国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

KaikeiZine

注目キーワード

IPOの関係者の選び方:主幹事証券会社

IPOに関係する外部関係者を選んだ視点はなかなか世の中に出回っていないことから、IPO準備会社にとっては悩みどころだと思います。特に主幹事証券会社はIPOだけでなく、IPO後の時価総額にも影響する重要な選択です。筆者のIPOとIRの経験から外部関係者選びの際に参考にして欲しい視点をご紹介いたします。

主幹事証券会社は、「想定時価総額」「メインバンク」「VCの関与状況」等を考慮しなければいけないためベストプラクティスはございません。それぞれの会社の置かれた環境によって異なるということはご念頭いただきつつ、少しでも参考になりましたら幸いです。

1. 直近の主幹事の実績を知りましょう

IPOは長期プロジェクトであり1年だと偏りが生じるため、3年間の実績を集計しています。実績だけで決めるのはお勧めできませんが、これから証券会社とコンタクトする際の参考にしていただければと思います。


日本取引所グループへの上場を集計。なお、TOKYO PRO Market上場及びテクニカル上場を除いて集計。
出所:日本取引所グループ 新規上場銘柄一覧

2.証券会社ごとの強みを知ろう

・大手証券会社

野村證券や大和証券は、証券業が主たる事業であることからIPO及び証券業務に関するノウハウが蓄積されています。公開引受部の層も厚く、細やかなフォローとコンサルティング機能の発揮が期待できます。

なお、筆者もリプライス社では中間審査までを野村證券を主幹事に、経営統合後のカチタス社では大和証券に主幹事を担当いただきグローバルIPOを実現しました。

・メガバンク系証券会社

みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券は、メガバンクとの関係が深いことから、メインバンクとのリレーションを築く上でも重要な証券会社になります。エクイティ調達だけでなく借入とバランスしながら柔軟に資金相談ができるのも強みであるといえます。

なお、カチタス社でグローバルIPOをする際は「JGC(ジョイントグローバルコーディネーター)」を組成しましたが、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に参画いただきました。

・準大手・中堅証券会社

準大手、中堅証券会社である東海東京証券や岡三証券、いちよし証券は、地域密着型の認知度や投資家網に強みを有しています。担当者とのリレーションを構築しながら二人三脚でIPO準備を進めたいという会社に合うと思われます。

なお、筆者がリプライス社でIPO準備を始めた2014年当時は名古屋に公開引受部の専任担当者を配属していたのが野村證券と東海東京証券の2社であったことからも、地方でIPO準備する際には、自社の本社の近くに公開引受部の専任担当者がいるかは重要なポイントになります。

・ネット証券会社

ネット証券系の中でも積極的に主幹事業務を引き受けているSBI証券は、口座数が2020年3月時点で約540万口座 *1 と業界No.1となりました。IPOのシ団組入れ数も2011年以降9年連続No.1であること、取引手数料が安価であることから個人投資家から人気の高い証券会社です。近年では機関投資家への営業にも注力されています。

*1 SBIホールディングス株式会社 IR資料より

3.時価総額から逆算した証券会社選び

日本には2020年12月末時点では上場企業数が約3900社ありますが、時価総額が100億円未満の会社が約1400社となっています。時価総額100億円未満の上場企業には機関投資家が入りづらいです。その背景としては、時価総額が小さいと、1日に取引される株式数が少ないため、機関投資家が売りたい時に売れない、また大口で買ったり売ったりすると株価が一気に変動してしまうためです。結果として、時価総額が100億円未満の会社には個人投資家が多い傾向にあります。

出所:2019年度株式分布状況調査の調査結果について
*1「○○アセットマネジメント」等の機関投資家は「A-b信託銀行」に含まれています。
*2「事業法人等(ファンド,親会社 等)」の「ファンド」はベンチャーキャピタル等のファンドです。

 

一方、個人投資家だけを意識していれば良いわけではありません。個人投資家の投資の一般的な考え方は、株価が下がったときに買い、上がったときに売るという「逆張り」と言う投資手法になります。また、会社の知名度や人気に左右される傾向があるため、IPO直後は人気と記憶があることから売買が継続しても、次のIPO銘柄が出てくると鞍替えされてしまう傾向があります。結果として、個人投資家中心の株主構成だとなかなか株価を安定させることが難しく、時価総額を上げていくためには機関投資家を呼び込む必要があります。

とはいえ、IPOの段階では小さく出て、企業としての認知度・信用力を向上させて、資金調達の柔軟性を確保し、セカンダリーマーケットで一層時価総額を高めるということも十分可能だと思うので、「会社の成長ストーリー」に合わせた証券会社の選定が重要になります。

上記の様な、会社が考える「IPO時の市場」「IPO時の想定時価総額」「株主に誰になってもらうか」「会社の成長ストーリー」を証券会社とディスカッションや提案をしてもらいながら、志向する方向性が合致する証券会社を選定する必要があります。

4.主幹事証券会社の決め打ちはNG!必ず相見積りを。

主幹事証券会社の選定に時間を費やさずに簡単に決めてしまうと、後々に後戻りができないためIPOスケジュールに重大な影響を及ぼします。実際、主幹事証券を切り替えたことによってIPOが2年遅れたという会社の話も聞きますし、主幹事証券会社が非常に厳しくて途中で断念してしまった会社の話も聞きます。

そのため、主幹事証券会社を選ぶ際には必ず「相見積り」を取りましょう。

主幹事証券会社の「相見積り」は、コンサルフィーや成功報酬の「値段」だけではありません。

・IPO時のバリエーションをどの様に見立てているのか

・公開引受部の支援体制やどの様なチーム構成を検討しているのか

・IPO後のIR支援についてどの様なサポートを想定しているのか

・VCがいる場合等に、IPO後の資本政策をどの様に検討しているのか

・M&Aや業務提携等を証券会社のネットワークを用いてどの様に検討しているのか

等の視点で「提案してもらう」というのが大切です。

また、最近では「共同主幹事」という形でのIPO企業も増えてきています(一定の時価総額を目指せる会社が前提にはなります)。そのため、必ず主幹事証券会社は1社でなければいけないという固定概念を持ちすぎず、候補となる証券会社と幅広く相談しながら後悔しない主幹事証券会社の選定をしていただければと思います。

以上、主幹事証券会社選びの視点のご紹介でした。

一般的な話を少し具体化したもののやはり会社ごとに主幹事選びのポイントは異なってくると思います。

執筆協力:アイスリー株式会社 代表取締役社長/公認会計士 金誠智(キムソンジ)

東京都八王子市生まれ。
2007年11月:大学在学中に公認会計士試験に合格。
2009年4月:有限責任監査法人トーマツ長野事務所に入所。
2014年6月:株式会社リプライス 経営企画室長としてIPO準備を担当。
2016年3月:株式会社カチタスと経営統合後、同社のIPO準備室長を担当。
2017年12月:グローバルIPOの形式で東証一部に直接上場し、その後はIRを担当。
2020年9月:アイスリー株式会社を設立。代表取締役社長に就任。


バナーをクリックすると㈱レックスアドバイザーズ(KaikeiZine運営会社)のサイトに飛びます


最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。

 

◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします

メルマガを購読する


 

著者: KaikeiZine編集部

KaikeiZine

租税調査研究会が監修する税金・会計の総合ニュースメディアです。税金・会計に関するさまざまなニュースを、わかりやすくお届けします!
■運営会社 株式会社レックスアドバイザーズ
https://www.rex-adv.co.jp/
■監修 税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
■公認会計士・税理士・経理の転職サイトREX
https://www.career-adv.jp/

ページ先頭へ