国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

コロナ禍で緊急税制措置法が成立 個人・法人の納税猶予、住宅ローン控除を弾力化

新型コロナウイルス感染症拡大による、社会経済への影響を緩和させる目的で政府は4月30日、緊急税制措置法を成立させた。法人、個人事業主をはじめとする納税者へ必要な税制措置を法制化したもので、国税関係で6項目、地方税では固定資産税・都市計画税の軽減措置などが盛り込まれた。

閣議決定から11日間でスピード成立

税金面から法人、個人事業主をはじめとする納税者を救済するための法律が4月30日、可決・成立した。補助金や助成金などの資金調達関係の救済措置と合わせて覚えておきたい。

成立した税制は、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(新型コロナ税特法)」及び「地方税法等の一部を改正する法律」。4月20日に閣議決定され国会へ提出されたのち、同月27日から衆議院の財務金融委員会及び総務委員会で審議。29日には同委員会で可決後、衆院本会議で可決され参院へ。翌日の30日には、参院財政金融委員会及び総務委員会で可決後、参院本会議で成立した。なんと、閣議決定から法案成立まで11日間というスピード成立となった。

国税関係では6項目の措置

国税関係の支援策を盛り込んだ新型コロナ税特法には、

  • 1)納税の猶予制度の特例
  • 2)欠損金の繰戻しによる還付の特例
  • 3)消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例
  • 4)文化芸術・スポーツイベントの中止等に係る所得税の寄附金控除の特例
  • 5)住宅ローン控除の適用要件の弾力化及び
  • 6)特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税

の各措置が講じられている。

担保不要・延滞税なしの「納税の猶予制度の特例」

まず、従来からある納税の猶予制度(換価の猶予又は納税の猶予)とは別に、イベントの自粛要請や入国制限措置など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置に起因して多くの事業者の収入が急減しているという状況を踏まえ、収入に相当の減少があった事業者の国税について、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税を猶予する特例(特例猶予)が創設された。

特例では、法人や個人の別、規模を問わず、令和2年2月1日から令和3年1月31日に納期限が到来する所得税や法人税、消費税等の国税について、一定の要件を満たしている場合に1年間、納税猶予が受けられるとしている。

この一定の要件とは、

  • ・新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期と比較して、おおむね20%以上の減少
  • ・国税を一時に納税を行うことが困難

いずれの要件も満たし、所管する税務署に申請する必要がある。

ちなみに、前述の「事業等に係る収入」とは、法人の収入(売上高)のほか、個人の経常的な収入(事業の売上、給与収入、不動産賃料収入等)が該当するが、個人の「一時所得」などは、通常、新型コロナウイルス感染症の影響により減少するものではないと考えられるため、事業等に係る収入には含まれないことから除外とされているので注意したい。また、「一時に納税を行うことが困難」であるかどうかの判断については、少なくとも向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど、特例の申請者が置かれた状況に配慮し適切な対応が執られる。

申請期限は、令和2年4月30日から2カ月間、または、納期限(申告納付期限が延長された場合は延長後の期限)のいずれか遅い日までとされており、今回の納税猶予の特例では、すでに納期限が過ぎている未納の国税であっても令和2年6月30日までであれば、遡って特例猶予の申請も可能だ。

申請に当たっては、納税の猶予申請書(特例猶予用)とともに、売上帳、預金通帳のコピーといった収入や現預金の状況が分かる資料の提出が必要となっているが、提出が難しい場合は口頭での説明も可能とされ、かなり柔軟な対応が行われる。

なお、地方税についても同様の納付の猶予措置が設けられている。

資本金10億円以下の法人なら欠損金の繰戻し還付の対象に

「青色欠損金の繰戻し還付制度」は通常、資本金1億円以下の法人が対象だが、今回の特例措置では、令和2年2月1日から令和4年1月 31 日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について、「資本金1億円超10億円以下」の法人についても青色欠損金の繰戻し還付の適用を受けることが可能とされた(この場合の令和2年7月1日前に確定申告書を提出した法人の還付請求書の提出期限は同年7月31日。)。ただし、資本金の額が10億円を超える大規模法人の100%子会社及び100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式の全部を保有されている法人等は、これまで通りに適用対象外だ。

「青色欠損金の繰戻し還付制度」とは、確定申告書を提出する事業年度に欠損金額があれば、その法人の請求によりその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税の還付を受けることができるもの。

還付請求の手続きに関しては、欠損金額の生じた事業年度の確定申告書の申告期限までに還付請求書を提出することで、制度の適用を受けることができる。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、たとえば、飲食業者等の食材の廃棄損や施設や備品などを消毒するために支出した費用等による損失、感染発生の防止のため配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用が発生した場合には、これまでの災害損失欠損金の繰戻しによる法人税額の還付の対象となる。

