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チュート徳井 追徴税額は全部で1億5000万円を超える!?

お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実氏(44)が経営する個人会社が課税当局に申告漏れを指摘された問題で、読売新聞は10月28日の朝刊で、「追徴1億円超に」という報道をした。同紙によると、法人税、消費税、源泉所得税について具体的な追徴税額を示しているが、法人が納税する税金全体からするとさらに増えることが予想される。このほかのどのような税目で追徴課税されたのだろうか。

10月28日の読売新聞朝刊では、徳井氏の個人会社の追徴税額は法人税3700万円、消費税2100万円、不納付加算税を含めた源泉所得税が4400万円と報道している。

当サイトニュースでもすでに「チュートリアル徳井 税務調査の指摘で考えられる本当の不正行為とは・・・」の記事を掲載したが、徳井氏は2018年までの7年間で約1億2千万円の申告漏れがあったと課税当局に指摘され、追徴税額として「法人税3700万円をすでに納税した」と説明。このうち2千万円が所得隠しと認定されたことを徳井氏は記者会見で語っていた。この話に嘘はないだろうが、すべてを正直に話したわけではない。このことは、上記記事でも指摘したが、すべてを話させなかったのは、記者会見で質問していた記者の詰めの甘さが原因だ。その点、読売新聞などは取材活動により、記者会見では詰め寄れなかった疑問点を調べ上げて報道したわけだが、読売新聞が報道した税目以外にも追徴税額があることは確かだ。

基本的に、法人にかかる税金は、当サイト内の企画特集「アーリーステージ・中小企業のための お金で得する経営術 第1回会社にかかる税金と節税」でも説明しているが、国に納める税金として「法人税」「地方法人税」「地方法人特別税」、地方自治体に納める「法人事業税」「法人住民税(都道府県税)」「法人住民税(市町村税)」の6つある。消費税や源泉徴収税は、会社が間接的に課せられたもので、消費者や従業員に代わり会社が納税しているにすぎない。

つまり、今回の徳井氏の法人の追徴税額のケースでは、「法人税3700万円」「消費税2100万円」「源泉所得税(不納付加算税含み)4400万円」の合計約1億200万円だけしか明らかになっていないのだ。

「地方法人税」「地方法人特別税」「法人事業税」「法人住民税」に関しては明らかにされておらず、これら税金にも追徴課税されているはずだ。ざっくりと計算してみても納税した額は1億5千万円超になると予想され、謝罪会見時の金額とは大きくかけ離れている。とはいうものの、徳井氏は、嘘を言ったわけでなく、謝罪会見でも法人税の追徴税額だけについて発表しただけだ。

でも、謝罪会見を見ていると「追徴税額として約1億5千数百万円をすでに全額納付しました」とポロリ話している。とっさにお付きの方が徳井氏に耳打ちし、徳井氏は何気ない口調で「法人税として3700万円」と説明しなおした。

このやり取りを見て筆者が思ったのが、徳井氏はもしかしたら税金に詳しいのではないか?ということ。本人は税金に対する知識不足と納税に対するルーズさを繰り返し話していたが、記者会見では大ごとにならないように、嘘をつかずに上手く逃げていたように見えた。税金について詳しくなかったら、わざわざ追徴税額の一部である「法人税」だけをピックアップして説明するのも合点がいかない。普通に考えたら、知識がないなら税目に着目せず、納税した合計額を話すのではないかと思う。

それに、「無申告」というのも、本人は意図的に行っていたのではないかと感じさせる。単に納税したくないからという理由もあるが、下手に工作した節税をするより無申告の方が、何かあったときのリスクが低いと計算していたように思えるのだ。

査察に脱税犯として立件されるのは、基本的に申告をしている納税者(法人)であり、売り上げの一部を隠していた事実がある場合だ。「隠す」という行為が問題であるわけで、「税金の知識がない」「ルーズだった」と言われては、悪意ある犯罪とまで立証することは非常に難しい。査察としては、徳井氏本人が脱税を認めない限り、立証責任があるわけで、物証などを揃えて、検察が起訴できるように準備をしておかなければならない。そして検察が「それでは争えない」と判断したら起訴されない。もしかすると、徳井氏の事案でも査察が動いていたのかもしれないが、極めてクロ(脱税)に近いグレーとしか判断できなかったのではないか。つまり立件までは難しいと判断したのかもしれない。

これはあくまで個人的な意見なのだが、もし徳井氏が上記のようなことまで考えて行動していたら、かなりのワルだ。

もう一点、この事案はすでに昨年12月に税金問題に関しては解決している。今は、マスメディアが飛びついたことから、有名人としての社会的責任にまで議論が進んでいるに過ぎない。とはいうものの、筆者としては、年末の12月に決着したことにポイントがあるように思っている。というのも、課税当局内部の問題なのだが、人事評価につながる、いわゆる勤務評定は、年末までが一番の山場となる。年が明けると確定申告の時期になり、それが終わると7月には人事異動に繋がる。このスケジュールでいくと、人事評価につながる実績は年末の12月までに上司に挙げておかなければ、余ほどのことがない限り反映されない。国税職員は5万5千人に上るため、人事も時間を要するからだ。そう考えると、調査担当者は、重加算税も賦課でき、納税金額も大きい事案のため一刻も早く解決した方が良いと考えと思う。もちろん、徳井氏はマスコミに騒がれる前に早期決着したものと思われる。つまり、両者の利害関係が一致したわけだ。

いずれにしても、一連の行動が計算ずくだったのか、徳井氏本人から本音を聞きだしたい。

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著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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