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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 海外での広告宣伝費の負担が寄附金課税された事例

海外子会社を有する日本親会社が、海外で行なわれる広告宣伝費を負担した場合、税務調査で問題視されるケースがよく見られます。今回紹介する事案では、食品製造販売業を営む日本親会社が計上した広告宣伝費のうち、中国市場向けの広告宣伝費は、中国の合弁会社が負担すべきものであるとして寄附金課税されました(平成14年6月24日、非公開裁決)。

事実関係

①日本法人A社は、中国の国営企業と「合弁事業契約書」(以下「契約書」)を取り交わして合弁会社を設立した。合弁会社に対するA社の出資割合は51%であり、合弁会社はA社の国外関連者に該当する。

②国税当局は、A社が支出した広告宣伝費127,670千円については、

・合弁会社が製造販売するブランド品Xの販売促進及び広告宣伝の費用であること、

・契約書第41条によれば、合弁会社が製造販売するブランド品Xに係る広告宣伝の費用は合弁会社が負担することとされていること、

等の理由からA社が負担する理由がなく、合弁会社に対する経済的利益の供与をしたものと認められ、国外関連者に対する寄附金に該当するとして課税処分を行った。

③これに対し、A社は、契約書第41条には、合弁会社の製品に係る広告宣伝の費用は合弁会社が負担することとされているが、平成8年5月に合弁会社の出資者とA社とのトップ会談を行い、以後ブランド品XはA社が広告宣伝し、その費用を負担することで合意し、契約書第41条は改定されたとして、寄附金には当たらないとの主張をした。

審判所の判断

①広告宣伝費の内容は、合弁会社の製造販売するブランド品Xに係るものであって、A社が製造販売する製品ではないから、広告宣伝の費用の額の多寡にかかわらず、当然に合弁会社が負担すべきものであり、その利益は合弁会社が享受している。

②合弁会社は資金繰りが厳しい状況にあると認められ、このためA社が、合弁会社の製造販売するブランド品Xの販売促進のために、広告宣伝費を負担したものと認められる。

③合弁会社の製品に係る広告宣伝の費用については、契約書第41条の定めにより本件合弁会社が負担することとされている。A社は、同条は平成8年5月の本件トップ会談が行われた日以後、ブランド品AはA社が独自に広告宣伝し、その費用を負担することで合意した旨主張している。

④しかしながら、契約書第67条では「本契約を変更する場合には、書面により合意し、「審査・許可機構」の許可を取得しなければならない」と定めているにもかかわらず、広告宣伝費用の負担の合意については「審査・許可機構」の許可に関する手続がなされていない。よって、合弁会社の製品に係る広告宣伝の費用につき、合弁会社が負担するとする契約書第41条の定めは、依然としてその効力を有していると認められる。

⑤よって、本件広告宣伝費は合弁会社が負担すべきものをA社が肩代わりすることにより、合弁会社に経済的利益の供与をしたものと認められるから、国外関連者に対する寄附金に該当するとした課税処分は適法である。

コメント

海外子会社等を有する日本親会社が、海外で行われる広告宣伝費用を負担した場合、親会社が負担すべき費用か否か等について、税務調査でよく問題となります。

親会社が広告宣伝費を負担することについて、合理的な理由が存在しないと認められる場合には、経済的利益の供与があったとして寄附金課税が行われることになります。

税務調査で問題となりやすいケースとしては、

①海外子会社との間で広告宣伝費の負担割合について合意しているにも関わらず、海外子会社の業績が不振である等の理由で、合意された負担割合を超えて親会社が負担している場合

②親会社が広告宣伝の便益を享受していないにも関わらず広告宣伝費を負担している場合

などが考えられます。

そのため、広告宣伝費の負担割合について契約書や覚書き等でどのように記載されているのか、日本親会社が広告宣伝費を負担することについて経済合理性があるか(広告宣伝の内容が日本親会社にとって便益があるものか、広告宣伝費の負担割合は合理的か)等について検討する必要があります。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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