消費税の課税事業者選択の変更が弾力的に

消費税の課税事業者の選択(またはやめる)にあたっては、原則、その課税期間の開始前に届出書を提出する必要があるが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者については、次の要件に該当すれば税務署に申請し、税務署長の承認を受けることにより、課税期間の開始後であっても、課税事業者を選択する(またはやめる)ことができるとされた。

具体的な要件としては、新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から 令和3年1月31日までの間のうち任意の連続した1カ月以上の期間(調査期間)の事業としての収入金額が、前年の同時期と比べて概ね50%以上減少している事業者で、当該課税期間の申告期限までに申請書を提出することとされている。

なお、この特例により課税事業者を選択する(またはやめる)場合、

  • ・2年間の継続適用要件等は適用されない
  • ・新設法人が調整対象固定資産を取得した場合等における納税義務免除の制限について、税務署長の承認によりその制限を解除する

などの特例も設けられている。

中止されたイベントチケット代が寄附金控除

自粛要請に応えて文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対し、観客等が入場料等の払戻しを請求しなかった場合、放棄した金額の20万円を限度に寄附金控除(所得控除又は税額控除)を受けることができるようになった。適用対象は、次の要件を全て満たす主催者からの申請に基づき文化庁・スポーツ庁が指定した文化芸術・スポーツイベントとされている。

  • ・令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催された又は開催する予定だったもの
  • ・不特定かつ多数の者を対象としているもの
  • ・日本国内で開催された又は開催する予定だったもの
  • ・新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により、現に中止等されたもの
  • ・中止等の場合には、入場料金・参加料金等の対価の払戻しを行う規約等があるもの又は現に払戻しを行っているもの

寄附金控除の適用を受けるためには、対象イベントの主催者に払戻しを受けないことを連絡。主催者から、指定行事に該当することを証する「指定行事認定証明書」及び放棄した入場料等の払戻請求権の価額その他一定の事実を証する「払戻請求権放棄証明書」の交付を受け、放棄した翌年に確定申告を行う必要がある。これにより、たとえば、1万円のチケット代金を払い戻さずに寄附した場合は最大4千円の減税となるとともに、主催者への応援にもつながる。

すでにチケット代金を払い戻してしまった場合でも、主催者にその払戻分を寄附することを連絡し、その後に実際に寄附を行えば寄附金控除の対象となる。また、親がチケット代の負担者であっても、前述した証明書などを揃え、確定申告すれば代金を負担した親が寄附金控除を受けることができる。

「住宅ローン控除」も弾力的に運用

コロナ禍の影響で「住宅借入金等特別控除」、いわゆる住宅ローン控除についても、弾力的な運用が定められた。

住宅ローン控除が受けられる要件は、

  • 1、自ら居住すること
  • 2、床面積が50m2以上であること
  • 3、中古住宅の場合、耐震性能を有していること
  • 4、借入金の償還期間が10年以上であること、合計所得金額が3千万円以下であること
  • 5、取得後6カ月以内に入居、入居後引き続き住んでいる  など。

今回の弾力的な取り扱いとしては、コロナ禍の影響で資材等の不足から工事日程が遅れ、住宅への入居が遅れた場合でも、定められた期日までに住宅取得契約が行われているなどの一定の場合、期限内に入居したのと同様の住宅ローン控除を受けられるとしている。

具体的には、令和元年10月1日からの消費税率引上げに伴う税制優遇として、住宅ローン控除の期間が13年間となっているが、特例措置の要件である入居期限(令和2年12月31日)に遅れた場合でも、注文住宅を新築する場合は令和2年9月末(分譲住宅・中古住宅を取得する場合、増改築等をする場合は同年11月末)までに住宅取得契約を行っている等の要件を満たしていれば特例措置の適用が認められるとされた。

さらに、中古住宅を取得した際の住宅ローン減税の入居期限要件(取得の日から6ヵ月以内)について、取得後に行った増改築工事等が新型コロナウイルス感染症の影響で遅れ入居が遅れた場合、既存住宅取得の日から5カ月後までまたは4月30日から2カ月後までに増改築等の契約を行っていれば、入居期限が「増改築等完了の日から6カ月以内」とされた。

地方税では固資税の軽減措置・特例措置を整備

地方税法の一部改正法では、納税猶予の特例、償却資産等に係る固定資産税・都市計画税の軽減措置、耐震改修した住宅に係る不動産取得税の特例措置の適用要件弾力化、自動車税・軽自動車税環境性能割の臨時的軽減の延長などが手当された。

