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【コラム】ZOZO創業者前澤友作氏 コロナ禍での追徴課税報道の陰に国税関連者の匂いが・・・

コロナ禍の影響で現在、新規税務調査は積極的に行われていないが、ここにきて税金問題でお騒がせなのが、ファッション通販サイト「ZOZO」の創業者で実業家の前澤友作氏だ。
前澤氏といえば、コロナ禍で表明した「ひとり親応援」など話題が絶えないが、今回の税金の申告漏れ報道に関しては、国税内部もしくはかなり内部に近い人物から情報が漏れたものと思われてならない。なぜなら・・・

コロナ禍において、前澤氏の税金の申告漏れをいち早く取り上げたのが、「デイリー新潮」の5月22日の「前澤友作ZOZO前社長、コロナ禍の「ひとり親応援」も霞む追徴課税4600万円のてんまつ」(週刊新潮WEB取材班)の記事だ。

この記事の中で、国税関係者が「高額な絵画の売買を巡って多額の申告漏れを指摘され、追徴課税の通知を受けた」と明かしているが、その調査を指揮したのが「東京国税局・課税一部。その中の、通称“重要統実官”という聞き慣れない肩書を持つ人物が、担当している」と記されている。

重要統実官案件情報がどこから漏れたのか

ここで筆者が気になったのが、国税職員しか使わない“重要統実官”(「重要統実」ともいう)という専門用語が出てきたこと。税理士でも一部の国税出身者以外、知らないポジションだ。

それに、この重要統実官が手掛ける案件情報は、国税局の中でも、ある一定ポジションにいる人か、調査に直接携わる人しか知りえない情報だ。もちろん、税務署職員クラスは言わずもがなだ。

税務署の職員が調査するのは、基本的に法人なら資本金1億円以下の小規模法人。細かく見れば業種によっても対象規模感は違うが、要は小規模企業の調査担当というわけだ。個人においても、一般納税者が調査対象で、富裕層は上部組織の国税局が担当する。

東京国税局課税第一部には、課税総括課や審理課、個人管理課、資産課税課など、さまざま部署があるが、その一つに「統括国税実査官」がある。その中には「情報担当」「国際担当」「富裕層担当」「消費税等担当」が配置され、各部門には「統括官」をトップに、次いで「総括」「主査」「実査官」がいる。もちろん、前澤氏のような人物は、「富裕層担当」が動き、調査情報は外部に漏れることはない。

記事を見ていくと、情報がマスコミに流れたのは、調査が終了し、課税処分が決まってからのようで、週刊新潮WEB取材班は、「「過去5年間での多数の美術品の売買取引のうち、1点の絵画の売買取引について、東京国税庁(ママ)から税務処理の方法についてご指摘がありました。ご指摘に基づき9914万898円の所得申告、並びに4054万600円の納税を行いました。過少申告税588万円並びに延滞税については、今後納税する予定です」とのコメントを取っている。

要は、売却した1点の絵画の評価益計上を人為的ミスによって誤って処理していたために起こった「申告漏れ」というわけだ。とはいうものの、この記事では、こう続けられている。「先の国税関係者はこう話す。『追徴課税額としては、過少申告加算税含め約4600万円はあったと聞いています。高額絵画の売買取引は一般庶民には手の届かない世界で、そこでの約1億円の申告漏れは金額としては非常に大きい』」と、指摘しているのだ。

ここまで書かれていると、情報源はかなり絞られてくるだろう。昔から課税当局には、一罰百戒の思想があり、一人の有名人や悪質な脱税者などの罪や過失を罰することで、他の多くの人々が同じような過失や罪を犯さないよう戒めようとする。今回の前澤氏の申告漏れは、脱税ではなく、あくまで絵画の評価問題であり、評価は課税当局と意見が相違することもよくある話だ。

記事は、前澤氏が意図的に過少に申告をしようとしたような書きぶりになっているが、評価問題は税金の世界ではよくある話だけに筆者個人としては、前澤氏に同情するところが多い。とくに絵画は評価する人でかなり違ってくるから、最終的には課税当局と落としどころを調整して決まるのが一般的だ。

プライベートジェットを私的利用!?

5月27日には、読売新聞などの大手新聞社をはじめ地方紙が、前澤氏が役員を務める資産管理会社において、前澤氏がプライベートジェットを私的利用していたとして東京国税局からおよそ5億円の申告漏れを指摘されたと報道した。

記事によると、みずからが役員を務める資産管理会社「グーニーズ」が所有するプライベートジェットを、私的な海外旅行などで頻繁に利用していたというのだ。前澤氏は、プライベートジェットの利用料として一部の費用を資産会社側に支払っているが、東京国税局は、「本来、前澤氏が支払うべき利用料が去年3月期までの3年間でおよそ5億円不足し、資産管理会社はその利用料を所得として計上する必要があると指摘した」としている。すでに会社側は修正申告しているとのことだが、これも富裕層の宿命なのか、新聞の見出しや記事の書きぶりは、前澤氏がかなり悪いことをしたような印象を与える。

「役員の私的利用の判断」「利用料の適正かの判断」は、これも税務調査において課税当局ともめる「あるある」な話だ。会社経営者は、日々の活動において公私を明確に分けることができない部分も多い。土日に社長同士が集まってパーティをしたとしても、営業活動の一環ということもしばしばある。それが、富裕層経営者が地方で集まれば、プライベートジェットでの移動もあるだろう。その利用料が適正か否かの判断は、基本的には難しい。「今回は仕事とプライベートが半々だった」ということで、会社経費部分と私的利用部分を折半したとして、その案分の仕方が適正なのかも、課税当局と意見が分かれるケースも少なくない。

そう考えると、前澤氏の申告漏れ報道は、事実で仕方のない部分もあるが、富裕層ということで、ことさらに悪人的な印象を与える書き方になっているように感じる。お金持ちを叩くのは、今始まったことではないが、こうした意図的に悪い印象を与えるような記事を見るにつけ、報道の在り方について考えさせられる。

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著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
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