海外勤務者が、長期に渡る海外勤務を終えて帰国した場合、帰国後は居住者となるため、国内源泉所得に限らずすべての所得が課税の対象となります。帰国前に日本国内の不動産の賃貸料収入などがある場合には、帰国後の確定申告が必要となります。帰国後の確定申告においては、非居住者期間と居住者期間が混在する為、注意すべき点があります。

《ケース》
私は、3年間の海外勤務の後、本年9月に帰国しました。海外勤務中は、国内の自宅を賃貸していましたので、本年9月まで不動産所得があります。そのため、来年の3月15日までに確定申告をする必要がありますが、その際の留意点を教えて下さい。
対象となる所得
非居住者の場合、国内源泉所得(例えば、国内不動産の賃貸収入)のみが課税対象とされ、海外勤務に基づき支給される給与は原則として課税されません。
しかし、帰国後は居住者となりますので、国内源泉所得に限らず、すべての所得が課税対象となります。また、帰国後の勤務に対する給与については年末調整の対象となります。
したがって、帰国後の確定申告では、帰国前の国内源泉所得(源泉分離課税となるものを除きます)及び帰国後のすべての所得を合計して計算します。
よって、このケースでは帰国前の不動産所得と帰国後のすべての所得を合計して確定申告を行うこととなります。

所得控除の注意点
非居住者期間を含む確定申告をする場合、所得控除の範囲で注意すべき点があります。
(1)非居住者期間中に支払った社会保険料
海外勤務者が非居住者であった期間中において、現地国の社会保険料を支払っていた場合、社会保険料控除の対象となるのでしょうか。
所得税法74条では、「居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合・・・・・・総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。」と規定されているため、非居住者であった期間に支払った社会保険料は控除の対象となりません。
したがって、社会保険料控除の対象となる社会保険料は、日本に入国した日以降に支払った社会保険料に限られます。
(2)非居住者期間中に支払った生命保険料
海外勤務者が非居住者であった期間中においても、日本の生命保険会社に生命保険料を継続して支払っている場合があります。
生命保険料についても、所得税法76条に同様に規定があり、居住者であった期間内に支払った生命保険料のみが生命保険料控除の対象となり、非居住者であった期間に支払った生命保険料は控除の対象となりません。
(3)非居住者期間中に支払った医療費
海外勤務者が非居住者であった期間中に、医療費を支払っていた場合があります。この医療費は医療費控除の対象となるのでしょうか。
所得税法73条には、「居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合において・・・・・・」と規定されており、医療費控除の対象となるのは、居住者である期間中に支払った医療費に限られます。
(4)扶養控除等
確定申告を行う際には、配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除の適用の有無及び控除の金額を確認しなければなりません。これらの判定は、その年の12月31日の現況により判定することとなっています。
以上、所得控除のポイントをまとめると以下に通りとなります。
《所得控除のポイント》
● 医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の各控除の額は、居住者期間(帰国後)に支払った金額が対象となる。 ● 配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除の各控除の額は、その年の12月31日の現況により判定する。 |
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