引けるもの。つまり、税金のかかる所得を低く抑えられるというわけだ。課税所得が低く抑えられれば、当然、納める税金は低くなる。
 では、サラリーマンの経費が「特定支出控除」として認められるものとは、どのようなものなのだろうか。
 国税庁のタックスアンサーNo.1415の記述によれば、以下の通りだ。
①通勤費
②転勤に伴う転居費用
③研修費用
④資格取得費
⑤単身赴任時の帰宅費用
⑥職務遂行に直接必要な資格取得費
⑦勤務に必要な経費(65万円が上限額)

まず、①の通勤費だが、交通費が会社で支給されていない人が自身で交通費を負担している場合などが対象となる。あまりに常識外れの交通機関の利用では適用が認められないケースもあるので注意が必要だ。課税当局では、「社会通念上の常識の範囲が該当する」としており、「運賃、時間、 距離その他の事情に照らして最も経済的かつ合理的」であることという限定がついている。とはいうものの、個人の生活レベルや育ってきた環境により、基準となる物差しは変わってくるので、適用の有無に自信がなければ、税務署に相談しながら進めることをお勧めする。
②に関しては、その費用を会社で補助してくれない場合が該当し、基本的には運賃や宿泊費、家財の運送費等が該当する。最終的には、個々の状況により事実が異なってくることから、事実認定によって判断されることもあるので、前述したことがすべてとは言えない。税務の適用判断として難しいのは、この「事実認定」。杓子定規に文字だけでは判断できないのだ。
③の研修費・図書費そして衣服費(制服費等)では、適用条件として「職務の遂行に直接必要なものであること」という前提があり、更にはそのことを会社側に証明してもらう必要がある。新聞などの定期刊行物は、「定期購読」が要件として考えがちだが、定期購読しなくても特定支出控除として認められる。
④の「資格取得費」についても、該当者は少なくないと考えられるが、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、教育訓練給付金が支給されても、支給された費用よりも受講料が掛かっている場合は、支給された部分を除き、特定支出控除の対象になる。ただ、これも会社からの証明が必要なので注意が必要だ。
資格取得では、弁護士・公認会計士・税理士・弁理士といった資格取得のための費用についても、勤務に必要な資格で会社が証明するものであれば、結果として資格取得に至らなくても対象となるとしている。ただ、会計大学院(アカウンティングスクール)に係る支出については、大学院修了で公認会計士試験の一部科目免除となるものの、受験資格を得るために直接必要な支出ではないため、資格取得費としては特定支出とはなりません。税理士資格に必要な科目免除が受けられる大学院についても、同様の理由から特定支出とはならない。

「制服・事務服」なども認められる

このほか、気になるのが⑦の「勤務に必要な経費」だ。適用となる要件としては、職務に関連するものとなるが、この判断には迷うことが多い。たとえば、制服・事務服・作業服など勤務場所において着用する「衣服費」。ビジネスパーソンの「制服」であるスーツに関しては、ほぼ職務以外で着用することがないため、基本的には特定支出の対象となるが、社内規定でスーツを着用することが定められていること、または、明確な社内規定にはないものの、勤務場所でスーツなどの着用が慣行になっているなどの事実が必要となるだろう。最近は、私服の会社も少なくないが、基本的にはシャツやジーンズなどの費用は、普段着にもなるので特定支出とは認められない。
「交際費」の特定支出に関しては「接待等の相手方が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること」。「支出の目的が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者との間の親睦等を密にして取引関係の円滑化を図るものであること」。「支出行為の形態が、接待、供応、贈答その他これらに類するものであること」という要件を満たしていることが必要だ。つまり、取引先とのお付き合いで、自腹を切ってその場の支払いした場合です。これが同僚や部下など、社内でのお付き合いに関しては特定支出には該当しない。

年度によって異なる特定支出控除の計算

特定支出控除の計算方法については、それぞれの金額を超えるとき、その超える部分の金額を給与所得控除に加算して控除する。
現在(平成28年分以降)は、その年中の給与等の収入金額にかかわらず、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は、「その年中の給与所得控除額×1/2」で計算。
平成25年分から平成27年分は、
①その年中の給与等の収入金額が1500万円以下なら、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は、「その年中の給与所得控除額×1/2」
②その年中の給与等の収入金額が1500万円超なら、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は「125万円」となっている。

つまり、たとえば年収800万円の人ならば、「800万縁×10%+120万円=200万円」になるので、給与所得控除額「200万円÷2=100万円」を超えれば、その超えた分を特定支出として適用できる。
特定支出控除の適用に当たっては、確定申告時に会社から証明書などが必要となり、詳細は国税庁が用紙などを提示しているので、適用に当たっては確認しておく必要がある。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

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