10月28日の読売新聞オンライン「【独自】消費税不正、40億円を追徴課税…金地金買い取り業者など80法人・個人」の報道で、国税当局が、消費税の不正申告の有無を調べる一斉調査を行い、約80の法人・個人からあわせて約40億円を追徴課税したことが分かった。コロナ禍の影響で今年は10月から税務調査を再開したばかりだが、国税庁が進める効率・効果的な調査を実った格好だ。一方で税理士の中からは、国税当局の調査の進め方に「強引な課税判断とも思える部分も見受けられる」との声も聞かれ、物議を呼びそうだ。

読売新聞オンラインによると、東京、大阪、福岡など7国税局が「全国の免税店などを対象に消費税の不正申告の有無を調べる一斉税務調査を行い、約80の法人と個人に計約40億円を追徴課税した」と言う。うち約30億円は金の買い取り業者2社への課税で、中国人などから金を買い取ったとする帳簿の記載に裏付けがないと判断された。

報道によると「東京国税局は、東京都台東区の地金買い取り会社「甘露商事」に、2019年8月期までの3年間で、過少申告加算税を含め約24億円を追徴課税(更正処分)した」としている。

ここで筆者が注目しているのが、「税目や取引内容を絞った税務調査をして実績を上げた点」と、今回の調査では明らかにされていないが、不正申告との判断材料に「帳簿の記載に裏付けがない」という点だ。

まず、「税目や取引内容を絞った調査」は、国税当局が最近取り組んでいる調査手法で、各税目の精鋭調査官が一点集中で調査を行う。今回の消費税調査も、「金」「買取」「外国人」をキーワードに買い取り業者を狙い撃ちしている。

今回の調査も、国税局の精鋭部隊が大勢で納税者のあらゆる書類を分析し、実地調査先を選び出したわけだが、ここで選ばれたら国税当局も実地調査をやった結果「何もありませんでした。問題ありません」では帰れない。「精鋭部隊が大勢集まって何をしてんだ」という大問題だ。つまり、実地調査先に選定された時点で、「なにがなんでも不正を見つける」という姿勢なのだ。この意気込みは、税務署が一般的に行う税務調査とはまったく違う。

“金”買取の消費税の仕入税額控除に関しては、財務省も2017年ごろから問題視しており、不正の摘発の号令をかけてきていた。

こうした精鋭部隊の税務調査は、税務署でも取り入れはじめ、機能別職員を選任し、1税務署の枠を超えた、いわゆる「広域調査」を実施している。

たとえば、東京国税局なら国際税務専門官を国際取引の多い税務署に配置、いくつかの税務署も同時に見ながら、国際取引だけをターゲットに調査をしていくのだ。国際税務のスペシャリストが、専門分野に絞って納税者の税務処理の問題点を調べあげていくのだから、対峙する納税者サイドもかなりの税務知識がないと対等に話しすることは難しい。顧問税理士も専門分野が違えばお手上げだ。

こんな調査をし始めているのだから、実績があがらないわけがないのだ。今後は、こうした機能別職員による広域調査はさらに活発になることが予想される。