税金のことで分からないことがあれば、まず税務署に相談へ行く。これが多くの納税者が取る行動だと思う。「お役所の言うことだから基本的には正しい」という意識があるわけだが、中には誤った指導をしてしまうこともある。もし、職員の誤指導で申告ミスがあった場合、税金のペナルティ措置である「加算税」は付くのだろうか?

税務署の職員も、若手の新人もいれば熟年のベテラン職員もいる。税務署職員だからと言って一律に同じ知識・経験があるわけではなく、税金のことにすべて詳しいとは限らない。
そのため稀に、税務処理について税務署に相談し、その指導に基づいて申告をしたにも係らず、その後行われた税務調査で「この課税処理は誤り」として是正を求められたとの話を聞く。さらに、税金のペナルティ措置である過少申告加算税を課され、納税者と税務署とで争いになったなどの話しも少なくない。納税者側からすれば、税務署の指導通りに処理をしたのだから、責任の一端は税務署にあり、過少申告加算税の賦課は納得いかないと言うのが正直な意見だろう。

国税OB税理士によると、「いわゆる税務相談は、納税者が納税申告をする際の参考とするために行われる行政サービスの一環であり、税務職員が相談者の一方的な申立てに基づき、その申立ての範囲内で、税法の解釈、適用及び納税申告の手続等に関して指導、助言するものである」と言う。そのため、前述のようなケースで加算税の賦課の有無を判断するのは難しいものの、税務職員の誤指導があったことにより過少申告加算税を課さない場合は、「個別的具体的な資料に基づくか、かつ税務署長等権限のある者の公式の見解の表明と受け取られるような特段の事情があるものとされている」と話す。
つまり、税務相談における職員の指導・助言は、一般的かつ仮定的な判断を示すものにすぎないとされ、これに従うべきか否かは、納税者の自己の判断と責任に委ねられる。そのため、いくら税務署の職員が指導したとしても法的な拘束力はなく、責任もないという考え方なのだ。

とはいうものの、税務職員の誤指導について、税務職員の行った指導、助言が納税者の提示した個別的具体的な資料に基づくものであって、この指導等が税務署長等の公式見解であると納税者に受け取られるような特別な事情がある場合であれば、「正当な理由」があるわけで、税務署と争う場合は、この点がポイントになる。「税務署の言うことだから」と、すべて鵜呑みにして、従っていれば安全と言うわけではないことは知っておきたい。