今回紹介する事例は、中国子会社に対してサポート業務の対価の支払を免除したことは、国外関連者に対する寄附金に当たるとされた事例です。会社側はサポート業務の対価を回収しなかったのは中国の外貨送金規制のためであり、寄附金には当たらないと主張しましたが認められませんでした(平成19年6月21日 非公開裁決)。
事案の概要
X社は複数の海外子会社を有しており、各海外子会社に対してサポート業務(労務管理、経理業務、財務管理、法務管理、販売活動支援、子会社の顧客の信用調査等)を提供し、その対価として、海外子会社はサポート費用をX社に支払う旨の覚書を交わした。
しかし、中国子会社に対しては、他の海外子会社と同様にサポート業務の提供は行ったものの、サポート費用の回収を行わなかった。その理由について、X社は以下のような説明をした。
- 中国の外貨送金規制により、サポート費として外貨送金することができないという事実に基づき、各子会社に適用されている本社サポート費を本社に支払うルールの適用を免除したものである。
- 法人税基本通達(以下「法基通」)2-1-31では、国外の者から支払を受ける貸付金の利子、利益の配当等について、現地の外貨事情その他やむを得ない事由によりその送金が許可されないため、長期(おおむね2年以上)にわたりその支払を受けることができないと認められる事情がある場合には、その送金が許可されることとなる日までその収益計上を見合せることができるものとする旨定めている。https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_05.htm
X社の処理は、法基通2-1-31と同様の基準による会計処理であり、適法なものである。
これに対し国税当局は、X社が中国子会社に対してサポート費の支払を免除したことは、中国子会社に対する無償の経済的利益の供与であり、国外関連者に対する寄附金に該当するとして課税処分を行った。X社は、処分の取消しを求めて審査請求した事案である。
