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【企画特集】アーリーステージ・中小企業のためのお金で得する経営術  第19回  取引先の「コロナ倒産」対策 「貸倒金引当金」を設定してリスクヘッジ

コロナ禍の影響で、取引先の経営状況が悪化して、売掛金が不良債権化する可能性がある。このような場合を見越して「貸倒引当金」を設定しておきたい。貸倒引当金を設定しておけば、実際の支出を伴うことなく、一定規模の金額を経費計上できる。

東京商工リサーチによると7月14日現在、2月からの「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1千万円以上)は全国で325件(倒産259件、弁護士一任・準備中66件)に達した。2月2件、3月22件から4月、5月は80件台に急増。6月は単月最多の103件、7月は14日までに31件発生している。

こうしたなか、得意先の倒産リスクなどを考えて検討しておきたいのが貸倒引当金だ。税法では、資本金1憶円以下の中小企業や銀行、保険会社、リース債権のある会社には、貸倒引当金という経理処理を認めている。得意先に対する売掛金や受取手形が回収できなることを「貸倒れ」というが、これに備えて一定の金額以下の金額を貸倒引当金として、その年分の必要経費とすることが認められている。貸倒れがあった場合は、その貸倒引当金から補填し、貸倒れがなかった場合は、翌期の利益として加算することになる。

貸倒引当金となる債権は限定

貸倒引当金の対象となる債権は、事業の遂行上生じたものに限られ、具体的には売掛金、未収入金、貸付金などの金銭債権のみ。保証金、敷金、預け金、前渡金等は、事業の遂行上生じたものであっても貸倒引当金の対象とはならない。

貸倒引当金の債権は、次のように区分し、区分された債権ごとに回収不能の見積額を算出する。

  • ①一般債権  : 通常取引通りに入金されている債権
  • ②貸倒懸念債権: 入金が遅れている債権
  • ③破産更生債権: 実質的に経営破たん状態(裁判上の手続きなど)に陥っている債務者に対する債権

貸倒引当金の計算方法は、中小企業の場合は、以下の2つに区分して貸倒引当金の繰入限度額を定めている。▶国税庁HP

・個別に取引先の事情に基づいて評価する債権

→債権の危険度を個別に評価して算出する方法

・一括して過去の貸倒れの実績に基づいて評価する債権

→期末に残っている債権などに実質繰入率をかけて算出する方法。中小企業の場合、特例として、より簡便な法定繰入率による計算方法もある。

危険度を個別に評価して算出する方法は、複雑な計算を要するため、中小企業が導入するには現実的ではない。そのため、ここでは詳細な説明を省くが、導入する場合は、税理士や公認会計士と相談しながら進めていく必要がある。

法定繰入率による計算方法

ここでは、一括して過去の貸倒れの実績に基づいて評価する計算方法のうち、より簡便な法定繰入率による計算について紹介する。

現在の法定繰入率は、国税庁によると以下の通り。

これは、卸売業や小売業なら債権の「1000分の10」、つまり1%を損金計上できるということ。

例えば、期末に債権が1千万円ある小売業なら、

<債権:1千万円>×<法定繰入率(小売業 1000分の10)>=10万円

つまり、貸倒引当金は10万円になり、この10万円を損金算入できることになる。実際には現金の支出は伴わないが、10万円分の経費を計上することができ、結果として利益押し下げの効果があるわけだ。この10万円は翌期に貸倒れがあれば、その補填にあてられる。

貸倒れが生じた場合は、まず引当金があてられ、引当金だけでは充当できなかったら、貸倒損失として、特別損失に計上される。

例えば、上記の小売業が翌期に50万円の貸倒れがあった場合、

<貸倒れ:50万円> ― <貸倒引当金:10万円> = 貸倒損失:40万円

となる。

上記の例では、貸倒引当金を使ってしまったので、その年度末にはさらに貸倒引当金を設定することができる。

貸倒引当金は、その期の損金とした分を、翌期には利益として益金に加算するため、通算すれば会社にとっての損益は変わらない。しかし、これまで貸倒引当金を設定していなかった会社であれば、初めて貸倒引当金を設定した期は設定額をそのまま貸倒引当金として経費計上できる。つまり、1年目は貸倒引当金繰入として経費計上することができるので利益が押し下げられ、結果として節税効果があるわけだ。

コロナの影響による得意先の倒産に対するもう一つのリスクヘッジ

コロナ禍の影響により得意先の倒産や債権回収が不能になった場合のリスク対策として、貸倒引当金の設定は一つの方法だが、資金面でのリスクヘッジも同時に考えていくことも重要だ。

この特集企画でも紹介してきたが、通常融資より優遇されるコロナ関連の特別融資で資金調達をする方法や、中小企業基盤整備機構(基盤機構)が運営する中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の加入も検討したい。

また、手持ち現金がどうしても必要な場合は、スピーディーに融資が受けられるオンライン融資の活用も経営戦略の一つに考えておきたい。オンラインレンディングは、AIが会計データや銀行口座の出入金記録といったデータから事業の信用を審査し、融資の可否を判断する仕組みで、条件を満たせば、早ければ最短数日程度で融資を受けられる。運転資金を迅速に確保する手段として頭に入れておくべきだ。

コロナ禍の影響は、リーマンショックを上回る景気後退が指摘される。最悪の事態に備えて、得意先が倒産しても冷静に対処できるように準備してほしい。

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<概要>
アルトア株式会社 ( Altoa, Inc.、東京千代田区、代表取締役=岡本浩一郎)
会計ソフト『弥生会計』を提供する弥生株式会社の子会社。
会計データとAIを活用した新たな与信モデルを開発し、小規模事業者向けに「アルトア
オンライン融資サービス」を提供する。会計データ提出とインターネット入力で申込み
手続きが完了、保証人・担保なしと、早さと利便性がサービスの特長。


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著者: KaikeiZine編集部

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