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チュートリアル徳井 税務調査の指摘で考えられる本当の不正行為とは・・・ 

納税に対する意識が低かった―。お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実(44)さんの謝罪会見でのひと言だ。各TV局が取り上げているので、おおまかな事実関係はご存知の方が多いと思うが、謝罪会見は10月23日の夜、突然開かれた。記者会見で質問する記者の税に関する知識の低さも目立ち、肝心なことが分からない会見になった。霧に巻かれたような会見になったのはなぜなのか・・・。

お笑いコンビ・チュートリアルの徳井さんの所得隠しなどに関する謝罪会見は10月23日夜、突然開かれた。謝罪会見によると、徳井さんが設立した株式会社チューリップ(東京・世田谷区)は、2018年までの7年間で約1億2千万円の申告漏れを課税当局に指摘されたという。

徳井さんは所属事務所の吉本興業から直接、出演料などを受け取るのではなく、自身が経営するチューリップを通じて給与として受け取っていた。そこまでは法律的に何の問題もないが、2016年から18年3月期までの3年間の法人所得約1億円を無申告。また15年3月期までの4年間は、旅行代や洋服代など約2千万円の個人的な支出を会社の経費にしていたとされ、所得隠しが指摘されたという。そして重加算税や無申告加算税など法人税の追徴税額として約3700万円、3年間、無申告だったころのものが1億円、その前4年間遡ったときの修正額2千万円を納税したという。

整理すると、徳井さんの会社であるチューリップに法人税調査が行われ、経費部分の支出の否認と無申告に関する指導が行われたという話だ。

まず、経費部分の否認については、衣装代や旅行、交際費などよくある話であり、全部が否認されたわけでないと思われる。しかし、会見ではこの部分に関して「所得隠し」があったと判断され、税金のペナルティー措置である重加算税が課せられたとしている。

つまり、衣装代が経費で落とせるのか、個人的な旅行も会社に付けていたとかで重加算税を賦課されたような話なのだ。なんとも不自然な話し。おそらく、もっと悪質な行為があったと認められたから、重加算税が課せられたと見るのが自然ではないか。

もし無申告の3期について重加算税を賦課しているのなら、課税当局は、税務調査に基づく期限後申告ということで重加算税を賦課したと考えられるが、課税所得があることを分かっていたにもかかわらず申告していない場合であっても、そのことのみを理由として重加算税を賦課するにはハードル高い。徳井さんが多額の利益を把握していることや税務知識を相当有していることをうかがわせるような事実があることを前提に、顧問税理士等から再三申告すべきと指摘されているような事実が認められ、さらに意図的に申告しなかったことを裏付けられる理由が見つけられない限り、なかなか重加算税を賦課することは難しい。

だからなのか、本当に本人が無知なのか、徳井さんは税務調査でのやり取りを「本当に情けないんですけど『納税に関する感覚が甘く、意識が低くて』とお話ししまして、国税の方が『こちらの方で適正な税金を計算します』とおっしゃったので、その分を支払いました」と説明している。

また無申告であった3年間、徳井さんは報酬を給与として法人から受け取っていたわけだから、源泉所得税の問題も指摘されたはず。経営者としての認定賞与になった部分もあると思われることから、この金額は大きいと推察される。そのことは会見では話に出てこなかった。

いずれにしても、謝罪会見で質問する取材陣の税金の知識のなさにはガッカリだ。この手の会見に望むのなら、税金についてもう少し明るい記者が担当するべきだ。翌日放送された各局のワイドショーも、コメンテーターは薄っぺらなコメントしかしないので、こちらもガッカリな内容だった。

ちなみに、株式会社チューリップは世田谷に所在地があるということは、調査が署管轄であれば世田谷税務署。報道では国税局と言っていたが、本当は何処なのか、事実を深堀りしていく上でこのことは重要なことなのだ。国税局扱いなら、相当悪質な事案だったのではないかと判断することもできる。筆者は署管轄の事案だったから、謝罪会見ぐらいで済んでいるものと思っている。

ところで、筆者が大いに関心があるのが、顧問税理士の存在だ。税務調査が入るということで、急遽お願いしたのか、それとも前から頼んでいた税理士なのか気になる。急遽お願いした税理士なら、最悪の事態を防ぐため、課税当局と話し合い、着地点を見つけた結果が今回の内容なのかもしれない。一方で、昔から関与していた税理士なら、税理士の専門家責任について疑問が湧く。税理士は法律で「無償独占業務」とされ、有償無償に関わらず、税務業務は税理士しかできないものと決められている。医者もそうだが、それだけ責任が重い資格なのだ。そして、税理士は、国側でも顧客側でもない“第三者的立場”で適正納税を指導する専門家とされる。報酬の有無に限らず、無申告を知っていてそれに目をつぶっていたのなら、容認しているのと変わりがないではないか。この件をキッカケに、税理士の無償独占業務についても、改めて考えてみたいと思わされた。

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著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
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