昨今女性の活躍が叫ばれる中、会計事務所業界でも、さまざまなライフステージに立つ女性の働き方を応援する求人が増えている。売り手市場の煽りを受け、人材獲得が容易ではない現在、働き方の自由度をアピールするなど、会計事務所も優秀な女性税理士の獲得に必死だ。

全社員が働きやすい制度や職場環境づくりに取り組む企業が増えているが、会計事務所業界も例外ではない。とりわけ結婚、出産、子育て、介護などのライフイベントに左右されやすい30~40代の女性税理士にいかに活躍してもらうか、どうすれば女性の長期的なキャリアプランを実現できるか、日々思案している会計事務所は多い。

業務効率アップで残業時間を削減

家庭やプライベートとの両立を重視する女性税理士にとって悩ましいものの一つに残業時間がある。残業ができないがために仕事を辞めて転職活動を余儀なくされるケースも少なくなく、転職先の希望条件として「定時帰宅」を挙げる人は少なくない。世の中の流れとしても残業時間を削減する動きが見られ、会計事務所では記帳作業や申告書作成の電子化やIT化によって大幅に業務改善をするケースも見受けられる。

残業時間を減らすことは、取引先や顧客からのイメージアップに繋がるだけでなく、採用にも有利に働く。女性税理士の募集だけでなく、男性からの求人応募も増え、幅広い層の人材獲得の母集団形成に一役買うこともあるほどだ。

生活に合わせやすい就業時間と柔軟な雇用形態

家庭との両立を考えるにあたり、労働時間=拘束時間は障壁になりやすい。保育園や幼稚園の送り迎えや帰宅後の家事等を考慮すると8時間労働が難しいことも多く、4時間~6時間程度の時短勤務者や契約社員の採用を考える会計事務所は少なくない。中には優秀な女性税理士の採用を目的に、時短社員制度を新たに設け、転職希望者の要望に応えるというケースもあるほどだ。

フレックスタイムを導入して勤務時間に融通を利かせる会計事務所も増加傾向だ。個々の裁量に任せ、独立した働き方を支援できる一方で、コアタイムなどを設けて進捗状況の共有ができる場を作れば、労働時間に縛られることなく業務が遂行できる。女性税理士だけに限らず、年齢、性別、役職を問わずそれぞれの働きやすさを実現しやすい制度とも言えるだろう。

資格の優位性や知識を活かして活躍したいという女性税理士のニーズは一定数あり、労働時間さえ配慮すれば十分なスキルを発揮できるという人材は少なくない。こうした女性税理士たちの要望を叶え、かつ会計事務所の戦力として活躍してもらう。そして将来フルタイムの社員に戻りやすい柔軟な人事制度を設けることで女性税理士の長期的なキャリアアップも可能だ。

一人ひとりのライフイベントにあわせたキャリア形成

一言で「女性の活用」といっても、必要な対応は個々のケースによってさまざまだ。しかし、
30~40代女性税理士の採用、戦力化を考えるのであれば、残業時間の短縮や時間の融通が利く勤務制度の準備は重要であり、採用成功の一つのエッセンスにもなる。実際に、女性税理士の採用に成功している会計事務所では、採用したい人材層を明確にし、それぞれの層に合わせた人材募集をしているケースが多い。バリバリ働きたい税理士、限られた時間の中でパフォーマンスを発揮したい時短社員、ルーティン業務をコンスタントに遂行するパート・アルバイト層などいくつかのカテゴリに分け、それぞれどんな手法で採用をするのが最適なのか見極めることは重要だ。業界に精通したプロに採用のアドバイスを依頼するのも、一つの戦略かもしれない。