今回の実力派会計人は、公認会計士・牧田彰俊氏。大学中退後、20代前半まで飲食業での経験を経て、公認会計士試験に合格。その後は大手監査法人にて法定監査や、グループ内におけるM&AファームにてM&Aアドバイザリー等に従事。2018年、株式会社M&A DXの前身となった株式会社すばるを立ち上げ友好的承継をモットーにM&A仲介や財務税務調査、株価やストックオプションの価値算定、さらには上場会社の組織再編などワンストップで高品質のソリューションを提供している。自分がベストだと思う選択をその都度していけば、何においても役に立つ時がくると話す牧田氏の公認会計士になるまでの道のり、そしてこれまでのキャリアについて話を伺った。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 市川)

早稲田大学中退を経て、飲食業の道へ

これまでのご経歴を教えてください。

牧田:愛知県名古屋市の出身で、母はシングルマザーで生まれたときから父がいなく、母と叔母と祖父母の5人で暮らしていました。母も叔母も祖父母も日中は働きに出ていたので、3歳ぐらいの頃の記憶は、部屋で一人きりのことが多かったです。

時計が静かに鳴る何もない“箱”のような部屋でぼーっと高い天井を眺めたり…。つまらないなぁとは思っていましたが、家族が自分のために苦労をして働いてくれていたのは幼心ながら感じており、いつしか、どこか客観的にその場を観察するような子どもになっていきました。何においても空気を読み冷静で悪く言えば、他人事に捉える。小学校の通知表には“思いやりがない”とよく書かれたものでした。

母は、私に片親だからといって、惨めな思いをさせたくないと、とにかく運動と勉強をしなさいと言ってきました。幼稚園の頃から小学校の勉強を母が先生となって教えてくれていたこともあり、小学校に入ると学年では成績は良くスポーツもよくできるタイプでした。

この頃は、自分で自分のことを“神童”だと天狗になっていましたね(笑)。当時は私立中学に行く子どもも少ない中、中学受験をし、県内にある中高一貫の進学校へ。ここでも神童として名を連ねようと思っていましたが、自分より頭の良い友人が多く、学年全体が神童の集まり…。私はここでは勉強で上位に入るのは難しいと早々に諦めました。

ここでの6年間は野球部やサッカー部に入りスポーツを頑張ったり、校則も自由だったので遊びに夢中になったり、高校生になるとアルバイトも始めて楽しかったです。教室に行けば話せる友人もたくさんでき、自分のいる“箱”が少し賑やかになったような気もしました。目の前にある“楽しそうなこと”“目新しそうなこと”ばかりを選んでいましたが、大学受験を考える時期になり、当時の彼女が『名古屋大学の医学部を受ける』と言い出したのです。

その子は芯が強く、遊んでいても『これから勉強したいから帰るわ』と、やるべきことに向かって取捨選択をするようなタイプで、これまで楽しいことばかりを目移りしながら選んできた私にないそのブレない姿勢に感化をされます。

受験まで約1年。しかしこれまで全く勉強をしていなかったので中学1年生の教科書を引っ張り出し、猛勉強を開始。医学部には不合格となりましたが、早稲田大学に合格することができました。

こうして、晴れて東京に上京します。

牧田:この頃は、ギャルブームの影響もあり渋谷でもクラブが大盛況。名古屋の片田舎から出てきた私にとっては、クラブはまさに夢のような世界。テレビでよく見る芸能人もいて、同じ”箱”でもこんなに華やかでカラフルな場所があるのだと、自分自身に酔え、我を忘れられる街に魅了されます。

最初はお客さんとして遊びに行っていましたが、そのうちクラブのイベンターとして働くようになり、19歳のころになると飲食店で働くようになり、繁華街で行動するようになります。そうすると大学の授業より働くほうが面白いと感じ、早稲田大学は退学することにしました。もったいないと言われることもあるのですが、元々医学部を第一志望にしていたため早稲田に思い入れもなく、目の前にある楽しいことを選択した結果でした。取得した単位は2年間で14単位ぐらいでしたね…(笑)。

ご縁があり雇われ店長としてお店を任せてもらえるようになったりもしましたが、結構飲食業は危ないこともあり…。身の危険に晒されることも度々ありましたが、この経験は、今の仕事をしている中で何かあっても“命までは取られないからかすり傷“と思えるようになったのです。

M&Aをやってみたい、公認会計士への挑戦

公認会計士はどのような経緯で目指すことになりましたか。
牧田:
21歳のころまで飲食業をしていましたが、ふとこのままでいいのかなと感じることがありました。働く人もお客さんも出入りが激しいがゆえに刹那的で、このまま一繁華街という小さな地域にいることに徐々に危機感を覚えていきました。

そして、その頃はホリエモンがフジテレビを買収するかどうかが話題になっていたときで、M&Aというのはニュースにまで取り上げられて、世の中に大きな影響を与える面白い仕事だと感じました。

