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「推計課税」での重加算税の判断は難しい

「推計課税」が話題になったのは昨年夏の大阪のたこ焼屋の脱税事件。大阪城公園内に店を構えるこのたこ焼屋は、約1億3千万円を脱税し、大阪地検特捜部が所得税法違反の罪で起訴した。このとき、いくら儲け、本当ならいくらの納税しなければいけなかったのかを洗い出し、税額を決めた方法が「推計課税」だ。現金商売で領収書などもなければ、正確な金額が分からないから、「推計」でこれら数字を決めていくのだ。この推計課税において、税のペナルティである重加算税が課せられることがあるのだが、どんなときなのだろうか。

「推計課税」は、売上や所得、経費の詳細が分からない場合、「近隣の同規模同業者の差益率(仕入金額に対する収入金額の比率)」や、「水道光熱費やその他事業に必要な経費の金額」などから、売上・所得を間接的に推計し、税額を決めていく方法だ。昨年夏に話題になった、大阪の大阪城内のたこ焼屋の約1億3千万円の脱税事件では、領収書も正確な帳簿などもなかったので、この推計課税によって税額が決められた。

基本的に推計課税で計算されることは少ないのだが、おおむね現金商売の業態が多い。いわゆる水商売といわれる業種であり、なかでも風俗営業の税務調査においては「推定課税」という単語が飛び交う。

税理士の間で話題になるのが、このアバウトな「推計課税」で所得金額が算定された場合であっても、納税者が売上代金等を秘匿していたのなら「重加算税」が課されるのかという問題。「重加算税」の要件は、「税額等の計算の基礎となるべき事実を『隠ぺいし又は仮装』していることが明らか」であるとき。

そのため、課税当局においては、推計(資産負債増減法、同業者率等)によって所得金額を算定した場合であっても、「隠ぺいし又は仮装している」ことが明らかであるときは、重加算税を課することになる推察される。

基本的に「推定課税」で重加算税を課すケースとして国税OB税理士は、「最高裁では、隠ぺいし又は仮装している行為を、単に無申告であったという消極的な行為だけでは足りない」としており、その判断は難しいと指摘する。

参考になる判例としてこのOB税理士は、名古屋高裁平成18年12月6日判決を取り上げ、「調査時の事実認定によるもよるが、風俗営業なら、許可申請手続をするに際して他人名義を使用している。クレジットカード加盟店契約を締結するに際して他人名義を使用している。日々の営業に関する営業日報や請求書、領主書等が手元に集まりながら、帳簿類を作成することなく、これら帳票類を定期的に廃棄している」など、隠ぺい、仮装行為と評価し得る積極的な不正行為と判断できるぐらいの事実認定が不可欠としている。

いずれにしろ、第三者が「これは積極的な行為」と思えるような事実がないといけないわけであり、法律だけでの杓子定規な解釈ではダメとういうこと。税金に関しては、課税当局と納税者で争いとなるケースが少なくないが、事実の判断は実に深く、難しい。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
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