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公認会計士キャリア辞典:ワインに魅せられた実業家/相亰 俊信氏

今回はワインビジネスを生業とする公認会計士、相亰 俊信氏にお金のカラクリ侍こと松本ゆうやがインタビューしました。

―略歴を教えてください

2002年3月 米国公認会計士試験に合格

2004年3月 慶應義塾大学商学部卒業

2004年4月 松下電器産業株式会社(現:Panasonic株式会社)入社

2006年11月 あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)入所

2007年11月 公認会計士試験に合格

2010年7月~2012年6月 KPMGシリコンバレー事務所に赴任

2019年7月 監査法人退社

2019年7月 株式会社TOREVIAM創業、ワインビジネスを開始する

 

大学生のころから会計の勉強はしていたのですが、通常の就職活動している友人たちを見ていて自分だけ資格浪人する不安が大きく、一般事業会社である松下電器産業株式会社に入社しました。本社で経理として働いていましたが、より一層、会計専門職に携わりたいという気持ちが高まり、あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に転職しました。

 

監査法人時代は、2年ほどのKPMGシリコンバレー事務所への駐在経験も含めたグローバル監査以外にも、所属するグループの人事やリクルーティング活動など法人運営にも参画していました。その後、現在のメインビジネスである株式会社TOREVIAMを立ち上げてワインビジネスを営んでいます。

 

監査法人時代もかなり面白いキャリア形成と伺っています。どういうキャリアだったのか教えて頂けますか。

最初は誰もが知るグローバル企業の監査チームに配属され、優良企業はどうあるべきかという基礎をみっちりと叩き込まれました。修了考査に合格したタイミングで、「独立」「転職」「海外留学」「海外赴任」と言った今まで憧れだったキーワードが現実的になり、先輩に色んな方を紹介いただいたり転職エージェントに登録して面談を繰り返したり、とにかく情報を集めました。

 

その中で一番響いたのは「監査を一通り学んだのか?」という、すでに独立してご活躍されている方からのお言葉でした。自分はまだ上場インチャージも経験していない、海外赴任もしていない・・・。「まだまだ監査法人でできることがある」と決断し、比較的小規模な上場企業インチャージをさせてください、と上司に直訴して無理を言ってチーム転換をしていただきました。そこで海外子会社監査人との折衝などが身近にあり、グローバル監査にハマることとなったのです。

 

そうこうしているうちに、海外赴任のための社内要件を満たすようになり、ここでも手を上げて運良くシリコンバレー事務所に赴任が決定。帰国後は「君はあえてドメスティックな会社も担当するべきだ!」と海外拠点ゼロの会社も担当することになりました。「なんでやねん?」とその時は思ってしまいましたが、そこでも今までにない新たな経験も。

 

そしてマネジャー昇格後は、比較的小回りが利く神戸事務所に所属していたので、ビジネスマンとしてのスキルを磨くべく、地元の企業に営業に行ったり、セミナーを積極的に開催したりと自ら仕事を作ってきました。数年間して、もっとグローバルな仕事(具体的にはクロスボーダーM&Aが頻繁に起こる環境や、海外拠点が多くて海外出張が多いなど)をしたいと強く思うようになったため東京事務所に異動を直訴。海外売上90%以上というグローバル企業の監査をマネジャー職で全うしました。

 

こういったキャリアチェンジは、仕事の切れ目で他の経験を積みたいと考えるようになった際に上司に相談することで、新しい会計のスキル目標をご教示いただき、必要な転籍をすることができました。かなり融通を聞かせて頂けたなと感謝しています。

 

気づいてみたら監査法人での経験も13年間、役職もパートナー手前のシニア・マネジャー。監査法人でパートナーになって法人や会計士業界をリードするということも素晴らしいキャリアですが、自分は実業家になりたい。今回、起業するという決心した時は、誰にも相談することはなく自然と自分で決心しました。

 

―実業として公認会計士業からワインビジネスへのチェンジはだいぶかけ離れているように感じますが、どういった転機がありましたか。

2つの要因があります。

1つ目は、監査法人時代の2年ほどKPMGシリコンバレー事務所に駐在していたころ、駐在時のパートナー・マネジャーがいわゆる「会計士の先生」だけではなく、「ビジネスマン」という感じがしたことです。

 

会計士の先生は基準ありきで会計的なロジックを実務で活かす人というイメージ。一方、ビジネスマンは会計的な実務という枠組みへの対応よりもクライアントの課題全体に目を配らせていたり、目的が監査を通じたクライアント利益の最大化をしたりといったイメージがありました。そういった根本的な捉え方の違いを目の当たりにしたことで、クライアントに直接信頼されるビジネスマンになりたいと思うようになりました。

