自動車通勤者に対する通勤手当について、消費税等の課税仕入れに算入されるのは、業務上の必要性に基づく支出の実費弁償としてのガソリン代や通行料等に限られるが、一方で、所得税法上の非課税限度額についても課税仕入れとして取り扱っても差し支えないとされているため、結果的に、実費としてのガソリン代・通行料等か、非課税限度額のいずれか大きい方をもって消費税の課税仕入れに算入するという判断が示されました。

国税不服審判所平成30年7月9日裁決(未公刊/TAINS:F0-5-242)

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)が、自動車通勤者に対して支給した通勤手当の全額を、課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計算し、消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、所得税法施行令20条の2《非課税とされる通勤手当》第2号[1]に規定する非課税とされる通勤手当の金額(本件非課税通勤手当金額)を超える金額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないとして、消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、上記支給した通勤手当の全額が課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、平成26年3月課税期間から平成28年3月課税期間(本件課税期間)において、自動車で通勤する社員に対し、通勤手当として、同社員の住居の最寄り駅から各自の通勤事業所の最寄り駅に至る通勤定期代1か月分(本件通勤定期相当額)を支給していたが、本件非課税通勤手当金額を超える部分(請求人計算非課税限度超過額)については、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収していた。請求人は、本件課税期間の消費税等の申告に当たり、上記のとおり確定申告したところ、その後の原処分庁の調査において、調査担当職員から、請求人計算非課税限度超過額は、本件課税期間の課税仕入れ額に算入されるべきではない旨の指摘を受けた。原処分庁は、調査時において、請求人が、消費税基本通達11-2-2《通勤手当》(本件通達規定)[2]にいう通勤通常必要額の算定をしておらず、通勤に通常必要であることを証する書類を提出しなかったことから、上記処分を行った。


[1] 通勤のため自動車等を使用する者が受ける1月当たりの非課税通勤手当は、片道距離によって次のように定められている。

[2] 同通達は、事業者が使用人等で通勤者である者に支給する通勤手当のうち、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められる部分の金額(通勤通常必要額)は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う旨定めている。