国税庁が公表している2019事務年度(2019年7月から2020年6月30日)における各税目の調査事績をみると、コロナ禍の影響で軒並み調査件数が激減していることが分かった。国税当局ではこれまで蓄積してきた資料情報や調査手法により悪質事案を的確に捉えている。法人税調査においても、消費税還付法人への追徴税額が大幅増加している。

不正発見割合21.6%

19事務年度における法人税・消費税の調査事績(19年2月1日から20年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象)をみると、法人税の調査件数全体は約12万件で18年事務年度の14万2千件に比べると大きく減っている。

このうち大口・悪質な不正計算等が想定されるなどの調査必要度の高い法人への実地調査件数は7万6千件(前事務年度9万9千件)と2万3千件減っており、調査全体の減少数が実地調査によるものであることがわかる。また、この数字は、記者発表が行われた昭和42事務年度以降で過去最少の件数となっている。とくに緊急事態宣言が出されてからは、国税当局でも感染者が出たり、調査官等に出勤抑制がかかったほか、事業者の個々の事情等を十分に考慮し調査時期を伺った上で行ったため、事務年度の追い込み時期である20年4〜6月の件数は1300件程度と実に前年同期の1割弱にとどまっている。このため、実地調査件数を対象法人数で割った「実調率」は国税局所管法人8.6%、税務署所管法人2.4%となった。

なお、調査が中断されたり、対象とされながら調査が行われていない法人については、引き続き個々の実態を確認して改めて調査時期を調整して行うこととされている。

実地調査の結果、申告に何らかの非違があった法人は5万7千件(同7万4千件)で、その申告漏れ所得金額は7802 億円同(1兆3813億円)と4割以上の減少となり、追徴税額も加算税等含め1644億円(同1943億円)となっている。またこのうち、不正計算が把握された件数は1万6千件(同2万1千件)で、その不正所得金額は2594億円(同2887億円)だった。

不正発見割合は21.6%となっていて前事務年度の21.1%と上回っているが、これについては、国税当局が不正計算の想定される法人をデータベース等から的確に抽出し調査を展開している証拠で、調査1件当たりの申告漏れ所得金額は1023万円(同1396万円)となっているものの、不正1件当たりの不正所得金額は1573万円(同13.5%増)、調査1件当たりの追徴税額も215万円(同9.7%増)と前事務年度より増しており、この数字からも的確な調査選定が行われたことが伺える。