新しい事業を考える(もしくは既存事業を見直す)上で、ポイントとなるのが「これまでにない切り口」をどうやって見つけるか、です。そこで、この切り口を見つけるための様々な発想方法についてご紹介していきます。第3回は、企業向け「BtoB」にまつわるキーワード、そして事例×2です。

4つのカテゴリー
キーワードとは、事業ドメインになりうるもの、例えば個人なら、日常生活である「ライフスタイル」、非日常生活である「ライフイベント」、と例えば「受験」や「就活」、「結婚」といった言葉のことでした。
第1回でご紹介したとおり、キーワードの切り口には「個人」のほかに「企業」があります。個人のときと同様、「企業」にも、キーワードを発見するための業種、商品・サービス、ビジネスプロセス、バリューチェーンといった4つのカテゴリーが存在します。

それぞれの言葉の意味はすぐにイメージができるものばかりです。
ところが、詳細に分解すると意外なほど多くの可能性が出てきます。
例えば、「業種」。日本の公的統計における産業分類を定めた総務省告示である、日本標準産業分類(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm)では大分類で20種類、中分類では99種類もの業種があります。つまり、「業種」というカテゴリーで捉えるだけでもなんと99個ものビジネスの可能性があるわけです。
この好例として、「物流業」という業種にフォーカスし、物流業務のすべてをオンライン化したオープンロジ(https://www.openlogi.com/)というサービスがあります。
物流業務といえば、資金力があれば自社でその機能を抱えるか、体力が乏しければ、外部の専門物流企業に委託して、業務フローとして維持・構築するのが一般的です。そんな物流業務には特有の2つの問題があります。
1つめは、トラックドライバー不足やガソリン価格の高騰といった外部的なリスクが表面化した際、自社商品の原価構造に大きな影響を与えてしまう懸念。本来的には固定費に近いはずの科目が、取引のトランザクションの動きによって変動固定費化、つまり金融でいう為替相場のような存在になってしまい、結果、財務管理上でのコントロールに限界を与えてしまう問題です。
2つめは、業務手続きの問題。
商品の入出庫と在庫管理、そして取引先からの問い合わせ、想定外の出庫や在庫出現への対応など、物流、とくに倉庫業務では業種特有の頻雑なタスクが起こりやすいこと。
こうした物流業務特有の問題に対して、共通基盤を構築し、「入庫−在庫−出庫−履歴確認」といった業務手続きをクラウドオンライン化。スマホやタブレットで操作完了でき、価格の平準化を実現したのがこのサービスです。
キーワードをドリルダウンする
上述の事例のように、「物流業」と、上位概念のキーワードをそのまま利用してももちろん構わないのですが、「個人」の場合と同様、企業に関するキーワードもできればもう一段掘り下げて(ドリルダウン)みることをお勧めします。例えば、キーワードを「企業−BP(ビジネスプロセス)」。このBPをさらに掘り下げ、「企画」をキーワードに選ぶといったイメージです。
この好例として、テレビCMでもよく見かけるようになったBTOメーカーのマウスコンピューター(https://www.mouse-jp.co.jp/)があります。
一般的なパソコンメーカーのビジネスプロセスとは一線を画し、マウスコンピューターは受注生産型。つまり、注文が入るまで生産を開始しない。在庫を持たない形式です。さらに、サードベンダーのパーツを利用することで、高いコスパと短納期を実現しています(著名な国産メーカーの場合、部品も純正品となるため、納期上の制約が生まれやすい)。
マウスコンピューターの場合、上述の図にあった「ビジネスプロセス」からドリルダウンしたキーワード、「受注」を一般的な小売での販売から、注文を受けてから組み立てる方式に変えたことで、見事な成功を収めているのです。
「利用シーン」に着目することは同じ
「個人」のときと同様、企業に関するキーワードも着目点は「利用シーン」。上述の2例もそれぞれ、「物流業務」での利用シーン、生産プロセスにおける利用シーンです。
ここでお気づきの方もいらっしゃるかと思います。
利用シーンは必ずしも「利用者」=「顧客」とは限りません。マウスコンピューターの例では、利用者、つまりパソコンの購入者には関係がない。「利用者」とは「生産側」のことを指しているのです。在庫を持たないことで、結果、在庫管理に関する負担を削減できる、コスト(原価、管理維持)も下がるといった利用者(生産者)にとってのメリットになるわけです。
選んだキーワード次第では、ターゲットとなる利用者が変わることもある。しかし、基本的には同じ構造です。キーワードを決めたら、その先にいる利用者が抱える問題を探し、解決策を練り上げていく。ぜひ、現在、新しいビジネスを検討されているなら、「個人」でも「企業」でも構いません。カテゴリーから掘り下げ、核となるキーワードから考えてみてください。
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