国税庁によると、令和元事務年度(令和元年7月~2年6月)の相続税調査事績は、新型コロナ感染症の影響で他の税目同様に調査が行えない期間が続いたことから調査件数は大幅減少となったものの、1件あたりの申告漏れ所得や追徴税額は前事務年度よりも増えており、特に海外資産関連事案の申告漏れが過去最高となるなど効果的な調査が実施されていたことがわかった。

1件当たり申告漏れ課税価格は2866万円
2020年6月までに行われた相続税の実地調査件数は、平成29年の相続を中心に法定調書や租税条約に基づく情報交換制度などから収集した海外資産の保有等に関する情報等で、申告額が過少または無申告が想定されるもののうち1万635件(前年事務年度比1万2463件)に対して実施された。
その結果、前事務年度の1万684件から約15%減り、9072件から何らかの申告漏れが把握され、その申告漏れ課税価格は3048億円だった。これは前事務年度が3538億円だったことからすると約500億円減ったことになる。
申告漏れが把握された9072件のうち、悪質事案や高額な申告漏れ事案として重加算税が賦課されたのが1541件(同1762件)で、重加算税賦課対象は572億円(同589億円)だった。
令和元事務年度の相続税調査の特徴は、新型コロナの影響で税務調査が行えない期間があったことから、件数・課税価格ともに前事務年度より減少したものの、実地調査1件当たりでは、申告漏れ課税価格が2866万円(同2838万円)、追徴税額が641万円(同568万円)と、前事務年度よりも多くなっており、国税当局が調査ターゲットを絞って選定を行ったことがうかがわれる。