2.争点

本件リース取引が法64条の2第3項に規定するリース取引に該当するか(他の争点は省略)。

3.原処分庁の主張

本件リース取引は、①リース期間内に解約できないことになっていた(中途解約禁止要件充足)、②リース料の総額1億3212万円は、N社における本件リース資産の取得価額1億3500万円の約97.86%となっており[2]、本件リース資産の「取得のために通常要する価額」のおおむね100分の90を超過するというフルペイアウト要件を充足するから、法人税法にいうリース取引に該当する。


[2] 本件では、本件リース物件取得に際して補助金が交付されており、この場合の「おおむね100分の90の判定」は、賃借人(本件では請求人)が支払う賃借料の金額の合計額には、当該補助金による賃借料の減額相当額を加算することとされている(法基通12の5-1-2(3))ので、その調整及びその他リース物件取得の付随費用を加算すると、原処分庁の主張と異なり、リース資産の取得価額とリース料の総額は同額(100/100)となる。

4.審判所の判断

(1)争点について

法64条の2第3項は、同条1項に規定するリース取引とは、資産の賃貸借で、中途解約禁止要件及びフルペイアウト要件のいずれの要件にも該当するものをいう旨規定しているところ、審判所の認定によれば、本件リース取引は、資産の賃貸借であり、上記いずれの要件にも該当するから、本件リース取引は、法第64条の2第3項に規定するリース取引に該当する。

(2)更正処分の適法性について

①本件転リース取引等について

本件転リース契約は、リース料以外の条件が本件リース契約と同様であり、本件リース取引は、中途解約禁止要件を充足するから、本件転リース取引についても、同要件を充足することになる。また、フルペイアウト要件についても、M社は、本件転リース契約において自己の所有する建物に設置された本件リース資産を転借していることなどから、本件リース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受できると認められ、転借人であるM社が支払う転リース料が同資産の取得のために通常要する価額のおおむね100分の90を超えることは明らかであるから、フルペイアウト要件を充足するものであり、本件転リース取引は、リース取引(法64条の2③)に該当する。

以上より、本件リース取引及び本件転リース取引は、いずれも法人税法上のリース取引に該当するから、法64条の2第1項の規定により、請求人は、N社から本件リース資産の引渡しを受けた平成24年1月20日に、本件リース資産を売買により取得し、さらに、請求人は、M社に本件リース資産を引き渡した日(同日)に、本件リース資産を売買により譲渡したものとして、本件各事業年度の所得の金額を計算することとなる。

②延払基準の方法の適用について

リース取引は、法形式上は資産の賃貸借であり、契約に基づきその賃貸料を分割して収受するものであるという一面を有することからすれば、会計上、賃貸借処理を行ったものについて、法63条1項が要件とする延払基準の方法による経理がされていないことを理由に、すべからく所得計算における収益の額及び費用の額の分割計上を認めないこととすると、リース取引の実態に即さない場面も生じ得るというべきであり、したがって、賃貸人が受取リース料を賃貸料として収益に計上している場合において、そのリース取引が法64条の2第1項により売買とされたときには、それに係る収益の額及び費用の額は延払基準の方法による計算を認めるべきである。

本件では、請求人からM社への本件転リース取引は、請求人において賃貸借処理が行われていたところ、上記①のとおり、請求人からM社へ売買があったものとして処理すべきことが明らかになったのであるから、本件各事業年度についての本件転リース取引に係る収益(M社からのリース料)の額及び費用(N社へのリース料)の額は、法人税基本通達2-4-2の2《売買があったものとされたリース取引》の注1の定めにより、延払基準の方法により計算した収益の額及び費用の額とし、本件各事業年度の課税所得を計算することとなる。

以上を前提に、請求人の本件各事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額を計算すると、いずれも確定申告額を下回るから、法人税更正処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。