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最後の節税保険になるか!? 国税庁が全額損金商品にメス

法人向け生命保険の節税商品にメスが入った。法人で加入する定期保険は、保険料を会社の経費で落とせるため、会社の利益を圧縮できる。また、解約時の返戻金が高く設定されているケースが多いため、計画的に解約すると、ほとんど保険料の負担なしで、合法的に資産を構築できる。そのため国税庁では、最近の行き過ぎた生保会社の営業活動に重い腰を上げることになった。

国税庁がまた、中小企業向けに販売している保険の全額損金プランにメスを入れる。
今回ターゲットになったのは、「一定期間災害保障重視型定期保険」。災害を原因とする死亡・高度障害状態を重点的に保障するもの。経営者に万一のことがあった場合に、死亡保険金・高度障害保険金を事業保障資金などの財源として活用できるのが特徴だ。
契約形態としては、契約者を法人、被保険者を役員及び使用人等、保険金の受け取りを法人として加入。こうすることで現行法人税基本通達では、保険料を原則、期間の経過に応じて全額損金算入(経費として引ける)できることになっている(法基通9-3-5)ため、法人では節税効果を狙い加入するケースが増えている。とくに、一定期間災害保障重視型定期保険は全額損金計上のほか、契約して数年後の解約返礼金が高く設定されていることから、税効果を含めると100パーセント超える実質的な効果が見込める。つまり、儲けている法人なら、経費として保険料を捻出しているため利益を圧縮し、税金を低く抑えることができるほか、解釈返戻金のピーク時に解約すれば、かなりの金額が戻ってくるという、ダブルのメリットを享受できる商品設計になっているわけだ。最近では、解約返戻金は5~10年でピークの9割程度に達するだけでなく、条件によっては、契約してから数年で7割を超える商品も販売されていた。
ただ一方で、一定期間災害保障重視型定期保険は5年間、10年間、15年間で基本的に災害による死亡の場合のみ保険金が支払われ、病気による死亡の場合は保険金を支払われない。通常の定期保険とは保障範囲が狭いというデメリットがある。
この商品は、日本生命が2017年に出した「プラチナフェニックス」に始まる。税理士の顧問先企業に対して積極的に販売され、中小企業経営者のニーズをつかみ、市場規模が数千億円にまで拡大。生保のセールス文句では、保険そのものの返戻率とは別に、節税効果も含めた「参考返戻率」という言葉が使われ、勧誘が過熱していた。
ところが、金融庁は節税効果を高めるための恣意的な付加保険料の操作には合理性がないとして、生保各社に是正するよう指導してきた。節税自体を問題視しているというより、売り方や恣意的な付加保険料の設定に厳しい目を向けていたわけだ。実際、同じ節税保険でも、金融庁が「おとがめ無し」としている商品もある。
一方、国税庁は、そもそも途中解約で支払った保険金の大部分が戻ってくることが前提なら、損金でなく資産として計上すべきという立場で、少なくとも保険料の全額を税務上の損金にできる仕組みは見直すべきだと強い意志がある。今回、国税庁が商品の根幹である税の取り扱いを見直すことにより、生保業界に根本的な見直しを迫ったわけだ。
国税庁ではこれまで、生保各社の担当者と協議を行い、法人向け定期商品のうち、ピーク時の「解約返戻(払戻)率」が50%を超える商品について、これまでのように保険料を全額経費として計上することなどについて話し合ってきたと言う。返戻率が高い商品は資産形成効果が高く、保険本来の相互扶助の趣旨に反するためだ。
国税庁では今後、パブリックコメントを実施したうえで、各社に正式に通達を出す見通しだが、日本生命のほか第一生命保険や明治安田生命保険、住友生命保険が解約時の返戻率が50%を超える法人向け保険の販売を停止。外資系のメットライフ生命保険なども販売を止めている。
かつて全額損金算入が認められていた逓増定期保険やがん保険の損金算入割合が2分の1に抑えられた過去の事例を踏まえると、今回も損金算入割合が2分の1に変更になるだろう。
そもそも、「節税保険」の販売停止は時間の問題だったわけで、課税当局が問題視していることは、専門紙・誌が繰り返し報道した。生保各社もその経緯を知りながら、根本的には同じような商品を開発したのだから、保険に詳しい人なら、保険会社の行動は「懲りない面々」としか言いようがない。過去の事例からすると、改正通達は施行前の契約には遡及していないことから、「販売停止になる前に・・・」という営業トークで節税保険をすすめている保険会社もあった。保険会社も同じことを繰り返し、自分で自分の首を絞るような行為は慎むべきであろう。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
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