令和3年度の償却資産の固定資産税等を売上に応じて減免

中小企業を対象に、令和3年度課税の1年分に限り、保有する設備等の償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準を売上の減少幅に応じて減免する。具体的には、令和2年2月から10月の任意の3カ月の売上が前年同期比30%以上50%未満減少した場合は、2分の1に軽減し、50%以上減少した場合は全額免除となっている。なお、適用を受けるためには、令和3年1月31日までに、認定経営革新等支援機関などの認定を受けて各市町村に申告する必要がある。

耐震修繕で不動産取得税の特例適用を弾力化

耐震基準不適合既存住宅を取得後に耐震改修した場合の不動産取得税の特例措置について、コロナ禍の影響で耐震改修が遅れた場合、令和3年度末入居分までの特例措置として、6カ月以内に居住の用に供することができない場合でも、次の要件を満たせば、期限内に入居したのと同様の不動産取得税の特例措置を受けられるとされた。

  • ・新型コロナウイルス感染症の影響によって、耐震改修した住宅を居住の用に供することとなった日が、取得の日から6カ月を経過する日後となったこと
  • ・上記の耐震改修に係る工事の請負契約を、住宅の取得の日から5カ月を経過する日又は法律の施行の日(令和2年4月30日)から2カ月を経過する日のいずれか遅い日までに締結して、耐震改修に係る工事の終了後6カ月以内に住宅を居住の用に供すること

経産省所管の省令改正でも中小企業等への支援措置

上記の2法律の改正には盛り込まれていないが、他の法律の省令改正により税制措置の対応も行われている。

経営強化税制の対象にテレワークの設備投資

政府は「3密」を避ける働き方として、会社等への出勤を避ける在宅ワークを推進しているが、これを後押しする目的で、中小企業者等が令和3年3月31日までの期間内に業務のデジタル化(テレワーク等)を導入するための設備の取得等をした場合に、中小企業経営強化税制の適用を受けることができるように、中小企業等経営強化法施行規則の一部を改正する省令を行っている。

具体的には、中小企業経営強化税制の対象とされる「生産性向上設備」(A類型)及び「収益力強化設備」(B類型)の2類型に加えて、「テレワーク等のための設備(デジタル化設備)」(C類型)が追加。経済産業大臣の認定を受けた経営力向上計画に基いて、遠隔操作(デジタル技術を用いて遠隔操作をすること等)、可視化(データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと等)、自動制御化(デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること等)のいずれかを可能とする設備を取得等した場合、即時償却又は設備投資額の7%(資本金が3千万円以下の法人は10%)の税額控除が適用できる。

対象とされる設備は、

  • ・機械・装置(160万円以上)
  • ・工具(30万円以上)
  • ・器具備品(30万円以上)
  • ・建物附属設備(60万円以上)
  • ・ソフトウエア(70万円以上)

固定資産税の特例措置の適用対象を拡大

「償却資産(固定資産税)の課税標準の特例措置」について、新規に設備投資を行う中小企業に対して、事業用家屋と構築物を適用対象に追加し、令和3年3月31日までの適用期限を令和5年3月31日まで2年間延長した。

同特例措置は、生産性向上特別措置法に基づき、中小事業者らが自治体に「先端設備等導入計画」を申請し認定を受けることにより、新規取得した設備について、一定の要件を満たす場合、機械及び装置、工具、器具及び備品並びに建物附属設備(以下「機械装置等)などの固定資産税の課税標準の特例を受けることができるもの。平成30年6月6日から令和3年3月31日までの間に、自治体から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、認定後に取得をした設備については、最大3年間、償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税の課税標準額を2分の1またはゼロとするもの。

今年3月末時点での特例措置の対象地域は全国1647自治体となっており、このうち固定資産税をゼロとしている自治体は1642となっている。

5月31日まで緊急事態措置が延長され、東京・大阪など首都圏を中心に13都道府県が「特定警戒都道府県」に指定される一方、感染者数が低い他県では終息に向けて出口が少し見え始めているが、そうはいっても、これですぐに経済が上向きになり中小企業等の経営が元に戻るわけではない。また、これまで持ちこたえてきた中小企業や個人事業主の体力は限界にきている。

中小企業等には今回の税制支援措置を有効に活用してもらうとともに、政府には状況をしっかり判断した上で、さらなる税制の支援措置を考えてもらいたいところだ。

———————————————————————————————————————
◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
メルマガを購読する

おすすめ記事やセミナー情報などお届けします
———————————————————————————————————————

(関連記事)

国税庁 新型コロナ対応で法人税申告など延長も

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

ページ先頭へ