自民、公明両党は12月10日、2021年度与党税制改正大綱を正式決定した。大綱では、環境経営やデジタル化推進のための投資減税や、教育資金贈与、住宅ローン減税の延長などが盛り込まれた。中小企業経営者や個人事業主、会計に響いてくる税制改正にポイントを紹介する。

法人税関係

(新設)カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

菅首相は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げているが、大綱では、脱炭素化に向けた設備投資を行った企業の法人税を、2021年度から3年間、一定条件(中長期環境適応生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の取得等)を満たし、国内事業の用に供した場合は、投資額の最大10%を法人税額から差し引くか、減価償却費に最初の年度だけ投資額の50%を上乗せできるようにする。従来、こうした投資促進税制は、3%から5%とすることが多く、最大10%は異例の規模。菅総理がいかに力を入れているのか伺える優遇税制だ。

また、消費電力を抑える「パワー半導体」や、繰り返し充電できるリチウムイオン電池などを生産する設備投資についても税優遇する。

対象となる設備投資の上限は500億円。控除税額はデジタル・トランスフォーメーション(DX)投資促進税制との合計で当期法人税額の20%が上限。期限措置で施行日から2024年3月31日まで。

(新設)デジタル・トランスフォーメーション(DX)投資促進税制

デジタル技術で業務の効率化やサービスの改善を目指す「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」を税制面から後押し。クラウドサービスを活用して、グループ企業内でデータを共有する設備投資を行った企業に対しては、投資額の3%(グループ外とデータ連携をする場合は5%)の税額控除もしくは、取得価額の30%の特別償却との選択適用ができることとする。

また、取引先などとのデータ共有のために投資した場合は、差し引く額を5%に増やす。

電子納税の推進、税務手続きの押印原則廃止

現在、自動車税や固定資産税などの地方税は、一部の自治体が「PayPay」や「LINEPay」などの決済アプリでの支払いが可能だが、2022年1月以降からの所得税や贈与税などの国税も、30万円以下であれば決済アプリなどを利用した支払を可能にする。

また、確定申告などの税務手続きでの押印を原則、廃止。