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管理会計の導入で急成長をサポート 訪問看護ビジネスで必要とされる会計人の役割とは

訪問看護事業の経営は難しいと思われているが、たった4年で570社もの開業支援を手掛け、成長事業に導いている企業がある。
管理会計の導入で訪問看護事業の収益構造に大きな変革をもたらすインキュベクス株式会社(神奈川・横浜市)の取り組みと訪問看護ビジネスの現状、求められている会計人の役割などについて同社の上村隆幸代表取締役に聞いた。

前回、「会計事務所の未開拓市場 訪問看護業界にビジネスチャンス」でも取り上げた通り、今訪問看護ビジネスが注目を浴びている。急速に市場規模が拡大し拠点が増える一方で、現場では会計や税務に関する知識不足にどう対応していくかが課題となっており、会計士や税理士といった専門家との連携や支援に期待する声も大きい。インキュベクス株式会社では、現場の業務効率改善と収益率の確保を目的とした独自のスタッフ教育を開始し、業界に先駆けた取り組みをスタートさせている。

訪問看護ビジネスの現状と課題

―御社の事業や取り組みについて教えてください。

インキュベクス株式会社 上村隆幸代表取締役

(上村氏)
当社がこれまで開業支援をした先は570社以上になります。急速に支援実績を伸ばしている 背景としては、国が進める在宅強化の動きが大きいですね。自宅生活の中で看護を必要としている患者や高齢者は年々増加しています。また、訪問看護を必要とする方のニーズも多様化、複雑化しており、これまで以上に高度な医療行為のニーズも生まれています。
当社では支援先の訪問看護ステーションがこうしたニーズに効率的に、効果的に応えられるよう、開業支援だけでなく現場の看護師や経営者に対する教育にも力を入れています。

現場の看護師に対しては、医師が近くにいない一人での訪問の場面でも的確に健康状態が把握できるようにするための手順や、その基準について学ぶ研修プログラ ムを用意しています。看護師が、先進の看護理論やノウハウを学ぶことでサービスの質の向上を図るとともに、看護師のステータスを上げることにも繋げたいと考えています。
看護先進国ではすでに看護師の地位と業務範囲を拡大し、医師の医療報酬の70~80%がけくらいの請求の業務を担わせる取り組みが一般的になっていますが、日本ではまだ試みが始まったばかりです。こうした世界基準の考え方に日本でも対応していく必要があります。

また、訪問看護の場合、サービス内容により異なりますが、1回の訪問は30分、60分、90分など時間が限定されていますから、スピードも重要です。手技は素早く的確に、訪問看護師が利用者の健康状態を把握するためのチェック項目は無数にあるため、ありとあらゆる業務を手順化しないといけません。そこで重要になるのは、時間管理とコスト管理、つまり管理会計の考え方です。当社では看護師1人当たり1日6件の訪問を基準にした支援を提供しており、1分当たりを大事にする人材育成をやりたいと常に考えています。

こうした管理会計の考え方は、現場の看護師も然りですが経営者にとってはさらに重要です。もちろん、手順やルールをちゃんとお知らせしたならば、看護師が経営者となって開業することも十分可能です。当社の支援先では、開業1年後の訪問看護ステーションのうち9割以上が黒字であり、なかには1年で10拠点にまで拡大する経営者もいます。とはいえ、管理会計の考え方をすぐに理解してもらうことは難しいですし、教育は継続が不可欠ですから、5年、10年期間で育成するような長期的な研修プログラムの開発、提供も重視しています。

管理会計指導の取り組み

―管理会計の指導について具体的な取り組みを教えてください。

(上村氏)
現在は、主に管理者と呼ばれる部門長クラスの看護師と、事務長のような事務系事業責任者に対して管理会計の指導をしています。当社の支援先は民間企業が多く、初めて医療ビジネスに参入するケースがほとんどなので、医療事業のモデルに合った管理会計の概念を基礎から教えています。
会計全般に関しては、経理・会計分野の専門家である岩崎哲也氏を今年7月から社員として当社に迎え、研修を提供しており、さらに研修内容の強化を図っていきます。

インキュベクス株式会社 岩崎哲也氏

(岩崎氏)
私はもともと専門学校で10年ほど公認会計士や税理士の資格取得を目指す人を相手に講師をしており、監査法人やベンチャーキャピタル勤務も経験しました。 その後独立していろいろな会社の決算やバックオフィスの支援をやっていました。そのときからのご縁で会計周りの指導をしています。管理会計を教えると言っ ても簡単ではありませんが、講師時代のノウハウを使いながらやっています。訪問看護のような社会貢献度の高い素晴らしい仕事に関わり、さらに管理会計を導 入することで効率化を果たせるのではないかと考え、非常に面白味を感じています。

講習に参加する方は、看護師の方もいれば、経営者の方でも 自分自身が訪問看護ステーションを経営しているという人からオーナーとして出資している人まで様々で、人によって学びたいレベルや範囲も異なります。一人 ひとりのニーズに応じて、カリキュラムをある程度選べるようにしたいと思っています。保険請求ができる方、ステーション全体の管理ができる方、多展開していくにあたって連結決算を見られる方、といったような段階に合わせてセレクションできればなと思っています。

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