未だ終息の時期が読めない状況が続いている新型コロナウイルス感染症の拡大。税制関係の対応としては、令和元年分の確定申告における申告等期限が一括延長され、緊急経済対策に税制上の措置が盛り込まれた。国税庁では、当面の税務上の取扱いについてFAQなどを公表しているが、法人税の税務上の取扱(申告期限関係)はどうなっているのだろうか。

法人税等は個別延長で対応

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、確定申告の申告期限等が延長された。対象税目は、申告所得税、贈与税、個人事業者の消費税とされ、法人税や相続税、酒税、個人事業者の源泉所得税などについては外された。

しかし、対象外の税目であっても、一定の“やむ得ない理由”がある場合に限り、災害時の税制上の措置が適用され、個別に税務署へ申請することで申告期限が延長されることになった。

災害時の税制措置は、地震等の自然災害、火災等の人為的な災害、申告等をする方の重傷病など、災害その他やむを得ない理由により、申告・納付等を期限までに行うことが困難な事情がある企業に対して、税務署へ申請することにより申告期限等が個別に延長される制度(国税に関する期限の個別延長制度)。

新型コロナウイルス感染症に関しては、災害時のように資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が生じていないものの、感染症の患者が把握された場合には、濃厚接触者に対する外出自粛の要請等が行われるなど、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合もある。また、感染症により申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別の申請による期限延長(個別延長)が認められるとしている。

具体的には、個人の場合と同様に、

① 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと

② 法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること

③ 次のような事情により、企業、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと

・経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと

・学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること

・緊急事態宣言などがあったことを踏まえ、各都道府県内外からの移動を自粛しているため、税理士が関与先を訪問できない状況にあること

などが該当するとしている。

また、国税庁は4月8日に『法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ』を公表しているが、この中で法人の役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したようなケースだけでなく、次のような者がいることにより通常の業務体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども該当するとしている。

① 体調不良により外出を控えている方がいること

② 平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること

③ 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること

④ 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

また、①から④のような理由以外でも、感染症の影響を受けて期限までに申告が困難な場合には、個別に申告期限の延長を認めるとしている。