会計事務所においては、ものづくり補助金を自らが申請するよりも、申請をしたい中小企業からの相談相手としての立場の方が関わりが深いかもしれません。ものづくり補助金を利用する企業の中には、設備投資のために申請をする企業も多いかと思いますが、RPAの導入においてもものづくり補助金が採択されたことがあります。本記事では、ものづくり補助金を利用してRPAを導入する場合の手順について解説します。

ものづくり補助金とは
ものづくり補助金(正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)とは、経済産業省中小企業庁が管轄する補助金の一つです。ものづくり補助金は製造業の活用事例が多く見られますが、製造業以外にもサービス業や小売業、卸売業など様々な業種の企業が活用できます。RPAを導入するとなると、IT導入補助金が連想されますが、システム関係ではものづくり補助金を活用することも可能です。
ものづくり補助金の補助率・公募時期・採択率

ものづくり補助金は平成24年から運用されている制度で、申請数は累計2万件から3万6000件ほどにのぼります。2019年度は約2万件の企業が申請しました。正確な数値は発表されていませんが、採択率は30%~50%を推移しています。
2019年度の実績としては、ものづくり補助金の補助額は最大1,000万円で、補助率は原則1/2です。つまり2000万円を投資し、1/2の1000万円の補助を受けるのが上限ということです。仮にものづくり補助金を使ってRPAを導入したい企業が1,500万円のツール導入費の申請を行ったら、最大750万円が補助金となり、2,500万円のツール導入を行うための申請を行ったら、最大1,000万円が補助金となります。
中小企業の多くが、この条件を活用し、RPAだけでなくシステムの整備や工作機械などの導入を行っています。また、2020年度の公募期間については2月ごろに事務局が決定し、3月ごろから順次公募が開始される予定となっています。
ものづくり補助金の申請から受給までの流れ

申請の流れとしては、まず各企業が取り組み内容をまとめた事業計画書を提出します。その後、複数人の専門家によって審査され、妥当性が高い企業から採択されます。RPAを導入したい企業が複数いても、この事業計画書の出来栄えで受給可否が変わってきます。
出来栄えに自信が無い企業は、専門家に作成サポートを依頼することもできます。
申請から補助金受給までは早くても半年以上はかかり、すぐ補助金を受給できるわけではないということを念頭に置いておく必要があります。また、受給が決まった後に自社で全額負担してRPAを発注・購入し、後から支払った費用の一部が補助金として精算されるため、資金繰りの段取りを考えておくことが重要です。
半年間の間に必要な提出物は以下の通りです。
事業計画書の提出→採択決定→交付申請書の提出→交付決定通知書→RPAの発注・導入→報告・監査→実績報告書の作成・提出→確定通知→補助金受け取り
申請時だけではない採択後の事務手続き

今回紹介する事例では、RPAに加えてOCRも同時に導入することで、投資費用を高め、補助金の受給額を増やした例を紹介します。さらに、ものづくり補助金だけでなく、即時償却による節税と、低金利での融資をかけ合わせることで、実質負担額をさらに下げることに成功しています。
■RPA・OCR導入費用
RPA→345.6万円
OCR→548万円
補助金受給前合計→893.6万円
RPAとOCRを導入するために、ツール販売業者と相談の上、導入するツールを決定しました。
RPAやOCRにも種類がたくさんあるので、どのツールを導入するのか業者から提案をもらい、どの業務で利用するのか見通しを立てておくことが必要です。
■補助金利用後の受給額と実質負担額
ものづくり補助金→500万円
即時償却→294.8万円
低金利での融資→23.7万円
補助金受給額合計→818.5万円
実質負担額→75.1万円
今回はものづくり補助金を小規模型で申請したため、補助率が最大3分の2までとなります。実際は100万円~1,000万円の間での受給が決定します。
もともと約900万円を自己負担で賄わなければならないところを、ものづくり補助金を利用することで約400万円まで負担額を減らすことに成功し、さらに即時償却と低金利での融資をかけ合わせることで自己負担額を約75万円まで減らせました。
まとめ
今回はものづくり補助金を利用したRPAの導入について紹介しました。
ものづくり補助金は、RPAだけでなく設備投資やソフトウェア導入においても利用できる補助金制度です。
導入費用の約2分の1の金額が返ってくる補助金制度ですが、その申請や採択後の報告作業に苦労する企業も多いと聞きます。多くの時間をかけても採択されなかった、採択後の報告義務が大変、とならないためにも、申請前に手順を確認し、必要であれば専門家のコンサルティングを受けることをおすすめします。
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