平成28年6月23日、改正風俗営業法が施行された。最大のポイントは、これまでダンスクラブは風俗営業とされてきたが、この改正により「特定遊興飲食店」に分類され、24時間営業が可能となった。24時間営業となれば、税務調査で狙われる点も変わるのだろうか。

6月23日、改正風俗営業法が施行された。改正前は客に飲食を提供し、ダンスさせる形態を風俗営業とみなし、営業時間を原則午前0時(条例で定めた地域は午前1時)までに制限していた。
改正後は、ダンスをさせるかどうかではなく、店内の明るさを基準に風俗営業に該当するかを判断する。

照明の明るさが分かれ目に

代表的な業態が「クラブ」。東京・銀座のネオン街で有名な「クラブ」ではなく、若者がダンスなどをしながら飲食を楽しむ「クラブ」だ。店内の明るさの基準「照度」に関しては、休憩時間中の映画館と同程度の10ルクスを超えていれば、風俗店ではなく「特定遊興飲食店」として新たな枠組みとなる。
「特定遊興飲食店」と認定されれば、繁華街やホテル高層階など、都道府県条例で指定された地域・場所で、24時間営業が認められる。ただし、営業時間は、条例で制限が可能であるほか、許可制を採用できる。18歳未満の深夜(午後10時以降)入店禁止については維持されている。
制限は他にもあり、たとえばクラブ側は、客が大声を出したり、暴力を振るったりする迷惑行為を防ぐような措置をとると同時に、受けた苦情を記録するよう義務付けている。

なお、ダンス教室は規制の対象外とされ、営業に必要な店の面積は従来の半分である33平方メートルに緩和されている。キャバレーやキャバクラ、照度10ルクス以下のクラブも条例で定めた地域に限って営業時間の延長が可能となっている。

「特定遊興飲食店」の営業について、営業地域など条例で定めたのが44の都道府県となっており、本年5月末時点で各都道府県の公安委員会に許可申請があったのが東京・大阪・京都・福岡など14都府県の70件だった。

バーなどの事業所数は5万3101件

総務省・経済産業省発表の統計「経済センサス(平成24年)活動調査確報」によれば、産業細分類の「バー・キャバレー・ナイトクラブ」の事業所数は5万3101件。 従業者数は、17万8298人、売上高は5356億5900万円。1事業所当たりの売上高1009万円、従業者一人当たりの売上高300万円となっている。その中で、事業所に占める個人事業主の割合は92.9%、個人以外が7.1%、従業者が所属する個人事業主の割合80%、個人事業主以外20%、売上高に占める個人事業主の割合65.2%、個人以外34.8%となっている。

かなりの市場規模である「バー・キャバレー・ナイトクラブ」だが、今回の風営法改正のキッカケとなったのが、「無許可で客を躍らせた」として、大阪・梅田の「Club NOON」が風営法違反容疑で摘発された事件。 平成26年4月25日に大阪地方裁判所が無罪判決を言い渡し、検察側が控訴していたが、同27年1月21日に大阪高等裁判所は、控訴棄却の判決を言い渡した。その際「客にダンスと飲食をさせる」風営法3号営業の定義を原判決と異にし、「男女が組みとなり、かつ身体を接触させることが通常であるようなダンス」をさせる営業とし、風俗営業の範囲内とすべきとした。

ダンス規制の主たる目的が、性風俗の維持・青少年の健全育成のみならず、付随的ながら違法薬物・粗暴犯・騒音などの防止も風俗維持のための要素とするとした点に特徴がある。
風営法ダンス規制の歴史的背景にも触れつつ、ダンスによる規制が時代に即さず意味を希薄化させている点を捉えながら、「男女が組みになり身体を接触させることが通常であるようなダンス」などはさせておらず、風俗営業として規制すべき範囲内にはないと無罪判決を支持した。
最終的に、同28年6月7日、最高裁判所第三小法廷にて検察側の上告が棄却された。