国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

ノーベル化学賞にリチウムイオン電池開発の吉野氏 賞金は3等分も税金は非課税

スウェーデンの王立科学アカデミーは10月9日、2019年のノーベル化学賞を、スマートフォンなどに使用されているリチウムイオン電池を開発したとして、旭化成名誉フェローで名城大学教授の吉野彰氏(71)ら3人に授与すると発表した。日本人がノーベル賞を受賞するのは、アメリカ国籍を取得した人を含めて27人目、化学賞では8人目。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナが贈られる。日本円にして約9700万円だが、賞金には税金がかかるのだろうか。

吉野氏とともに今回ノーベル化学賞を受賞したのは、ジョン・グッドイナフ氏(米国)とスタンリー・ウィッティンガム氏(英国)。グッドイナフ氏は97歳で最高齢の受賞だ。

ノーベル化学賞の受賞理由についてノーベル委員会は、「軽量で再充電可能なパワフルな電池は現在、携帯電話からラップトップコンピューター、電気自動車までさまざまな製品に使われ、ワイヤレス電子機器の基礎を築いた。太陽光や風力などのエネルギーを十分ためることができ化石燃料が必要ではない社会を作り出すことも可能にする」と述べた。

吉野氏は、大阪府吹田市出身で71歳。京都大学の大学院を修了後、旭化成に入社し、電池の研究開発部門の責任者などを務めたほか、一昨年から名城大学の教授も務めている04年に紫綬褒章受章。13年にロシアのノーベル賞ともいわれるグローバルエネルギー賞を受賞しており、18年に日本国際賞、19年に欧州特許庁の欧州発明家賞を受賞している。

吉野氏は、80年代に充電することで繰り返し使うことができる2次電池の研究を開始。ノーベル化学賞の受賞者である白川英樹氏が発見した電気を通すプラスチック、「ポリアセチレン」を電極に利用する研究を行い、2次電池を世界で初めて考案し製作。小型、軽量化にも成功した。

リチウムイオン電池は1991年に商用化されて以来、さまざまな電化製品に搭載され、情報化社会に大きく貢献してきた。小型のセルを大量に接続してひとつのバッテリーのように扱えるほか、充電と放電のサイクルを幾度となく繰り返せる。そのため、トヨタ自動車の「プリウス」などのハイブリッド車やテスラ車に代表されるEVなど、持続可能なクリーンエネルギーにおける重要かつ信頼のおける部品となった。また、大容量の電気をためることができることから、太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーの電気をためる蓄電池として利用が広がるなど、化石燃料を使わない社会の実現を可能にする地球環境にやさしい技術として高く評価されている。

ある試算によると、リチウムイオン電池の世界市場規模は約360億ドル(約3兆8700億円)とされており、それが2026年にはおよそ1100億ドル(約11兆8200億円)になる可能性があるとしている。

日本人がノーベル賞を受賞するのは、去年、医学・生理学賞を受賞した本庶佑氏に続き、アメリカ国籍を取得した人を含めると27人目で、化学賞は9年前の鈴木章氏と根岸英一氏に続いて8人目だ。以下、これまでノーベル賞を受賞した日本人一覧。

【ノーベル賞】日本人受賞者一覧
1949年  湯川秀樹(物理学賞)
1965年  朝永振一郎(物理学賞)
1968年  川端康成(文学賞)
1973年  江崎玲於奈(物理学賞)
1974年  佐藤栄作(平和賞)
1981年  福井謙一(化学賞)
1987年  利根川進(医学・生理学賞)
1994年  大江健三郎(文学賞)
2000年  白川英樹(化学賞)
2001年  野依良治(化学賞)
2002年  小柴昌俊(物理学賞)、田中耕一(化学賞)
2008年  南部陽一郎 / 小林誠 / 益川敏英(物理学賞)、下村脩(化学賞)
2010年  鈴木章 / 根岸英一(化学賞)
2012年  山中伸弥(医学・生理学賞)
2014年  赤崎勇 / 天野浩 / 中村修二(物理学賞)
2015年  梶田隆章(物理学賞)、大村智(医学・生理学賞)
2016年  大隅良典(医学・生理学賞)
★ 2017年 カズオ・イシグロ(文学賞)⇒ 1983年イギリスに帰化
2018年  本庶佑(生理学・医学賞)

