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東京地裁が消費税で注目判決 マンション取引に係る仕入税額控除否認事件

最近の話題の一つに消費税増税があるが、税の専門家の間で消費税の話題といえば、2018年6月にマスコミ報道のあった株式会社ムゲンエステートや株式会社エー・ディー・ワークスと課税当局との争いが挙げられる。不動産購入時の仕入税額控除が争点のこの争いを深堀してみる。

マンション販売事業者らが取得した居住用建物に係る消費税仕入税額控除の取扱いを巡っては、課税当局とムゲンエステート、エー・ディー・ワークスが現在東京地裁で係争中だ。争点は、入居者がいる中古賃貸マンションの建物や部屋を購入し、その後転売する取引の税務処理。消費税では、仕入れに際して支払った消費税を、売上時に受け取った消費税から控除して納める、いわゆる「仕入れ税額控除」をすることになる。
10月1日からは、消費税率が引き上げられたことから、不動産会社によっては影響も大きく、関係者は裁判の行方を注視している。
この地裁での争いが6月25日に結審し、判決の言い渡しが10月11日の見込みだ。同社並びに同様の問題を抱える同業者には厳しい内容となりそうだ。

同裁判の争点は、中古賃貸マンションを転売目的で購入した場合の消費税還付申告について「すでに建物を仕入れた日には貸付と家賃の収受が前提で、賃借権負担付売買契約締結していた」場合、非課税所得である個人家賃収入と共同して要する課税仕入れとなるとし、全額還付とはならないことの是非を問うものであった。
従来は転売目的が明確であり、賃貸が一時的なものは全額が還付対象とされてきた。しかし近年同様のケースで、仕入れ税額控除の大部分を否認する更正処分が相次いだ。

根拠となったのが平成24年1月19日付大阪国税不服審判所裁決で「課税仕入れ等の用途区分(消費税法30条2項)の判定について、課税仕入れ等を行った日の状況により、当該課税仕入れ等の目的及び当該課税仕入れ等に対応する資産の譲渡等の内容を勘案して行う」
とされた。
この裁決により、課税売上割合が95%未満の個別対応方式の場合、仕入れ税額控除が全額認められなくなり還付金額が激減するリスクが顕在化した。

一方、さいたま地裁平成25年6月26日付判決では、前記大阪国税不服審判所裁決を前提にしながらも、消費税法30条2項一号イに規定される「課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入れ」の解釈について、マンション等の課税仕入れを大方容認するかのごとき「コスト」なる用語を使用されていた。
マンション等販売業社の間ではこの一点を頼みとする流れが発生した(ただし、課税仕入れと同日に賃貸管理契約を締結しているため原告納税者側がこの裁判では敗訴している)。
また一部の識者から指摘された、行政側の同様のケースで仕入れ税額控除全面容認を示す「国税庁内部文書」提出命令申し立ては裁判長により却下され、「国側から原告に対する反証も必要なし」との心証を示すなど原告には厳しい局面となっている。
この件はほぼ同内容で追徴税額5.4億円を争うエー・ディー・ワークス社が継続している裁判にも影響を与えると考えられるが、前記識者が関わっている事案だけに注目されている。

筆者は、30年ほど前、出向先の総務課から法人課税部門に戻った際いきなり「主担部門」と略称されることになる法人課税部門の消費税担当部署が誕生しており驚いた。
法人の消費税調査は全て法人課税部門の担当者が行うことになったが、全てが手探りで導入の経緯からしても暫くはかなり緩い対応だったことを思い返している。
消費税の税収は導入当初平成元年3.3兆円だったものが、令和元年予算では所得税収に匹敵する19.4兆円が予定されている。

10月1日付で消費税率も8%から10%に引き上げられたのと同時に、2023年10月1日以降予定されている適格請求書保存方式(インボイス方式―登録ナンバーを得た事業者の請求書でなければ仕入れ税額控除できない)導入を睨み、経済合理性や効果を無視して
でも消費税の課税方式の精緻化が進展しそうな状況である。

著者: 松本大路

税金ジャーナリスト/元税務調査官

税務調査官として約13年、都内の税務署などで法人税調査などを行う。その後、外資系生命保険会社の営業職員として約10年間、資産家及び法人、会計事務所向けに、役員退職プランや決算対策などをサポート。現在はフリーの税金ジャーナリストとして活動する。

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