 

2つ目は、シリコンバレー駐在時に何気なく飲んだ一杯のカリフォルニアワインが発端です。完全に魅了され、ナパバレーやソノマなどのワイナリーにもたくさん通いました。そこからワインと共に生活する日々が(笑)。

 

なぜ、ここまでワインに魅了されたのか?ということを改めて考えてみたところ、ただ単に飲んで美味しい、学んで楽しい、ということだけでなく、やはりワインを通じて素晴らしい人々と知り合うことができる、会話が盛り上がるというワインの不思議な力に魅了されているということを確信しました。しかし、まだまだ日本ではワインは一般的ではなく、一部の愛好家の方が楽しんでいるというのが現状です。このワインの魅力をもっと日本の文化に根付かせたいと思って、ワインビジネスでの起業を決意をしました。

 

―どんなサービスか教えて頂けますか。

創業当初はワインを輸入販売するようなビジネスを考えていました。しかし取引量など個人事業としてスタートするにはなかなか厳しい業界で、2020年5月から新しいサービスを導入しました。

 

どうせなら公認会計士というキャリアも活かせる自分にしかできないワインビジネスをしたいと思ってワイン投資という日本では馴染みのない分野を開拓していくことにしました。

 

『 公認会計士 × ワイン =ワイン投資 』

 

ワイン投資といっても、金融商品のようにただ単に値上がり益や利回りだけを求めるものでなく、高級ワインのポートフォリオを共同保有してみんなで楽しみましょう、というところから開始しています。人類の長い歴史で愛され続けてきて、時には争い事も起こったと言われる高級ワインを、少額から共同オーナーとして保有するものです。

 

一口馬主と似たビジネスモデルで単に儲かるだけでなく、ワインを嗜好しながら楽しむことができるのが他の金融投資と異なる特徴。嗜好性があり、楽しめる要素があるため、共同購入者たちはコミュニティ化してきており、ワイン&投資という共通の実益を兼ねた趣味の仲間が形成されています。

 

―ワイン投資って聞きなれないですね、詳しく教えて頂けますか。

実はワインの中でも、長期熟成に耐えて、世界中から高い需要がある高級ワインは、長い歴史を見ても世界の富裕層や投資家が資産として注目しています。インフレや金融危機にも強く、世界的に見て需要は増える一方、供給は増えない(同じヴィンテージのワインは一生、増えることがない)、さらに嗜好品としても楽しめるという特徴があるためです。

 

歴史的にフランスのボルドー地区から高級ワインがロンドンに運ばれ、欧州、そして世界中に取引がなされていたことから、今でもロンドン保税倉庫に高級ワインが大量に保管されています。これらは、世界中から注文が入る都度、ロンドン保税倉庫に現物が置かれたまま名義が変わり、飲みたくなった時にはその所有者の元に送付されるということがなされています。

 

取引がグローバル化し、情報化が進んだことによって、現在では高級ワインも上場株式のように時価が算定され、その時価をもとに売買が活発に行われています。

 

―どのようにそういった世界を知ったのですか?

あずさ監査法人退職後に、フランスに1カ月のワイン留学(?)をしてワイン聖地でもあるブルゴーニュ・ボルドーのワイナリーを巡ったり、念願であったメドック・マラソンに参加したりして、まずはワインの本場を体験しました。その後、公認会計士というバックグラウンドを持つ私が、どうやってワインビジネスに参入できるか、そしてどうやってワインを文化にするということを達成できるかということを模索し続けました。

 

調べていると、Liv-ex(ライブエックス:London International Vintners Exchange)というロンドンの企業がワインの時価を算定していて、今では一部の指標がBloombergやThomson Reutersにも掲載されているということを知った次第です。こういったことを知るようになれたのもキャリアをずっと考え続けて新しい環境を探す癖がついていたからだと思います。 

(参考:Liv-ex HPより)

 

「これは面白い!」と思い、しかも創業者のバックグラウンドが証券会社勤務と、勝手ながら親近感を抱き、電話会議や書類審査なども経て、ロンドンでLiv-ex創業者との面会を果たしました。

 

―実際に他の指標と比べるとどんなパフォーマンスなのでしょうか?

