M&A(買収・合併)仲介サービスのストライク(東京・千代田区、代表取締役社長=荒井邦彦氏)がまとめた2018年のM&A状況によると、件数及び取引金額の両面で顕著な伸びとなっている。M&Aを企業の成長戦略として取り組むケースが増えてきたが、しばらくこの傾向が続きそうだ。

ストライクはさきごろ、2018年の全国全業種のM&A件数をまとめた。それによると、2018年は前年比3%増の781件となり、11年以降の8年間で最高だった。
取引金額も前年比188%増の13兆7860億円と過去最大。これは、グルーバル化する経済の中で、世界的な企業間の競争激化を背景に、買収による規模拡大や事業の「選択と集中」が進んだもの。日銀による超金融緩和も買収を後押しした。
ストライクは、上場企業の適時開示をもとにM&A件数を集計。経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は集計に含んでいない。
18年に最もM&Aの取引金額が大きかったのは、武田薬品工業が同年5月に発表したアイルランドの大手製薬会社、シャイア―の買収。取引額は約7兆円にのぼった。ルネサスエレクトロニクスによる米国の半導体メーカーIDT買収の7330億円、日立製作所によるスイスABBの送配電事業買収の7140億円などが続いた。
2018年は取引総額が1千億円を超える大型のM&Aがこれまでの最高だった2016年に並ぶ20件に達した。このうち19件は海外企業を買収するクロスボーダー(国際間案件)で、2018年のM&A件数781件中、24.1%の188件がクロスボーダーとなった。
日銀による超金融緩和が続く中、多くの日本企業が中期経営計画などで、M&A投資を積極化する方針を示している。
大企業だけでなく中小企業においても、日本政府が事業承継策の一つの方法としてM&Aを推進しており、今後、増加する可能性が高くなっている。
一方で買収での「高値つかみ」を警戒する声も少なくない。武田薬品によるシャイアー買収を筆頭に、取引金額が高騰する傾向にあるためだ。
足元のデューデリジェンス(資産査定)の件数は増えており、公認会計士にとっては、M&Aに関係する業務はまだまだサポートニーズがありそうだ。
日本のM&A市場は当面、賑わうことが予想されているものの、懸念材料も指摘されている。米国と中国の貿易摩擦や米国の利上げによる影響など19年の景気の先行きには不透明感も広がっており、これがM&A市場への悪影響を懸念するとの声も出ているからだ。