今回ご紹介するのは、税理士法人ガルベラ・パートナーズ 代表社員の税理士 相原進矢氏。最初は経営者とのコミュニケーションが苦手だったが、経営者のお悩みに真摯に対応した結果、案件が増え続けているという。今後の会計事務所経営や次の担い手である若手への想いについて話を伺った。(取材:KaikeiZine編集部、撮影:堅田ひとみ)

税務、労務、法務などワンストップソリューションで提供

税理士法人ガルベラ・パートナーズついて教えていただけますか。

相原:税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士などの士業の専門家が一堂に集まって、ワンストップでサービスを提供しているグループです。高度な税務から、一般的な税務まで対応しています。

主力サービスは一般的な法人顧問業務で、創業からずっと手掛けているのが、事業承継、組織再編です。中小企業の社長の事業承継の場合、法人税だけでなく個人の相続税も考慮して対策をしていかなくてはならないので、例えば、贈与税や相続税の納税猶予制度を利用するなどして、税負担を無理なく抑え、次世代の社長に渡していくサポートをやっています。組織再編では、会社合併、会社分割、株式交換、株式移転などを頻繁に行い、効率的な組織運営に着目したアドバイスをしています。強いてはこれも事業承継対策になります。

最近力を入れているのは、国際税務です。海外の会社が日本へ来るときに、私ども日本の税理士法人がサポートしています。逆に日本から海外へ進出する場合は、弊社のグループ法人が基本現地で対応しますが、対応不可の場合は提携先の専門家がサポートをしています。いずれの場合においても、私ども日本の税理士法人は国際税務の知識が必要不可欠となります。

経営者とのコミュニケーションをひたすら大切に

ここ2~3年、どのような案件が増えていますか。

相原:実は、通常の法人顧問業務が増えています。会計事務所を変えたいという企業からの要望です。理由は多々あると思いますが、一番多いのは、前の会計事務所が適切な対応をしてくれなかったという不満です。経営者とコミュニケーションを取らずに、経理担当の方とのやり取りだけで終わってしまい、肝心なところが経営者に伝わっていないのです。

これは賛否両論があると思うのですが、社長の自宅へ行くとか、社長と家族ぐるみでお付き合いをするとか、私はそういうことをやってしまうタイプです。そうすると、社長とのパイプが強固になって、公私ともに長くお付き合いができます。そこまでいくと、経営のことに限らず、社長の相続のご相談も頂くことがあります。もっとプライベートな相談を受けて回答に困るときもありますが。あとは、個人の資産運用の仕方なども社長からよく相談を受けます。要するに、法人顧問業務を、毎月しっかりとコミュニケーションを取りながら対応していると、付随する業務のご相談も自然と受けるようになります。

経営者とのコミュニケーションが強固でも、状況によって他の会計事務所を選択される、いわゆる顧問替えのケースもありますが、数としては少ないです。やはり前顧問税理士の方とのコミュニケーション不足が原因で、新規の仕事の依頼をいただくケースは非常に多いと感じています。

ご自身が経営者の方とのコミュニケーションで気を付けてらっしゃること、意識していらっしゃることは何ですか。

相原:言葉の端々から、相手がどう思っているか、何を求めているかを探るようにしています。例えば、コミュニケーションを円滑にするために「その携帯、替えられたのですか?」とか、「今日の服装、格好いいですね」とか、昔は苦手でしたが、自然にコメントが出てくるようになりました。要するに、相手がどうやったら気持ち良くなれるのかを考えながら、話をするように心がけています。

最初からできていたわけではありません。そういうことができている人が周囲にいて、その人を参考にしながら真似をしていきました。はじめは、「それ、おしゃれですね」というコメントすら照れくさかったです。でも言うことを意識付けしていくと、自然と言葉が出てくるようになりました。自分の中の意識改革だと思っています。

セカンドオピニオンを活用してお客様に最適なサービスを

税のセカンドオピニオンとして、国税OB税理士による会計事務所向け支援をしている「一般社団法人租税調査研究会」に入会されたきっかけを教えてください。

相原:10年近く前から上海をはじめとした海外拠点がありましたが、より国際税務に力を入れていく中で、数年前より自分たちの判断だけで進めていくことのリスクを感じ始めていたということもあり、セカンドオピニオンを検討し始めました。

相談する内容は、国際税務のほかに法人税、資産税、消費税です。時々、印紙税についても相談しています。もともと入会した理由とは違うのですが、実は今となっては一番助かっているのが「印紙税」です。