あまり目の当たりにすることはないと思いますが、他の主要マーケット指標と比較すると以下のようなパフォーマンスとなっています。

(2004年からの約15年間の高級ワイン1000銘柄の推移)

高級ワインの時価は株式と同じように、世の中の経済に影響されて相場は変動しています。例えば、2008年頃の米国をはじめとした金融危機の時代にも、他の主要株式指数に比較すると影響は限定的で、この15年間ほどで良好なパフォーマンスとなっております。

 

さらに、詳細をお話すると、2008-2011年頃の中国特需の際には贈答・高額接待用に中華料理を合うわかりやすい五大シャトーなどのボルドーワイン価格が高騰しましたが、その後の習近平の腐敗防止運動によって贈答・高額接待が禁止になったことによって価格が暴落したということもありました。

 

最近ですと、新型コロナウィルスの影響で、お祝い事イベントが減少したことにより、お祝いで必ず空けると言っても良いシャンパーニュの価格が少し下がったということもあります。ワイン投資を扱う私はワインを専門にした金融アナリストのような立ち位置になります。

 

―どのように自分でワイン投資をビジネスにしようと思いましたか。

ワインには飲み物以上の「不思議な魅力」があると感じ、この魅力をより多くの人に味わってもらいたい、そしてワインを文化にしたいと思いました。そのために、まずは起業準備期間に多くの方に協力をいただいてインタビューを繰り返しました。やはり誰もが高級ワインには興味がありました。しかし同時に、高級ワインにはハードルが多いことに気づくこととなりました。

 

  • ・高い
  • ・難しい
  • ・保管も困難
  • ・そもそも入手できないetc

 

これらのハードルを取り払うために、高級ワインの共同保有事業を開始しました。これによって、少額から複数銘柄のワインを保有でき、保有するワインの情報だけでなく時価推移も楽しめてしまうという、趣味と実益を兼ねたサービスとして提供できると思いました。

 

―実際にどのように投資できるのですか。

ワイン投資は本来12本単位や6本単位で必要なのですが、ポートフォリオを組み共同購入することで、少額でも多数の銘柄に投資する楽しみが得られるようにしています。現状は1口1万円で購入でき、おおよそ3~20万円ほどでみなさん投資されています。ホームページなどにご連絡いただけましたら対応させて頂きます。

 

―現在購入されている方はどのような方々ですか。

20代後半~40代の方が多いです。身近な人に話したら口コミで広がったところがあり、公認会計士や経営者がかなり多いです。ワインと数字の連動が面白いと言って頂いています。数値に重きを置いて仕事をされる方にとって、深みのあるコンテンツのワインや投資といったものは相性が良いのかもしれません。保有するワインと同じ銘柄や似た銘柄のワインを別途、日本で購入して楽しむワイン会なども定期的に開催しており、大いに盛り上がっています。

 

―公認会計士の仕事といわゆる実業の違いを教えてください。

実業は会計の知識だけでは足りません。特にマーケティングの難しさに悩んでいます。知らない方にどう売り込むのか、認知してもらって買ってもらうか。試行錯誤しています。

 

また、実業目線を持ち始めて、あらためて公認会計士は安定した仕事だなと感じています。監査という仕事はなくなりませんし、基本的に必要時間に一定の単価を乗じた監査報酬をいただいて投資家保護のために業務を行うという社会的にも意義がある業務です。

 

一方、実業は何事もゼロから始めないといけない大変さや不安定な不安はありますが、自分で何をやるのか選べる楽しさやがんばった分だけ自社株の価値が上がる楽しさを同時に感じられています。また、感謝のされ方も実業は一塩だと感じます。お客様から自分の創ったビジネスによって「ワインと投資という世界なんて知らなかった、とても面白い!」と言ってくださるととてもやりがいを感じて素直に嬉しいのです。

 

それでもこれからも公認会計士は名乗っていこうと思っています。やはり信用があり、とても大きな武器だと感じているからです。

 

―最後に、転職を迷っている方へアドバイスをお願いします。

クライアントから信頼されていると言い切れる公認会計士にまずなりましょう。部長さんなりCFOと本当の意味で対等に話せてはじめて、外でも公認会計士としてやっと通用します。外で公認会計士として通用することは会計に進むにせよ、実業に進むにせよ、様々なチャレンジをするうえでとても大きな武器になりますよ。

インタビューへのご協力、ありがとうございました。

(インタビュワー:松本ゆうや)

 

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著者: 松本ゆうや

公認会計士

立命館大学卒。34歳。大手監査法人を修了考査合格直後に転職、会計系コンサルティングファームへ。財務調査、IPO、事業再生、不正調査対応といった会計業務を経験しつつ、新規事業開発やマーケティング支援まで幅広く経験し独立。独立してからコンサルティング業務を中心にしつつ、自ら飲食店や広告代理店も経営し、ベンチャー役員参画、多様なコンテンツ開発を自社で行うなど多角的に活動。フリーランスの公認会計士の立場からお金のカラクリ侍としてYouTubeも開設している。
◆youtube:お金のカラクリ侍
https://www.youtube.com/channel/UCtzX17fZ0z-iwG4GXsfS84g/videos?view_as=subscriber

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