日本の非居住者が内国法人の株式の譲渡した場合、その譲渡益については原則として日本では課税されないこととなっています。ただし、その株式が「事業譲渡類似株式」に該当する場合は、その譲渡益は国内源泉所得として日本で課税されてしまいます。では、どのような株式が「事業譲渡類似株式」に該当するのでしょうか。

≪ケース≫

B(日本人)は3年前にシンガポールに移住し、現在はシンガポール居住者となっています。

Bは、移住前から日本で父親が経営する会社(同族会社に該当)の株式を20%保有していましたが、今般この株式をすべて弟に譲渡することとしました。

株式の保有割合は以下の通りで、この保有割合は10年前から変わっていません。

株価は相当値上がりしているため、譲渡によって譲渡益が発生します。この譲渡益は日本で課税されるのでしょうか。

≪検討≫

日本の非居住者が内国法人の株式を売却したことによる所得は、原則として日本では課税されないこととされています(その非居住者の居住地国で課税)。

ただし、いわゆる「事業譲渡類似株式」の譲渡など一定の場合には、例外的に日本で課税されてしまいます。

「事業譲渡類似株式」とは

「事業譲渡類似株式」とは、次のイ及びロに掲げる要件を満たすような株式の譲渡をいいます。

イ 譲渡年以前3年以内のいずれかの時において、その内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の25%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を所有していたこと →所有株式数の要件

ロ 譲渡年において、その非居住者を含むその内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式又は出資の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の5%以上に相当する数又は金額の株式又は出資の譲渡をしたこと →譲渡株式数の要件

 

簡単に言うと、事業譲渡類似株式の譲渡とは、「25%以上の株式等を保有している株主が5%以上を譲渡した場合の株式の譲渡」を言います。すなわち、実質的に事業を譲渡しているのと変らない、といったイメージです。