ユニバーサルミュージックは、デット・プッシュ・ダウンの方式による買収について、借入れは独立当事者間の経済条件で行われたものである以上、第三者間で通常行われるデット・プッシュ・ダウンの方式による買収と何ら変わりがないと述べるなど、政当な事業目的を有する経済的合理性が認められると主張。一方、課税当局側は、グループ会社の親法人の財務の合理化については、グループに属する者であれば間接的に享受することができる抽象的なものにすぎないとし、「現実には、実際に享受するかどうかも分からないもの」、「仮に、そのような利益が生じたとしても、原告にとっては約866億円の負債のみが増加し、約300億円の余剰資金が失われるだけでなく、この資金の額を大きく上回る額の元金の返済が更に必要になるとともに、その負債に対する年数十億円もの巨額の利息を支払わなければならなくなるという犠牲を払うこととなるのであるから、原告(ユニバーサルミュージック)の主張するような…間接的かつ抽象的な利益が原告の犠牲を上回るとは到底いえない」と述べ、本件借入れには正当な事業目的を有する経済的合理性が認められないと主張している。

最高裁判決では、この争いにおけるデット・プッシュ・ダウンの合理性を認め、ユニバーサルミュージックの借り入れや組織再編について「税負担の減少が目的に含まれていたといわざるをえない」としつつも、機動的な事業運営を可能にするなどの理由もあったと指摘。「取引全体としてみると、経済的合理性を欠くとまではいえない」として、132条1項の対象にはならないと結論付けている。

法人税法132条1項の不当性要件の判断基準は、先例(最判昭和53年4月21日)に沿ったいわゆる経済的合理性基準に加えて、従来にはない視点が取り入れられている。

法人税法132条に定める行為計算否認規定は、税法にのっとった税務処理であっても否認できるというその使い勝手の良さから、国税の「伝家の宝刀」と呼ばれる。しかし近年、IBM事件を含め、国税の敗訴がマスコミを賑わす機会が増えた。課税当局側としては、何が合理的な経済活動で、何が不合理な経済活動なのかを明確に立証する必要がある。今回の最高裁判決がどのように税界に影響してくるのか関心が集まっている。

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