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ヤフー、IBMの税金裁判に学ぶ 2つの「行為計算の否認」規定 明暗を分けたポイントに迫る

たとえ法に則った行為であっても、税務署がそれを「租税回避目的」だと判断すれば、税務署長の権限で課税できるという恐ろしい規定がある。法人税法132条(同族会社の行為計算の否認)と、法人税法132条の2(組織再編にかかる行為計算の否認)だ。適用基準などは一切示されておらず、節税を意識する会社にとっては不気味な存在。税務署ですら適用には及び腰で、めったに抜かない「伝家の宝刀」とも言われてきた。最近、その「伝家の宝刀」の適用の是非をめぐり争われていた2つの有名な事件が、最高裁という大舞台で立て続けに決着した。一方は勝訴。もう一方は敗訴。明暗を分けたのは何だったのか—。

「法132条」VS「法132条の2」

2つの有名な事件とは、IBM事件(平成23年(行ウ)407号)とヤフー事件(平成27 年(行ヒ)75号)だ。いずれもグループ法人内の資本取引や組織再編に伴う合併が「租税回避目的」だったとして行為計算の否認規定が適用された。追徴税額はIBMが1200億円、ヤフーが160億円。国家予算規模の額に注目が集まり、マスコミもこぞって書き立てた。

2つの事件の大きな違いは、IBMには法人税法132条(同族会社の行為計算の否認)、ヤフーには法人税法132条の2(組織再編にかかる行為計算の否認)が適用された点だ。

IBMに適用された法人税法132条とは、同族会社について「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められることがあるときは、その行為または計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、法人税の課税標準もしくは欠損金または法人税の額を計算することができる」という規定。つまり、「法律に則っていても租税回避目的なら課税しますよ」というものだ。条文のいう「不当」の解釈については、「経済取引として不合理・不自然である場合」(最高裁昭和53年判決)という判断基準がある。

一方、ヤフーに適用された法人税法132条の2は、組織再編シーンにおける租税回避に的を絞った包括否認規定だ。税メリット満載の組織再編税制の導入時(平成13年)に、乱用のペナルティとして創設。「132条」の枝番として置かれたが、条文の内容(前記)は同じであるため、「不当」の解釈や適用基準も132条と同じなのか、はたまた独自の解釈があるのかに注目が集まった。132条と同様、裁判等で浮き彫りになっていくものと期待されていたが、そんな中で発生したのが「ヤフー事件」である。

「立法趣旨・目的」にまで踏み込む新解釈

ヤフーは、ソフトバンクの100%子会社(S社)を買収した上で吸収合併。S社が抱えていた大型赤字と自社の利益を相殺して申告したところ、国税局から「組織再編税制を利用した節税目的の買収だった」として否認された。
組織再編税制では適格合併に限って赤字の引き継ぎを認めているが、特定資本関係が発生して5年以内の合併の場合は、事業関連や役員引継ぎなどに関する「みなし共同事業要件」を満たしていることが条件となる。ヤフーは、社長をS社の副社長に就任させることでこの要件を満たしていた。

裁判では、この人事が法132条の2に基づいて否認できるかが争点となったが、東京地裁は、副社長としての勤務実態などを総合勘案した結果、「要件を形式的に充足するものの、それによる税負担減少効果を容認することは、法の趣旨・目的に反する」と判断。副社長就任は「法人税の負担を不当に減少させる行為」とし、ヤフー側の主張を棄却した。

「法132条の2」の適否をめぐる初の司法判断として注目されたが、特に関心が寄せられたのは「法132条」との違いだ。立法趣旨や目的にまで踏み込んで判断すべきという解釈は法132条にはない。企業のM&Aを数多く手がける弁護士は、「この新しい解釈がなかったら国は勝てなかっただろう」と話す。

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