請求人の元従業員が、請求人の仕入商品をインターネットオークションで販売して得た収益について、元従業員は、請求人の経営に関与する地位にはなく、元従業員の行為は請求人と同視できないことから、同収益は請求人に帰属しないものの、同時に、請求人から見て、元従業員に対する損害賠償請求権は確定したといえるから、同請求権の額は窃取された商品の時価で評価すべきであるという判断が示されました。

国税不服審判所令和元年年5月16日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

本件は、審査請求人(請求人)の従業員であった者Gが、請求人の仕入れた商品をインターネットオークションで販売して得た収益について、原処分庁が、当該収益は請求人に帰属するものであり、請求人は当該収益を帳簿書類に記載せず隠蔽していたなどとして、法人税の青色申告の承認の取消処分、法人税等及び消費税等の更正処分並びに重加算税等の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該収益は請求人には帰属しないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、農業機械等の販売を目的とする株式会社であり、インターネットオークションによる販売を行っていなかったところ、請求人の商品の仕入等の事務を担当していたGは、オークションサービスに、個人のアカウントを設定して、請求人の仕入れた商品を出品し、落札代金を、自らの銀行口座で受領する取引(本件取引)を反復継続して行った。その後、本件取引が発覚し、請求人は、仕入商品を窃取されたとして、Gを懲戒解雇した。

請求人は、本件取引に係る各事業年度の法人税等・各課税期間の消費税等について、その申告期限までに確定申告したところ、原処分庁は、本件取引につき、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していたとして、青色申告の承認の取消処分を行い、さらに、法人税等・消費税等の更正処分を行った。