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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 国外扶養親族に係る扶養控除等が認められなかった事例

最近では日本で働くために来日する外国人が増加しています。来日外国人の場合、扶養親族が国外に居住しているケースが多いという特徴があります。国外に居住する親族を扶養控除等の対象にするためには、「親族関係書類」や「送金関係書類」の提出又は提示が必要とされています。今回は、このうち「送金関係書類」が争点となった裁決事例を2つ取り上げます。

国外に居住する親族を扶養控除等の対象とする場合、「親族関係書類」や「送金関係書類」の提出を求めるなど要件が厳格化されています。

問題となりやすいのは、扶養控除等の適用を受けようとする国外居住親族が複数いる場合に、これらの親族の生活費を1人の代表者にまとめて送金している場合です。
この場合、扶養控除等の適用を受けるためには、各人別の「送金関係書類」が必要とされています。よって、代表者にまとめて送金している場合には、その代表者のみの「送金関係書類」に該当するため、代表者以外の国外扶養親族については扶養控除等の適用を受けることはできません。

今回紹介する2件の裁決事案は、この点が争点となったものです。

事案1

この事案は、国外に居住するXの妻の父(義父)に係る障害者控除及び扶養控除の適用を税務署が認めなかったことから争いとなったものです。

税務署は、Xが義父に係る「送金関係書類」として提出した取引明細書は、国外に居住するXの妻の母(義母)名義の預金口座の取引明細書の写しであるから、義父に係る送金関係書類とは認められないとしました。
Xは、義父は僧侶であり信仰上お金に直接触れることはできないこと、義父は障害者であるため、義父名義の預金口座があったとしても本人が直接取引できる状態でないことから、義父と同居している義父の受任者である義母に義父の生活費を送金しているという事情があり、各控除の適用を認めないことは酷である旨主張しました。
これに対し、審判所は次のように判断し、Xの主張を認めませんでした。

  • 義母名義の預金口座の取引明細書は義父に係る送金関係書類に該当しない。
  • 国外居住扶養親族に係る扶養控除等の適用を受けようとする居住者は、送金関係書類を、当該控除の適用を受ける各人別に確定申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際に提示しなければならない旨規定されており、その例外を認める規定は設けられていない
  • よって、Xが主張するような事情等があったとしても、義父に係る送金関係書類の添付又は提示を免れるものではない。

(平成30年2月27日、非公開裁決)

事案2

この事案は、Yが、非居住者であるYの親族(配偶者の父、母、姉、妹、弟、甥)について扶養控除を適用して確定申告をしたところ、税務署が扶養控除の適用を認めなかったことから争いとなったものです。

Yは、平成28年分の所得税の確定申告において、非居住者である配偶者の母(義母)を受取人として送金を行った旨の送金履歴が記載された送金関係書類を確定申告書の添付書類として提出しました。

税務署は、当該書類は、義母を送金の受取人とするものであるから、各親族に係る扶養控除の適用は認められない旨指摘しました。

Yは、配偶者の姉は■■■■(不開示)であり、また配偶者の甥は学童であることなどから、本人が出向いて送金額を受領することが困難であり、また、送金額を各親族が自ら生活費として管理して経済行為を行うことも非現実的であるという個別事情が考慮されるべきである旨主張しました。

これに対し、審判所は、Yが主張するような事情があったとしても、提出された書類は各親族に係る送金関係書類に該当するものではないとしてYの主張を認めませんでした。

(平成30年8月28日 非公開裁決)

コメント

これら2つの裁決事例からも明らかなように、各人別の「送金関係書類」が求められるという要件は厳格に適用されています。

我が国では外国人労働者が増加の一途を辿っていることから、今後のトラブルを避けるためにも、国外居住親族の生活費を1人の代表者にまとめて送金することはNGであることを再確認する必要があると思われます。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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