自分もその仕事をしたいと思って調べてみると”公認会計士”であれば大学中退でもM&Aに携われることができるかもしれないと考えました。大卒でない私でもこの資格を取得すれば社会的に認めてもらえるはず。そして、まず公認会計士になるには簿記の知識が必要。このときに大学で取得した14単位のうち簿記の授業もあったのですが、ほとんど勉強せずに理解をし単位取得ができたことを思い出しました。

公認会計士を目指そう、と飲食業から足を洗い勉強をすることを心に決めます。また誰かから誘われてしまったら流される自分に戻ってしまうと携帯電話は解約。名古屋の実家に戻り、缶詰状態で勉強をしました。21歳の頃です。

23歳で会計士試験に合格。有限責任監査法人トーマツに入所をします。監査業務をしながら兼任でM&Aの仕事にも従事しましたが、しばらくすると自分にとってターニングポイントが訪れます。関与先の顧客に不正が発覚したのです。夜中まで対応に追われる日々が続き、アサインメンバーは疲弊をしていきます。顧客に寄り添って対応をしていた同僚は病んでしまう人もいたり、クライアントとのやりとりの中でも怒号が飛び交うような大変な時期ではありました。しかし、私は良い意味であまり感情的になっておらず、”命までは取られない”から絶対に大丈夫という確信の中で冷静に対応をしていきました。

後に、このときの対応力を様々な方面から評価をしていただきました。振り返ってみると、幼少期に培った冷静さと、飲食業時代についた度胸があったからなんだと思いました。

何事も経験は活かせるときがくる、自分のベストを選び続けて

その後、組織再編による異動でDTFA(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社)に行くことになります。

牧田:27歳頃からはM&A一本でやっていくようになりました。この頃出逢ったのが大手金融会社出身の上司。彼からは営業においての立ち居振る舞いや、ネットワークを築く上での真髄を学びました。何においてもどこか“他人事”だった私ですが、事業承継にしてもM&Aにしても会社同士の話であれ結局最後は、”人との繋がり”で出来上がっているものであり、これは現在の弊社で大切にしている”友好的承継”というモットーにも繋がっています。

32歳のときに、独立。株式会社すばるを立ち上げます。すばるは、ひとつに統一する”統べる”の語源という意味と、宇宙に小さな星が集まってできている星団であるスバルを意味しています。2021年8月には株式会社M&A DXに社名変更をし、現在東京・大阪・名古屋の3拠点で展開をし、今後は他地方や海外への進出を検討しています。

公認会計士になるまで、私自身少し変わった経緯で資格取得を目指したのですが、監査法人時代は学歴も、バックボーンも関係なく平等に接してもらえたので本当に感謝をしています。

公認会計士を目指したのも、そもそもを辿るとM&Aという世間的に影響度の高い大きな仕事をやってみたいと思ったから。当時、学歴も捨て、全く別の職業についていた私が公認会計士を目指すというのは傍から見たら無謀だと思われていたかもしれません。

それでも私は、M&Aの仕事を知ったとき“自分もやってみたい!楽しそう!”とワクワクしました。これまでも楽しいことを選択してきましたが、遊びも将来の夢に対しても選ぶ時の本質的な理由は変わらないように感じます。

大切なことは、未来を見据えて行動することよりも、“今この瞬間”一番楽しくいられるにはどうしたいのかを選ぶことだと思います。それが例え、エリートの道から外れていたとしても、自分が“幸せ”だと感じ続けていれば道は拓けます。また突拍子のないことだとしても、“やってみたい”と心から思うことであれば、無理だと思わず自分を信じ、チャレンジしてみること自体が重要なんじゃないかと思います。

振り返れば“思いやりがない”と言われた性格も、M&Aでは冷静という評価に変わり、飲食業時代の経験で度胸もつき、その後生きる上でなにがきても怖くないという自信に変わりました。

何においても自分自身が心からこの道でいこうと決め、選んだものであればいつか必ず、その選択が役に立つ時が来ます。

そして、楽しいと感じることを選び、一生懸命取り組んでいれば、あなた自身を受け入れ、評価をしてくれる世界は必ずあるのだと思っています。皆さんも僕と同じように、楽しいことだけして生きていきましょう!

 

【編集後記】

仕事をするときも遊びも、いつでも楽しいというお話もされていた牧田先生。何においても自分が一番良いと思うことを選ばれているからなんだと感じました。牧田先生、ありがとうございました。

株式会社M&A DX

●設立

2018年1月

●所在地

【東京オフィス】〒105-5117 東京都港区浜松町二丁目4番1号 世界貿易センタービルディング南館17階
【名古屋オフィス】〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦一丁目7番15号 50KT中駒ビル6F
【大阪オフィス】〒530-0002 大阪府大阪市北区曽根崎新地一丁目13番22号 WeWork御堂筋フロンティア4F

●理念

友好的承継で、すべての人を幸せに。

●会社HP

会社HP:https://madx.co.jp/

相続・M&A大学:https://subaru-inc.co.jp/manda_souzoku_daigaku/

YouTubeチャネル:https://www.youtube.com/channel/UCRv33bOq5Rtg-nc6WxMyp9g

Twitter:https://twitter.com/amakita6

 

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