厚生労働省による「毎月勤労統計調査」の不正統計問題が大問題となっていますが、この調査はしばしば「マイキン」と称されることが多い基幹統計となる調査です。統計調査の結果は、立法や行政、司法判断に大きな影響を及ぼすものであり、本件の問題はまだまだ燻り続けることでしょう。今回は、そうした国の統計についてみてみましょう。

厚生労働省の大不祥事

まず、今回の問題を大まかに確認してみましょう。

厚生労働省の毎月勤労統計調査において、従業者規模500人以上の大規模事業所については、本来は全数調査とすることとされているにも関わらず、東京都に関しては平成16年からそれが行われず、サンプル抽出が行われ、およそ3分の1の大規模事業所に対してしか調査が行われていなかったことが判明したといいます。こうした全数調査からサンプル調査へ変更するには、統計法11条《基幹統計調査の変更又は中止》に基づき総務大臣の承認を受けなければならないところ、かかる承認の申請は行われなかったようであり、マイキンに対する国民の信頼は大きく崩れています。

このような基幹統計の信頼が崩れるとことが政府の施策自体の信頼を揺るがす問題であることはいうまでもありません。
そうであるにもかかわらず、このような統計の不正や統計数値の取扱いのミスは、残念ながら今に始まった話ではないとういうのが現状です。

過去の統計不正やミス

例えば、北海道苫前郡羽幌町では、「人口水増し事件」が発生しています(昭和46年12月21日付け日本経済新聞)。
「日本の人口調査(国勢調査)は、その正確なことにおいて世界でもっともすぐれていると誇りにされている」などと評価する声(足利末男『生活のなかの統計』11頁(中央公論1973))もある中で、それでも、このような問題があることを忘れてはならないでしょう。

そもそも、統計自体には不正現象がビルトインされており、例えば、統計調査者の決定権が大きく統計の内容を左右することなどは従来から指摘されてきたところです(前掲書125頁)。

また、性質は全く異なりますが、過去には、全国の中学生約11万人が使用する地理の教科書に記載されている人口密度が誤っていたという報道などもありました(昭和47年7月26日付け朝日新聞夕刊〔大阪版〕)。

「マイキン」と「ミンキュウ」

さて、今回問題になっているマイキンは、租税訴訟においても、例えば、雇人費等の計算において認定材料とされることもあり(例えば、東京地裁昭和51年8月19日判決・行集27巻8号1477頁など)、租税法とて対岸の火事と片付けることはできません。

給与の実態や賃金の状況などを調べるときには、このマイキンのほか、「民間給与実態統計調査」もよく利用されます。「民間給与実態統計調査」とは、国税庁長官官房企画課が発表するもので、「ミンキュウ」と省略されることも多い調査です。

かかる調査は、民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としています(統計法による「基幹統計」に指定され、「民間給与実態統計調査規則(昭和30年2月22日大蔵省令第3号)」に従って実施されている統計です。)。

ミンキュウの結果も、マイキンに並んで多くの政府の施策や法律の制定・改正の前提となる事実として機能する統計です。もちろん、国税庁もそれらを参考にしています。立法や行政、司法に直接影響を及ぼし得る基礎的な統計の信頼が改めて問われているのです。