遺留分は、遺言書を作成するときに問題となります。今回は、遺留分の生前対策について、5つの手法をご紹介します。
遺留分とは、遺言書によっても侵害できない、各相続人に最低限保証される相続の権利をいいます。例えば、相続人の1人に相続財産の全部を譲る内容の遺言書を作成したとしても、他の相続人は、遺留分減殺請求をすることで一定の相続財産(法定相続分の1/2)を取得できます。
遺留分は、遺言書によって相続財産を自由に配分するための障害となります。会社を経営しており、個人所有の土地建物を事業用地に使っている場合等は、会社を承継する相続人に自社株式と事業用地を承継させる旨の遺言書を作成することが考えられますが、自社株式と事業用地以外に財産がないときは、遺留分減殺請求によって、自社株式が分散して円滑な事業承継が図れない等の問題が生じかねません。
多くの方は遺留分は絶対に侵害できないと思っておられますが、実は遺留分について生前対策を行うことは可能です。そこで今回は、遺留分の生前対策を行うための手法を解説します。
遺留分の生前対策①:遺留分の生前放棄
遺留分の生前対策の一番の方法は、相続人と交渉をして遺留分を放棄してもらうことです。生前の相続放棄はできないと解されていますが、遺留分は生前に放棄できます。遺留分の生前放棄を行うと代襲相続が生じた場合の代襲人にも遺留分はなくなります。
遺留分の生前放棄を行うためには、遺留分を放棄する相続人が家庭裁判所の許可を得る申立手続が必要です。これは、被相続人が遺留分放棄を強要しないように、家庭裁判所に後見的に遺留分の生前放棄の可否を判断させるものです。
遺留分の生前放棄を行うためには相続人と交渉を行うことが必要です。例えば、遺留分を放棄する見返りに、一定の財産を生前贈与する等が考えられますが、具体的事情に応じてどのような手法で交渉を進めるかは異なります。紛争のおそれがある交渉案件は税理士・司法書士よりも弁護士の専門分野ですので、遺留分の生前放棄について交渉をする場合は専門家である弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
遺留分の生前対策②:養子縁組
相続税対策の手法として養子縁組がありますが、遺留分の生前対策としても縁組は有効です。遺留分減殺請求権は法定相続分に応じて算定されるため、養子縁組によって法定相続人を増やすことで、遺留分減殺請求をする可能性がある相続人の法定相続分を減少させることが可能です。
養子縁組を提案すると、ご相談者の中には既に相続税対策で人数制限まで養子縁組をしていると仰る方がいます。養子縁組について、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までという人数制限があると思っているかもしれません。しかし、実は養子縁組について民法上の人数制限はなく、人数制限があるのは、相続税法上の基礎控除額の算定においてです。従って、遺留分の生前対策を行う場合は、養子縁組に人数制限はないのでご安心下さい。
遺留分の生前対策として養子縁組が有効なこと、この場合に人数制限はないことは見落としがちなポイントなので是非押さえておいて下さい。