5.解説
(1)転リースに係る事実認定について
裁決書には、「原処分庁は、原処分に係る調査において、本件転リース契約書の提出を求めたにもかかわらず、請求人がこれを提出しなかった」という記載があり、請求人が本件リース資産を転リースしていた事実について、原処分庁は十分把握せず、事実誤認から本件更正処分をした可能性がある。しかし審判所は、原処分庁の「本件転リース契約書は原処分時に存在せず、本件転リース契約は締結されていない」という主張に対し、「請求人が、原処分に係る調査の前から、本件転リース取引に係るリース料について本件転リース契約書の記載内容と一致する会計処理をしていたことからすると、本件転リース契約が締結されたという上記認定は、原処分庁の主張する事情により直ちに左右されるものではない」として、原処分庁の主張を排斥している。
(2)争点主義と総額主義について
本件は、原処分庁による事実誤認に端を発し、本件リース契約に基づく取引は売買として取り扱われるべきであり、本件リース資産は減価償却資産となるから、本件リース料のうち当該資産の償却限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されないという更正処分が行われた。それゆえ本件では、本件リース取引が売買とされるものかどうかが争点とされた。そこで、審判所はまず、争点についての事実認定をした上で、本件リース取引は売買とされるものと判断し、請求人の主張は理由がないものと説示した。このように、争点についてのみ審理することを「争点主義」と呼ぶが、そもそも審判所の運営は争点主義的に行うこととされている。そうすると、本件は請求棄却という結論となるはずである。しかし、審判所の運営はあくまで争点主義「的」であって、その審理は「総額主義」で行うとされている。ここでいう総額主義とは、「審理の範囲は、課税処分によって確定された税額が総額において処分時に客観的に存した税額を上回るか否かを判断するのに必要な事項の全部に及ぶ」[3]とする考え方であり、本裁決では、争点につき判断を示した後で、改めて法人税更正処分の適法性について論じ、請求人の処理を適法と認め、最終的に原処分庁の処分を取消すという判断となっている。
[3] 伊藤義一『税法の読み方判例の見方 改訂第三版』TKC出版280頁
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