第3回では「オンラインレンディング」には、どのような種類があるのか大枠を紹介した。オンラインレンディングの一種の「AIスコア・レンディング」「ソーシャルレンディング」を比較しても、仕組みは全く違う。そのため、オンラインレンディング全体ではなく、種類ごとに個別で理解しないとサービスの使い方を間違えてしまう可能性がある。

AIと数値を活用したオンラインレンディング
「AIスコア・レンディング(AI score lending)」
「AIスコア・レンディング」は、貸金業者である株式会社J.Score(ジェイスコア、英: J.Score CO., LTD)が提供する個人向け融資サービスの名称。同社は、みずほ銀行がソフトバンクと合弁で設立し、株式会社J.Scoreの連結子会社となっている。日本で初めて人工知能を使ったAIスコア・レンディングをはじめたことで有名だ。
みずほ銀行の持つ顧客データ分析やローン審査ノウハウと、ソフトバンクのAIを用いたデータ分析を融合し、顧客データをスコア化して融資に活用する仕組み。個人向けの融資サービスで、顧客の信用力と可能性をスコア化したAIスコアに基づき、金利・極度額といった条件の参考値を提示していく。これにより、これまで融資できなかった低与信層にも融資が可能となるとされており、顧客がスマホアプリに情報を追加していくことで、融資を申し込む前から借り入れ条件が分かるほか、データが多いほど低金利(年0.8% – 12.0%)で融資が受けられる。
担保・保証人の必要はなく、融資額は1千万円まで。みずほ銀行に口座を持っている人や、ソフトバンクまたはワイモバイル、Yahoo!JAPANのユーザーが個人向けカードローンの借り入れを考えているなら、J.Scoreを利用すれば貸付金利からさらに金利が引き下げられる。
「 ラインポケットマネー(LINE Pocket Money)」
LINEが信用スコア「LINE Score(ラインスコア)」を使い、個人向けに提供している融資サービスが「 ラインポケットマネー」。プラットフォームとしてのLINEから収集できる個人データを使い信用力を分析、その結果にもとづいて融資する。申し込みから融資まですべてアプリ上で完結しているので、使い勝手の良さがウリ。J.Score(ジェイスコア)と同様に、みずほ銀行と提携している。
「新生銀行のスマートマネーレンディング」
新生銀行は、携帯電話の通信キャリア大手のNTTドコモが提供する信用スコアサービス「ドコモスコアリング」と提携して、「スマートマネーレンディング」という「スコアレンディングサービス」を提供。(参考:ドコモが信用スコア提供 金融機関が融資に利用|ITメディアビジネスONLINE)
利用できるのはNTTドコモの携帯電話の契約者という縛りがある。信用スコアの分析は、ドコモの携帯利用データが使われており、基本的には、ドコモの携帯電話の利用料金の支払い状況により、融資条件が変わってくる。
代表的なトランザクションレンディング
第3回でも説明したがトランザクションレンディングは、特定のプラットフォーム内での取引データから信用力を測定し、融資するサービスだ。
この、「特定のプラットフォーム」で有名なのが「楽天モール」「Amazonマーケットプレイス」。これらのプラットフォーム内に出店し、商品売買を行っていれば、プラットフォームを提供する企業と日々の売り上げなどに関する情報を共有することになる。これら取引情報から、プラットフォームを提供する企業が審査を行い、融資していく。
「 楽天スーパービジネスローン」
ECプラットフォームの「楽天」に出店している店舗向けの融資サービスで、楽天の店舗内の取引データから融資判断をする。そのため、店舗側としては融資に際して資料作成などの必要がない。リアルタイムの取引データで審査することから、急に売り上げが上がって在庫不足になったときのために在庫確保目的の融資も受けやすい。
「Amazonレンディング」
Amazonに出品している法人向け融資サービス。審査内容は、ほぼ楽天と同じ。在庫状況などもAmazonとデータ共有されているため、従来の販売状況から在庫が切れる予測が付き、タイムリーな融資が受けられる。融資額は10万円から5千万円で、金利は9.9%~13.9%となっている。返済期間は6カ月で、Amazonレンディングの返済は、Amazonマーケットプレイスでの売り上げから返済金が差し引かれる仕組み。
「 エメラダ・バンク」
エメラダは、日本で数少ない株式投資型クラウドファンディングに参入している会社。そのエメラダがオンラインレンディングの「エメラダ・バンク」を提供している。
「エメラダ・バンク」は、融資判断に決算書以外に、銀行の入出金データなどを分析して融資をすばやく実行する。5 年までの長期の成長資金を、チャット等を利用したスピーディな審査で提供する仕組み。金利は2%~15%。
バランスシートを活用したオンラインレンディング
ネットバンクや会計ソフトから確認できる入出金データから融資審査を行うオンライン融資。基本的には、「会計ソフト内の入出金」「銀行口座の入出金」から審査する。
「アルトア オンライン融資サービス」
アルトアオンライン融資サービスを提供するのは、オリックス株式会社および会計ソフト「弥生会計」を提供する弥生株式会社が共同で設立したアルトア株式会社。会計ソフト「弥生会計」または「やよいの青色申告」を利用している法人および個人事業主を対象に融資する。
オリックスが持つ与信ノウハウと弥生が持つ会計ビッグデータ、与信モデルによる短期・小口に特化した小規模事業者向けオンラインレンディングサービス。アルトアの与信モデルは、決算情報など一時点での静的データに依拠するのではなく、動的な連続データである会計ソフトの仕訳データを利用し、瞬時に実行している。
融資金額50万円から300万円で、金利は2.8%~14.8%。
法人の場合、「弥生会計」に1期(12カ月)以上の仕訳データが入力されているか、申込月の3カ月前の月末までの仕訳データが入力されていることが要件。個人事業主の場合は、青色申告者であることのほか、「弥生会計」または「やよいの青色申告」に1期(12カ月)以上の仕訳データが入力されているか、申込時の前年末で繰越処理された、申告時の会計データがあること。(詳細:アルトア 8月からオンラインで即日融資を実現|KaikeiZine)
「 マネーフォワード クラウド資金調達とマネーフォワードファイン」
マネーフォワード クラウド資金調達はクラウド会計ソフトや家計簿アプリを提供する株式会社マネーフォワードによって運営されている融資サービス。特徴は、マネーフォワードが管理する会計データなどを利用して提携する銀行が与信に用いて、融資するもの。つまり、融資するのは、マネーフォワードではなく提携銀行なのだ。
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アルトア株式会社(東京・千代田区、代表取締役=岡本浩一郎)
『弥生会計』の弥生株式会社の子会社。
「アルトア オンライン融資サービス【ALTOA】」を提供。会計データとAIを活用した新たな与信モデルを開発し、インターネットを通じて小規模事業者向けに、簡単手続き、保証人・担保なし、早期融資のサービスを提供する。
https://www.altoa.jp/