さて、ノーベル賞受賞者には、名誉だけでなく賞金も贈られる。賞金は900万スウェーデンクローナ(約9,700万円)。この賞金だが、2001年から2011年までは1000万スウェーデンクローナ、2012年から2016年まで800万スウェーデンクローナ、2017年から900万スウェーデンクローナが贈られている。

吉野氏らには今回のノーベル賞の受賞で900万スウェーデンクローナが授与されるわけだが、今回は受賞者が3人いるため、これを3人で分けることになる。つまり、一人当たり賞金は3200万円というわけだ。

ところで、この3等分されたノーベル賞の賞金だが、税金がかかるのだろうか?
実は、ノーベル賞は所得税法9条の非課税項目で、税金は納めなくてもよいことになっている。

ノーベル賞が非課税となったのは昭和24年の湯川秀樹氏が日本人初のノーベル物理学賞を受賞したときまで遡る。このとき賞金に課税するのはどうかの議論になり、法律が改正され、所得税法に「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」と明記され非課税となった。

ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和および経済学の「5分野+1分野」で顕著な功績を残した人物に贈られるが、ノーベル経済学賞だけは課税対象だ。理由は、経済学賞だけはノーベルの遺言にはなく、スウェーデン国立銀行の設立300周年祝賀の一環としてノーベルの死後70年後にあたる1968年に設立されたからだ。法律では非課税になる賞金として“ノーベル基金”と限定しているため、スウェーデン国立銀行が運営する基金から支払われる賞金には課税されるというわけだ。

ノーベル賞以外にも、来年開催される東京オリンピックのメダリストへの賞金も非課税の対象。このほか、「文化功労者に対する年金や金品」「日本学士院や日本芸術院から渡される各賞金」も非課税だ。

アイデアへの報奨金課税は複雑

さて、ノーベル賞とまではいかなくとも、サラリーマンも会社で研究開発を行って発明するケースがある。これを「職務発明」というが、職務発明による特許や特許を受ける権利は、原則従業員にあるため、会社には無償で特許発明を実施することができる実施権などが認められている。

職務発明を行った従業員は、その特許権や特許を受ける権利を会社に譲渡することも可能だが、その場合、会社から相当の対価を受け取ることができる。この受け取ったお金は、税金的には所得区分が2つに分かれる。
まず、発明した従業員が特許権などを会社に譲渡した場合は、従業員がその譲渡によって一時に得た報奨金は期間に関係なく長期譲渡所得となる。一方、実施権のように、発明の成果に応じて継続的に支払われると、長期譲渡所得ではなく雑所得と扱われる。長期譲渡所得や雑所得は源泉徴収の対象にはならないので、原則確定申告が必要だ(申告不要の場合を除く)。

現在、研究機関などの従業員の発明に関しては、「出願補償金、登録保証金、実施保証金、特別保証金を支払う」と定めているケースが多いようだが、ひとつの発明のなかでも、出願補償金は譲渡所得、それ以外は雑所得に分かれる。
また、新しいアイデアを出した従業員に対して、会社が報奨金を支払う場合は、通常業務の範囲内に関わる報奨金ならば給与所得として判断されている。

一方、工夫や発案などが自身の業務に関係のない従業員に対して支払う報奨金ならば、「一時に支払われるものであれば一時所得、その後の成果に応じて継続的に支払われる場合は雑所得」(課税当局)としており、工夫や発案がその従業員の業務の範囲内になるかについては中身を見て判断される。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■KaikeiZine
https://kaikeizine.jp/

ページ先頭へ