人気連載第21弾! 東京、ニューヨーク、香港と渡り歩いた税制コンサルタントMariaが、あらゆる国の税に関するエピソードをご紹介。今回は日本に帰省してきた筆者が、日本出国時に支払った国際観光旅客税について紹介します。
日本に帰省してきました~!
約1年ぶりに日本に帰りました!
街がきれい! コンビニが便利! ご飯がおいしい! 自動販売機がたくさん! 日本は最高です。
今回の旅は、息子くんにとって初の日本滞在でもありました。
子連れの海外旅行は何度かしてきましたが、祖国である日本へ連れて帰るのは初めてだったのです。
そんな今回の帰国に際して1番緊張したことは、子連れで公共交通機関に乗ることです。
私の住んでいる香港では、ベビーカーが電車に乗る光景は日常茶飯事で、子どもが車両で泣き叫んでも、それは普通のことと受け入れられている感じがあります。
息子とは、これまでトロントとソウルへも旅行してきましたが、どちらの都市においても、子連れである私たちに対して街の反応はとても温かく、公共交通機関での移動も快適なものでした。
しかし日本・・・特に東京に関しては、帰省前に何となく怖いイメージをもってしまっていました。
友人の話を聞くと、ベビーカーで子どもが寝ているのに“ベビーカーを畳んで”と言われたり(特に混雑しているわけでもなかったそう)、外国製の大きなベビーカーで車両に乗ると、冷ややかな目で見られたり・・・と、恐ろしいことが起こっているようなのです。
考え抜いた結果、ベビーカーを日本に持っていくことは断念し、抱っこひもで都心を通過することにしました。 どうしても東京駅を通過しなければならなかったので、身軽に動ける方法を選択したのです。
そして日本到着。私は息子を抱き、旦那さんはスーツケースを2個持つというフォーメーションで移動をしました。不運なことに、退勤ラッシュが始まりかける午後5時過ぎに東京駅で乗り換えをすることに・・・。結果、エスカレーターで何人かにぶつかりそうになった(早足で私を抜いていったため)のが怖かったですが、特にトラブルもなく移動できました。
でも正直、とても気を遣いました・・・。
次回、帰国する際には、ラッシュの時間にあたらないようにしようと心に誓いました。
国際観光旅客税の導入背景
さて、日本は2019年1月から国際観光旅客税を導入しました。
これは日本にとって、とても久しぶりに導入された新税です。
国際観光旅客税とは、日本国が、出国する旅客(国籍問わず)に対し、出国1回につき1000円の負担を求め、主に航空会社を通じて徴収を行うものです。
国籍を問わないので、日本人の出国であっても、外国人の出国であっても出国税は課されます。
導入の背景は2017年。国土交通省(観光庁)は、「明日の日本を支える観光ビジョン」を掲げ、2020年に4000万人、2030年に6000万人の訪日外国人観光客数を目標としました。
ちなみに2016年時点での訪日外国人観光客数は2400万人でした。2020年にオリンピックが開催されるとはいえ、目標まではまだまだ到達していません。そこで、観光財源の確保が観光庁を中心に検討されました。
そして2018年の税制改正要望として、国土交通省(観光庁)から財務省に対し要望が提出され、財源確保の手段としての新税導入が議論されたのです。税方式にする以外にも、手数料としての徴収の可能性が検討されたり、近隣国の導入実績を検討したりと、広く深い議論が行われました。
そして新たな財源の使用用途は、
(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
(2)我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上
上記の3分野に充当することと決定されました。
国際観光旅客税のおもしろい点は、観光財源の確保が目的とされて導入され、使用用途も上記3つと定められているにも関わらず、目的税ではなく普通税の部類に分類されることです。上記の使用用途は、税法で定められたのではなく、基本方針として閣議決定され、国会での法案検討時に説明されただけなのです。
目的税とは、特定の事業の財源にあてるために課せられる税です。政府のお金の使い道が限定される税ということです。国の道路税、市町村の国民健康保険税などがこれに該当します。
普通税は目的税でない税です。したがって、税収の使い道は何でもいいということになります。今回の国際観光旅客税は普通税の部類ですので、あくまで上記3分野への財源として使用されることが立て付けとなりますが、その他の政府支出へもフローしていくのではと思われます。
国際観光旅客税、近隣国の動向
近隣国の導入例を見てみましょう。
韓国…1997年導入、負担額1000円
台湾…1969年導入、負担額1845円
中国…1992年導入、負担額1530円
香港…1983年導入、負担額1680円
オーストラリア…1978年導入、負担額5100円
イギリス…1994年導入、負担額は空港や航空機の座席クラスにより1963円~7万668円
(財務省公表資料参照。為替レートは2018年4月当時のもの)
上記の国はすべて、出国時に税が発生する、日本と同じ方式をとっています。
使用用途は各国で異なります。目的税のような扱いをしている国の代表例は韓国で、税収の全額が観光振興基金に拠出されます。台湾、中国、オーストラリアでは、税収の一部が観光や空港整備のための財源となる旨が定められています。香港とイギリスにおいては、上記税収は一般財源になるため、日本と同じ普通税の扱いを受けます。
このような国際観光旅客税。新たな財源をもとに、日本の観光インフラがますます整いますように! と願うばかりです。
さて最後に、子連れ海外在住者の視点から見た、日本で感動したことベスト3を紹介したいと思います。
3位…赤ちゃん用品レンタル
今回の旅行では、ベビーカーやベビーバスなどをレンタルして使いました。とてもお得に人気な商品を使用することができ、レンタル期間も15日等短い区切りで指定することができました。これは香港にはないサービスなので、とっても便利だと感じました。レンタル用品の種類も豊富で、ベビーベッドからおもちゃまで(!)借りられるようです。
2位…サービス
チップをもらえるわけでもないのに、笑顔で素晴らしいサービス! これは日本特有ではないでしょうか。私の実家のある埼玉県川越市の某ドーナツ屋チェーンでは、定員さんのサービスにあまりにも感動し、帰国までの間に4日連続で朝ご飯を食べにいきました。(せっかく日本に帰ったのに、朝ご飯にドーナツというのは邪道ですが・・・)
1位…食品の費用対効果
もちろん、高いものは高いです。しかしながら、コンビニやスーパーで販売されている食料品等の価格が、他の大都市(ニューヨーク、ロンドン、香港等)と比べて、とっても安く感じられました。その割にとっても美味しい! これは感動です。食費を安く済まそうと思ったときに、その安さとクオリティー、そして安心・安全さを考慮すると、費用対効果はとても高いと思います。ちなみに、帰国してまずはじめに食べたのは、空港の中のコンビニで売られていたツナおにぎりでした。120円であのクオリティーはすごすぎます。
今回の結論:国際観光旅客税を財源に、日本の観光インフラがますます整いますように!
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