印紙税は、税理士法では税理士業務とされていないため、「税」とついても税理士試験の試験科目にはありません。ちなみに、輸入に係る関税についても税理士業務とされていません。そのため、税理士の中で、印紙税や関税に強い人はあまりいません。印紙税に強い税理士のほとんどが、国税出身者ばかりでどうしても経験がモノを言う世界になっています。

とは言っても、印紙税は顧問先企業の税務調査で税務署から指摘されるケースも少なくなく、調査立会する税理士が対応することもあります。また、法人顧問をしていれば、契約書に印紙税が必要なのかなどの質問もあります。税理士業務ではなくとも、ミスして顧問先に損害を与えてしまったら、賠償責任を負うこともあります。税理士業務の範囲内であれば、税理士職業賠償責任保険で、ある程度損害賠償金の補填ができるときがありますが、印紙税はそもそも税理士業務ではないので、保険対象外です。

安易にアドバイスをして誤った回答をすると顧問先からの信頼を失いかねません。ですので、私どもはセカンドオピニオンを非常に重視しています。我々は日常業務で印紙税だけを専門に扱うことはないので、印紙税を専門に扱っている税務職員と比べると明らかに経験値が違います。慣れていないというところもあり、租税調査研究会の相談サービスの中でも印紙税については特に助かっています。

契約書に印紙を貼りますが、様々な種類がありますね。

相原:業務委託契約書でも、印紙税がかかるケース、かからないケースもあり、判断が難しいです。租税調査研究会の先生方の意見というのは、非常に参考になります。例えば、私が課税だと判断したものの、念のために租税調査研究会に相談をしたら「いやいや、不課税です。課税文書じゃありません」とご指摘いただいたときは目から鱗が落ちました。もちろん根拠もきちんと丁寧に教えてくださいます。

第1号文書とか、第2号文書とかいろいろあるのですが、大体使うのは1号、2号、7号、17号文書です。組織再編では、5号文書の知識も必要になってきます。しかし、通常の法人顧問業務もありますし、所得税法や法人税法はもちろん、国際税務や組織再編等の特殊な条文も読まなければいけないので、なかなか印紙税についての条文を1から10までしっかりと読み込むことは時間的に困難です。とは言うものの、顧問先企業は、税と付くのだから、印紙税を当たり前のように会計事務所に相談してきますので断りにくいです。それにそもそも顧問先企業が困っていることには、できる範囲で対応するのが我々の仕事ですから、その様な場合にも租税調査研究会のようなセカンドオピニオンを上手く活用しています。

最近は、印紙税が不要な電子署名が増えてきています。

相原:電子署名の普及による印紙税収入減について、国税当局は非常に懸念を示していると聞きます。書類等を相手に交付する方法が、手渡しもしくは郵便ですと印紙が必要ですが、電子データでのやりとりですと不要になります。将来的に印紙税については、税収減などを理由に法改正される可能性もあります。

AIが発達しても、人が介在する価値は無くならない

今後の会計事務所業界、ご自身の展望についてお聞かせください。

相原:AI発達により会計事務所の業務内容は変化していくでしょう。今もロボットが少しずつ普及していく中で、お客様から請求書や領収書等をいただき人力で会計ソフトに入力していくという旧態依然の仕事は、確実に減ってくると思います。ここ5年くらいでは入力業務はすぐに消えないと思いますが、10~20年先のスパンで見るとだいぶ減ってくるでしょう。

そういった状況下で、我々としてもどう生き残れるかということを考えています。そこで、コンサルティング、事業承継、国際税務の強化をしています。

私は、税理士会の役員もやっています。今は、自身が代表を務める税理士法人のことや、職員の対応で精一杯ですが、日々、自身の業務ノウハウについてはきちんと承継し、一歩退く年齢になれば、次の経営のことは次の人たちに任せて、ゆくゆくはこの業界のこと、日本全体のことを考えて、さらにボランティア的な活動をしていきたいと思っています。

 

【編集後記】

取材中はもちろんのこと、取材前・後のやり取りの中で、こちらがうれしくなるようなさり気ない気遣いに溢れるコメントをいただきました。経営者の方とのやり取りに限らず、コミュニケーションを大切にされていることを実感いたしました。相原先生、ありがとうございました!

税理士法人ガルベラ・パートナーズ

●創業

2007年1月

●所在地

東京事務所:東京都港区虎ノ門3-23-6 RBM虎ノ門ビル7階

大阪事務所:大阪市西区立売堀 1丁目2番12号 本町平成ビル3階

福岡事務所:福岡市博多区博多駅東1-5-8 モアグランド博多ビル4階

●理念

常に弊社に関わる人たち全員が利益を享受できる仕組みを創造し、一人でも多くの人や会社を救える組織になる

●企業URL

https://gerbera.co.jp/

 

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