会社員だけでなく、所得のある全ての人が身に着けておくといいのが「所得税」に関する知識です。計算方法や関連制度、課税所得や所得控除に関してなど、詳しく解説します。
所得税にかかわることについて知っておくのは、非常に重要です。
会社員なら年末調整に関係してきますし、副業をしている人やフリーランス、個人店を経営している人などは、所得税の計算についてしっかりとした知識を身につけておかなければなりません。
ここでは、所得税の計算方法について簡潔に、わかりやすく説明し、さらに所得税に関連する制度や課税所得、所得控除に関しても、詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
所得税の計算方法を知る
所得税は、「課税所得金額×税率ー税額控除額」を計算すると、求められます。
ただ、この式だけ見てもよくわからないと思う人は多いと思うので、式の中身についてさらに詳しく解説します。
そもそも所得税を計算するためには、その年の1月から12月まで1年間の所得金額の合計が必要です。
その後は、所得金額から15種類存在している所得控除を引くと、課税対象となる課税所得金額がわかります。
所得税を計算するには関連制度も知る必要がある
所得税は個人の収入に対してかかる税金なので、会社勤めの場合、会社から支給される給与所得にだけかかると思われがちですが、賃貸収入などによる不動産所得や、投資をしている場合は株式などの配当所得も、所得税の対象になります。
しかし、収入すべてに対して所得税が課税されるということでもありません。
所得税の納税額の計算は、収入から非課税の手当と各種所得控除を差し引いて、課税所得を算出し、税額控除などをふまえて確定させます。
このように、所得税を計算する上ではそれに関わる制度を知っておくことも重要です。
課税所得とは?
課税所得とは、実際に課税対象となる金額のことをいいます。
課税所得金額の計算方法は、「所得金額ー所得控除」です。
所得すべてが税金対象になるのではなく、所得合計に対して所得控除を引いた金額にかけられるところがポイントです。
控除とは?
次に、課税所得金額を減らせる、所得金額から差し引く所得控除について見ていきましょう。
所得控除の対象となるのは15種類です。
・雑損控除:災害や盗難、横領などで損害を受けた場合、適用される控除
・医療費控除:医療費が一定額を超えると適用される控除
・社会保険料控除:社会保険料を支払った際に適用される控除
・小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済で掛金を支払うと適用される控除
・生命保険料控除:生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払うと適用される控除
・地震保険料控除:地震保険料などを支払った際に適用される控除
・寄付金控除:国や地方公共団体、公益社団法人、公益財団法人などに寄付すると適用される控除(なお、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金および公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除に代えて、税額控除を選択することができる)
・障害者控除:納税者および生計を同じくする配偶者、扶養家族が障害者に該当すると適用される控除
・寡婦控除・寡夫控除:配偶者と離婚や死別し、扶養親族がいる場合に適用される控除
・ひとり親控除:納税者がひとり親であるときに適用される控除(※令和2年分の所得税から適用)
・勤労学生控除:一定の水準以下の給与所得などの勤労による所得がある学生に対して適用される控除
・配偶者控除:一年間の所得が48万円以下の配偶者がいる場合に適用される控除
・配偶者特別控除:納税者の合計所得が1000万以下で、一年間の合計所得が48万円以上133万円以下の配偶者または配偶者控除の対象にならなかった配偶者がいる場合に適用される控除
・扶養控除:扶養する家族がいると適用される控除
・基礎控除:控除額の違いはあるが、合計所得金額が2500万円以下の納税者は、原則だれでも適用される控除
また、税額控除は課税所得金額に対して税率を掛けて算出した所得税額に対して直接引くものです。
税額控除は約20種類ありますが、代表的なのは以下の通りです。
・外国税額控除:日本で課税される所得の中に外国で生じた所得があり、その所得に対してその外国の法令により所得税に相当する税金が課税されている場合に、一定額を控除するもの
・政党等寄附金特別控除:政党または政治資金団体に対して政治活動に関する一定の寄附金を支払った場合に、寄附金控除(所得控除)の適用を受ける場合を除き、一定額を控除するもの・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除:新築の住宅購入や増改築で住宅ローンを組んだときに適用される控除
基本的な所得税の計算方法
所得税を計算するには、まず収入金額から所得金額を割り出さなければなりません。
収入の中には非課税となるものもあり、それらは「非課税所得」に分類されて、所得税の計算の際に差し引くことが認められています。
給与所得の場合ですと、一定金額以下の通勤手当や出張時の手当などは非課税所得になります。
また病気療養中にもらえる傷病手当や育児休業給付金などについても、非課税所得に該当します。
所得税の計算式
所得税は課税所得に対して税率を掛けると算出できます。
所得税=課税所得×税率ー税額控除額
所得税の計算は定期的に税率、計算に関する数字が見直されます。
最新の数字がどうなっているかは国税庁のホームページなどで確認するようにしましょう。
最新情報が自動で反映される、クラウド型の給与計算ソフトなどを利用すると、計算の手間も省ける上、ミスを防げるので便利です。
控除金額も所得金額で決まる
給与所得者は経費の代わりになるものとして、「給与所得控除」が設けられています。
給与所得控除はまず総支給額から非課税の収入を差し引いた課税支給額を算出し、そこから一定額を給与所得控除として控除できます。
計算式は以下の通りです(※令和2年分以降)。
給与収入 | 給与所得控除 |
1,625,000円以下 | 550,000円 |
1,625,000円超 1,800,000円以下 | 給与収入×40%ー100,000円 |
1,800,000円超 3,600,000円以下 | 給与収入×30%+80,000円 |
3,600,000円超 6,600,000円以下 | 給与収入×20%+440,000円 |
6,600,000円超 8,500,000円以下 | 給与収入×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超 | 1,950,000円 |
所得税の計算方法は所得の種類によって変わる
所得税の計算方法は所得の種類によって変わってきます。
例えば、会社勤めの方の「賞与」にかかる所得税額の計算方法は、賞与支給の前月に支払われた給与を基準としています。
まず賞与が支給された前月に支払われた給与から、「非課税所得」と「社会保険料等」を差し引きます。
算出された金額を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」と照らし合わせます。
扶養人数と給与から社会保険料等を差し引いた金額のうち重なる部分について、表の左側にある「賞与の金額に乗ずべき率」が、賞与に対してかかってくる所得税率になります。
賞与の源泉所得税額は、通常は「賞与の金額に乗ずべき率」を、賞与から社会保険料等を差し引いた金額にかけることで算出できます(前月の給与の金額の10倍を超える賞与を支払う場合や、前月に給与の支払がない場合は、計算方法が異なる)。
まとめ
所得税の計算はややこしいと思われがちですが、中身をきちんと理解すれば、だれでも計算できるものです。
ただし、給与所得控除や各種控除などについて、法律に定められている内容を理解することが重要になります。
法令改正で納める税額、控除額が変わることは珍しくありませんので、常に最新の状態で対応できるように情報をチェックしておく必要があります。
法令改正にすぐに対応できるソフトを利用することもひとつの方法です。
同じ会社に勤めていても、所得控除は従業員それぞれで適用される控除が異なってきます。
配偶者や扶養家族がいるかどうか、今の状態を正しく把握した上で正しい計算をしましょう。
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