「タコ足配線」のように「タコ」を使う言葉は多々ありますが、よく使われる経済用語に「タコ足分配」や「タコ配当」という言葉があります。蛸はお腹が空くと自分の足を食べてしまうことから、元本部分や資本にまで食い込んで分配や配当を行うことを指す用語です。今回は「タコ足分配」や「タコ配当」について考えてみましょう。

蛸の雑学

「蛸は足が無くなってもまた生えてくる」ことをご存知の方も多いのではないでしょうか。足に傷を負った際、傷の部分から枝分かれのように次の新しい足が生えてくることから、場合によっては、9本足や10本足になることも珍しくないというわけです。

実際、鳥羽水族館には、昭和天皇もご覧になったという85本足の蛸の「天覧標本」や、日本最高記録の96本足の蛸の標本が展示されています(鳥羽水族館HPより)。

また、「蛸は自分の足を食べる」ことをご存知の方もいらっしゃるかと思います。自分の足を食べてしまう理由としては様々な説があり、①空腹によるもの、②ストレスによるもの、③神経系の疾患など、依然として明確な理由は分かっていないようですが、不思議なことに、こうしたいわば自傷行為で失った足は再生されないそうです(そもそも、多くは死んでしまうようですが…(大阪府立環境農林水産総合研究所HP「図鑑:マダコ」も参照))。

タコ足分配・タコ配当

さて、本題に話を戻しましょう。

投資信託において、利益が出ていないのに支払われる分配金のことを「特別分配金」と呼びますが、これは要するに投資元本の払戻しに過ぎません。利益が出ていないにもかかわらず、投資の元本部分を削ってまで分配を行う点を蛸の生態に例え、投資の世界では「タコ足分配」などと呼んでいます。

また、これに似たものに「タコ配当」というものもあります。タコ配当とは、違法配当の俗称です。剰余金の配当は分配可能額を超えて行ってはならないとされていますが(会社法461)、この会社法の制限に違反して行われた違法配当のことを、俗に「タコ配当」と呼びます(高橋和之ほか『法律学小辞典〔第5版〕』35頁(有斐閣2016))。

これも上記の「タコ足分配」同様、本来であれば会社にキープしておかなければならない原資などに食い込んで配当を行うという意味で、「タコ配当」と呼ばれているわけです。