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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 海外の販売先の代表者に支払った手数料が交際費と認定された事例

海外取引では、販売先の関係者等に多額の手数料を支払うことがあります。今回の事例は、貿易業を営む会社が、海外の販売先の代表者に対して支払った手数料が交際費等に当たるとされた事案です。また国税当局は交際費課税を免れるために手数料に仮装したとして重加算税を賦課しましたが、審判所は仮装隠ぺいの事実はないとして重加算税を取り消しました(平成1年6月15日付、非公開裁決)。

事実関係

  1. 貿易業を営むX社は、販売先であるイギリスの会社の代表者に対して2億円(以下「手数料A」)、及び西ドイツの会社の代表者に対して1億円(以下「手数料B」)の手数料を支払い、貿易手数料として売上原価に計上した。
  2. 手数料Aについては、売上金額の約5%、手数料Bについては売上金額の約1%であり、これらは、通常のコミッションの算定に用いられる計算基準に基づいて支払われたものではなかった。また、上記手数料の支払いについて、両氏から支払の請求を受けていなかった。
  3. X社は、両氏宛てに文書を送付しており、それには国際的貿易摩擦が深刻であったにも関わらず、業績を伸ばしたことに感謝し、より一層の相互の発展を願い、○億円を送る旨が記載されていた。その後、両氏からは、X社の申し出を受け入れる旨の文書が送付されていた。
  4. 両氏に宛てた上記文書には、販売拡大と支払手数料の関連性が具体的に示されず、計算根拠についての記載もなかった。
  5. 上記手数料の支払決定手続きは、通常の貿易手数料と異なり、代表取締役ほかごく一部の者の意思によってなされたものであり、その決定に係る証拠書類は存在しなかった。
  6. 以上から、国税当局は、これらの手数料は交際費等に該当するとして損金算入限度額を超える部分を課税対象とし、更に交際費課税を免れるために売上原価の中の貿易手数料に仮装計上したとして重加算税を賦課した。

情報提供料等と交際費等の区分

措置法通達61の4⑴-8では、法人が情報提供等を業としない者に対し情報提供等の対価として金品を交付した場合、例えば、以下の要件のすべてを満たすときは、正当な対価の支払であると認められ、交際費等には該当しないとされている。

  1. その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
  2. 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること
  3. その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること

X社は、手数料A及び手数料Bは、上記措置法通達に定める情報提供料等であるから、交際費等には該当しないと主張した。

審判所の判断

争点1:支払手数料は交際費等に該当するか

  1. 本件支払手数料は、X社と両氏との契約に基づいて支払われたものでなく、X社からの申入れにより一方的に決定した金額により支払われたものである。
  2. 売上金額に対する支払手数料の額の割合にかなりの開差があることからすると、本件支払手数料は、具体的な計算根拠に基づき支払われたものであるとは認め難い
  3. また、全資料を総合しても取引の当事者でない両氏がどのような役務をX社に提供したのかも明らかでない。そうすると、本件支払手数料は、上記要件に照らしてX社の主張するような情報提供の対価として正当なものであるとはいい難い。
  4. 以上より、本件手数料は、X社の製品の販売努力を評価し、今後もこれまでと同様な取引関係の継続を期待して、両氏に対し、「文書」をもって支払手数料の支払を通知した上、謝礼金及び期待料として特別にこれを支払ったものということができる。したがって本件支払手数料は、「交際費等」と認めるのが相当である。

争点2:重加算税は適法か

  1. 明らかに交際費等であるとの認識を有しながら、交際費課税を免れる目的で殊更本件支払手数料を貿易手数料として計上するなどの仮装行為を行ったとの事実は、全資料を総合しても認めることができない
  2. そうである以上、本件においてX社が交際費等に該当する本件支払手数料を貿易手数料として会計処理した上これを損金の額に算入したこと自体は、単に本件支払手数料の性質に関するX社の判断に誤りがあったにすぎないというほかなく、このことをもって、事実の隠ぺい又は仮装ということはできない。よって、重加算税を賦課することは相当ではない。

コメント

海外取引の関係者に対する多額の支払手数料は税務調査で狙われやすい項目です。

税務調査では、契約書の有無、役務提供を受けた事実関係、計算根拠等が検討されます。また、支払先が収入として計上しているか否か確認するため、外国税務当局との情報交換制度を活用する場合もあります。

最近では、海外取引に対する国税の目も厳しくなっているため、調査で否認されることがないよう、正当な対価であることを説明できる証拠書類を確保しておくことが肝要です。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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