6月1日から「ふるさと納税」の新制度がスタートした。新制度は、行き過ぎた返礼品合戦を是正するため、制度の適用を受けられる地方団体を総務大臣が指定する。新制度の内容とふるさと納税制度の歩み、新制度の内容等をみていく。
生まれ変わった「ふるさと納税制度」は、寄附金に占める返礼品割合が3割以下、地場産品のみとするなど厳格に規定された。そして、総務省の是正要請に従わず返礼品を送り続けていたとして大阪府泉佐野市をはじめとする4市町が対象外とされ、これらの団体による「ふるさと納税」の再開は早くても来年10月からとなった。
ふるさと納税は、“納税”という名称が付くが、制度上の実態は“寄附”であり、任意の自治体に寄附をして、その寄附金額を現に居住する地方自治体へ申告することにより寄附分が控除できる仕組み。希望自治体に事実上の“納税”をするという意味合いがあり、地方団体が自ら財源を確保してさまざまな施策を実現するために有効な手段として、地域経済再生の重要制度として認識されている。平成20年度税制改正で創設・導入され、寄附金のうち2千円を超える部分について、一定の上限まで、原則所得税・個人住民税から全額が控除される。
制度導入後暫くは、
(1)諸外国と比べて日本には寄附文化が根付いていないこと
(2)制度の周知が高まらなかったこと
から、適用件数等は低迷していた。
その後、政府は制度の適用促進を図るため数年にわたり法改正等を実施。また、ふるさと納税を宣伝する民間のポータルサイトがいくつも登場して、地方団体へのサポートを行い始めてから、返礼品の充実等が図られ急速に適用件数等が増加した。
さらに、マスメディアもこぞって豪華な返礼品を取り上げた特集を組んだ効果もあり、平成26年以降の寄附額は急カーブで増え続け、30年3月までの1年間における全国の地方団体が受け付けたふるさと納税の件数は1730万1584件、寄附額は3653億1667万円となり、連年過去最高を更新し続けている。
寄附が増えるほど、地方自治体での寄附の奪い合い激化
右肩上がりで増え続けるふるさと納税の寄附件数と寄附額の一方で、地方団体は寄附獲得のため、返礼品を高額なものや換金性の高いもの、地元物産等とは関係のないものなどが増えはじめ、いわゆる“寄附の奪い合い”に突入。その結果、地方団体の中には、住民が他の地方団体へ寄附を行うことによる個人住民税の大幅な減収により、住民サービスに影響が出る地方団体も出てきたことから、「ふるさと納税制度の趣旨から逸脱している」と指摘も高まった。
しかし、そもそも返礼品は、地方団体が寄附者へのお礼として自主的に提供しているもので法律に明記されていないことから、総務省で強制的に改善させることが出来ないため、あくまでも“お願いベース”として平成28年4月に初めて、地方団体へ返礼品の返礼品の適正化への要請を行った。
しかし、これに応える地方団体はわずかだった。