人気連載第19弾! 東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた税制コンサルタントMariaが、あらゆる国の税に関するエピソードをご紹介。今回は、アメリカのあらゆる州で採用されている、“税の休暇“ 消費税のタックス・ホリデーについてご紹介します。

令和元年! おめでとうございます!

令和になりましたね~! そして、日本は10連休という超大型連休でしたね! うらやましすぎます。

香港は10連休でなく、3連休でした。近所の山に登ってきました。香港島はとても小さいため、町から山まで数十分なのです。

連休を利用して、海外旅行に出かける方も多かったのではないでしょうか。
筆者の住んでいる香港でも、ガイドブックを持って歩く日本人がちらほら。

余談ですが、外国で日本人(特に女性)を改めて見ると、みんなオシャレでかわいいですね。
海外暮らしをしていると、パーティーでもデートもない普通の日にメイクしている人は少数派のように感じられます。

ニューヨークに住んでいた頃も、すっぴんでオフィスに来る人の多さに驚いたものです。
濡れた髪のまま通勤しちゃうくらい自然体な方もいるくらい・・・。

香港でも、日本人女性はやはり特別なのだなぁと感じます。
ブランド物が大好きな香港女性たちですら、お顔と髪型には何も施さず通勤される方がとても多いです。

日本人の女性は、デートも何もない日であっても、学校にせよ職場にせよ、メイクをして、ハイヒールを履いて、スカートに重ね着に・・・オシャレを楽しんでいる感じがします。もちろん全員ではないですが、そんな日本人女性の美意識の高さは本当に素晴らしいと思います。

今回の連休、中国本土の連休とも重なっていました。5月1~4日までのLabor Day Holidaysです。
日本国内にも、中国本土の観光客の方が特に多く見受けられた時期なのではないでしょうか?

そんなお休みモードの中、私はというと・・・期末試験に追われていました!
後期の授業が終わり、この夏、香港大学大学院を卒業します。国際税法のテキストと向き合って過ごした連休でした。来年こそ楽しむぞ~!

さて、話を戻して・・・今回は連休(ホリデー)にちなんで、タックス・ホリデーというものをご紹介します。

税金の休暇?

タックス・ホリデーは、直訳すると“税休暇”ですね。税制がお休みするイメージです。

実際の意味するところも、その通りです。
本来課されている税金を、一定期間、特定のヒトやモノに対して免除することをいいます。

先ほどの写真に引き続き、筆者が登った山の写真です。香港、実は75%の土地が森林地なのです。居住区エリアはとても限られており、家賃は世界一の高さです。

税理士や会計士の皆様が連想するタックス・ホリデーは、法人税について布かれるものが多いかと思います。
特定の産業の奨励や外資誘致のために、政府が政策として、法人税を一定期間減額するというものです。

最近の大規模な例ですと、インドネシアが発表した、パイオニア産業へ新規投資を行う企業に対するタックス・ホリデーの拡張が有名なところです(最大で20年にわたり、投資額に応じて法人税を 50~100%減額)。東南アジア諸国にはよくある制度で、マレーシアやシンガポールなども、外資誘致のためのタックス・ホリデー制度をもっています。

今回の記事は、上記のような法人税の減額措置ではなく、アメリカの各州が導入しているSales Tax Holidayについてです。

アメリカには国としての消費税がありませんが、各州ごとのSales Tax (売上税)が存在しています。いわゆるVATと呼ばれる付加価値税(日本の消費税など)との違いは、最終消費の段階でしか税が発生しない点です。仕入れには税がかからないということですね。消費者がスーパーで食材を購入するときにはSales Taxがかかりますが、スーパーが卸業者から食材を仕入れるときにはSales Taxはかかりません。

そんなSales Taxですが、州によってはある一定の時期、特定の品が免税になることがあります。例えば$100以下の洋服については、Sales Taxがかからない・・・といった具合です。

消費者支援の目的で導入されたSales Tax Holiday

Sales Tax Holiday、そのルーツは1980年に行われた、オハイオ州とミシガン州による、自動車への売上税免除だといわれています。景気が後退していた当時、同州で作られていたアメリカ産自動車をもっと買ってもらおう・・・! という政策意図でした。

それにしても、アメリカは買い物天国です。世界中のサプライチェーンはアメリカへ向いているといっても過言ではないです。ヨーロッパのヨーグルトなんて、香港だと倍額以上します。

現在のTax Holidayの始まりは、その少し後、1997年のニューヨーク州です。当時人々は、買い物をするときにニューヨーク州からニュージャージ州へと流れていっていました。ニュージャージー州は1993年にSales Tax の税率を7%から6%に下げていたため、ニューヨーク州の税率(ニューヨーク市の場合当時約8.4%)と比べると相対的に低く、その結果消費者がそちらに逃げてしまっていたのですね。

そこでニューヨーク州は、特に買い物が集中する8月にSales Tax Holidayを数日間布き、New Jerseyへの消費漏れを少しでも防ごうとしました。

その後ニューヨークはTax Holiday制度を続けることはなく、制度廃止となってしまいました。しかし、このニューヨークの政策を皮切りに、あらゆる州でSales Tax Holiday制度が開始されたのです。

現行さまざまな州で採用されている Sales Tax Holidayの一般的な制度は、ニューヨークの例にならい、8月のうちの数日間、衣類やコンピュータなど一定のものへのSales Taxを免税とするものです。

なぜ8月かというと、その時期はアメリカ全土で“Back-to-school”(新学期のための) ショッピングシーズンだからです。
日本の新学期は4月ですが、アメリカの新学期は9月です。
新学期の始まる前の消費者支援ということで、衣類や備品が8月に免税になるのですね。

現在のSales Tax Holidayは、“Back-to-school” が最も一般的です。しかし州によっては、ハリケーンや台風、真夏対策のための消費者支援、あるいは狩猟シーズンにその器具の消費を支援するものなど、その土地の特徴に合わせたSales Tax Holiday制度を採用しています。
各州のSales Tax Holidayの名目は、以下のとおりです。

参考:Federation of Tax Administrators

どんな商品がいくらまで免税なのかは、州の細目によります。
例としてテネシー州を見てみると、以下のものがSales Tax Holidayの対象です。
• $1,500以下のパソコン、ノートバソコン、タブレット型パソコン(マウスやソフトウェアなどの備品も含む)
• 単品$100以下の勉学のために必要な備品(ペン、ノート等)
• 単品$100以下の衣料品(一般的に必要とされる範囲のもの。アクセサリーやファッションバッグ、スポーツ用の衣類や器具は含まれない)

$1,500以下や$100以下といった金額の上限は、購入品ごとの設定です。つまり都度の金額が上記以下であれば、何度でも購入していいということになります。

そんなSales Tax Holiday、ピーク時には19州で導入されていましたが、2019年現在、導入州は15州にまで減りました。州の財政への打撃が大きい(特に売上税に税収を頼っているフロリダ州等)、政策としてあまりに未熟だ、などいろいろな議論があるようです。

今日の結論:Sales Tax Holiday、実はあらゆる州で廃止の方向です・・・