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暗号資産(仮想通貨)税制 参院財務金融委員会で「雑所得」から「譲渡所得」に変更すべきと指摘

国税庁は5月14日、参議院財政金融委員会において、日本維新の会の藤巻健史議員の暗号資産(仮想通貨)の税制に関する質問を受けて、税制上で雑所得に分類されるというこれまでの見解に変更はないと述べた。藤巻議員は、5月9日に日銀の黒田総裁が「仮想通貨は支払い決済に使われていない」という実態を認めたことを受けて、国税庁は法律上における定義に固執していると厳しく指摘した。

日銀の黒田総裁が仮想通貨に関して「支払い決済にはあまり使われておらず、ほとんど投機の対象になっている」と発言したことが、税務上の取り扱いに大きな波紋を投げかけた。同月14日、参議院財政金融委員会において、日本維新の会の藤巻議員はこの黒田総裁の発言を取り上げ、日銀総裁も支払い手段ではなく値上がり益を目的にした資産であると認めたのだから、国税庁は仮想通貨の税制上の取り扱いを現状の雑所得から譲渡所得に変えるべき。また、金商法の規制下にある暗号資産に関しては、金融所得課税の一環として外貨預金の為替益を含めて損益通算もでき、20%の源泉分離課税するのが最も合理的ではないか」と主張。これに対して財務省の星野次彦主税局長は、「国際的な動向も踏まえ名称を“仮想通貨”から“暗号資産”に変更するが、定義が変更されるものではなく、資金決済法上はこれまで同様に対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値として規定」、また「消費税法上も、支払い手段として位置付けられる」とし、外国通貨同様に、その売却益等は資産の値上がりによる譲渡所得とは性格が異なるため、現行の「雑所得」の取り扱いを変更する必要はない回答した。
国税庁も「暗号資産は資産ではあるが、譲渡所得の起因となる資産には該当しない」と主張。麻生太郎財務相も「株式の分離課税は、所得税の再分配機能を一定程度損なったとしても、家計の株式等への投資を後押しする“貯蓄から投資”という政策的要請を前提としたものであるため、これと暗号資産を同列に扱うことは難しいのではないか」と述べた。
藤巻議員は、「事実上、支払い手段としては使用されていないのだから、実態に即して税制を変更するのが、国が行うべきことではないか」「租税法の最高権威者である金子宏先生が解釈によっては“暗号資産は譲渡所得になり得る”との学説も提唱していることから、逆に国際庁は、譲渡所得にならないという反論を示すべきだ」と詰め寄った。国税庁としては、学説ではさまざま意見が出されていることから、そこに意見をはさむことは控えるとして、雑所得か譲渡所得かの議論については避ける態度を取った。

今回の参院財政金融委員会のこのやり取りでは、結局のところ財務省・国税庁は、これまで通り暗号通貨は「雑所得」という見解を曲げることはなかった。とはいうものの、暗号通貨における所得区分の突っ込んだ議論はこれまでなく、国税庁もなぜ雑所得としたのか、その経緯などを示していない。中央大学の酒井克彦教授も、一般社団法人仮想通貨実務家協会のオープンセミナーなどで「所得税法に係る課税上の取り扱いを議論するに当たっては、まず、仮想通貨が所得税法上の『資産』なあるのか否か、仮に資産であるとしても、いかなる資産として扱うべきなのかという問題が課税非課税を決定する前提事項となる」と指摘する。
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暗号通貨に関しては、市況の落ち込みが続いていることから、一般納税者の間ではあまり話題にならなくなった。ただ、世界的な動きの中では、暗号通貨はこれから新たな発展の兆しが見えてきている。そうなると、現状のままでは、課税上の問題が日本経済の発展にブレーキがかけることもあり得る。経済的な側面では、競争にブレーキをかけてはいけないという点では政策的にも行政的にも一致しているだけに、筆者としては、国税庁はこれまで通りの主張を繰り返すのではなく、先々を見越して課税上の根拠となる議論を今のうちに深めておくべきだ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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