外国子会社合算税制の適用除外規定の一つである事業基準の例外として認められる「統括会社」に該当するためには、一の居住者によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されていること、さらに、二以上の被統括会社に対して統括業務を行っていることが必要であり、請求人は、これらの要件を満たしていなかったため同適用除外規定は適用されず、外国子会社の所得は請求人の雑所得に係る収入金額とみなされるという判断が示されました。

国税不服審判所令和3年3月26日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係及び関係法令

今回は、前回(第34回)取り上げた事案の別の争点について検討する。本件は、原処分庁が、審査請求人(請求人)の所得税等について、請求人が所得税法上の居住者に該当し(前回の争点)、外国子会社合算税制を適用するなどして所得税等の各処分を行ったことに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、平成25年ないし平成29年(本件各年。いずれも未申告)において、香港法人2社(G5社及びG 6社)及び中国法人(G7社)の役員を務めるとともに、G5社の株式の99.99%を保有しており、G5社はG6社及びG7社の全株式を、G6社はG8社の全株式を保有していた。以上の資本関係の下、請求人が日本の居住者に該当する場合には、外国子会社合算税制の適用除外規定が適用されるかどうかが争われた。

本件当時の外国子会社合算税制では、特定外国子会社等[1]のうち、(i)事業基準、(ii)実体基準、(iii)管理支配基準、及び(iv)非関連者基準/所在地基準の適用除外基準のいずれも満たす場合には、当該特定外国子会社等の適用対象金額については居住者の所得と合算しない旨規定していた(改正前措法40の4③柱書)が、さらに、(i)事業基準を満たさないとされる株式保有業[2]からは、統括業務[3]を行う事業持株会社(統括会社)が除外されていた(本件適用除外規定)。ここでいう統括会社とは、一の居住者によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている特定外国子会社等で、①二以上の被統括会社[4]に対して統括業務を行っていること、②本件所在地国に統括業務に係る事務所、店舗、工場その他の固定的施設及び統括業務を行うに必要と認められる専ら当該統括業務に従事する者を有していること、の二つの要件を満たすものとされていた(改正前措令25の22④)。


[1] 外国関係会社のうち、本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するものをいう(改正前措法40の4①)。

[2] 事業基準を満たさないものとして、さらに、債券保有業、知的財産権等の提供及び船舶又は航空機の貸付けが規定されている。

[3] 株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるものをいう(改正前措法40の4③柱書)。

[4] 改正前措令25条の22第2項各号に掲げる法人で当該法人の発行済株式等のうちに特定外国子会社等の有する当該法人の株式等の数又は金額の占める割合及び当該法人の議決権の総数のうちに当該特定外国子会社等の有する当該法人の議決権の数に占める割合のいずれもが100分の25以上であり、かつ、その本店所在地国にその事業を行うに必要と認められる当該事業に従事する者を有するものをいう。